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第五章:殺盗団を壊滅せよ

117:さらば兄上

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「フム。い、妹よ。もうケリは着いたから帰ってもいいんだよ?」
「せ、せやで、何の問題も無く片付いたさかいな」
「ええ、ええ、片付いたみたいですね『この上なく下品』に、ネェ?」

((あらやだ! この子、激オコぢやないですかーー!!))

 ケモケモしい荒ぶる尻尾の持ち主から〝そっと〟目線を外す二人。
 それに巻き込まれた哀れな盗賊達は、白目をむいて絶賛失禁中。

「……何ですか失禁コレは? 誰の許しをへて神聖な場所で汚物を垂れ流して良いと言いましたか?」

((理不尽すぎる! お前が原因だろうに!!))

 理不尽な妹がこちらへ気が付く前に、ソっと折紙になり入口へと飛んで行く壱。

「壱:あ、僕ちょっと用事を思い出したねん。参、後は任せたで~ほなさいなヴぁぁぁぁ」
「フム。兄上ぇぇぇ!? ま、真っ二つですね……」

 〆は実にいい笑顔で参に向き直る。

「ねぇ~兄上? どうしてこんなに、流様のお屋敷が……『汚物に塗れているの』かしらねぇ?」
「ふひッ!? いや! 落ち着くのだ妹よ!! 私は兄上のように頑丈ではないので!! それにこの部屋の惨劇は、お前が原因じゃないか!?」

 ふと、〆は汚物ぞくを見る。冷静に考えて見れば、確かにそうかもと思いなおす。

「……そうですね。確かに私が原因なのかも知れませんね」
「フム! 分かってくれたか妹よ!!」
「ええ、ですから私が地下の賊に天誅を下している間に『一人で染みは無論、雑菌一つ無い床』に掃除しておくんですよ? 勿論匂いがあったら……」

 〆は入口の近くで真っ二つになった兄を一瞥する。

「理不尽だああああああああ!?」
「兄を労わる妹の心……まさか、お分かりにならないと言う事はなりますまいね?」
「あ、ハイ……」

 丁度その時、賊が開けたままの扉に人影があった。
 魂が抜けた表情で参が頷いている姿を確認したセバスは、報告を後にしてドアを〝そっと〟閉めるのだった。




「では兄上、私は地下へと向かいます。足止めはしていますね?」
「フム、それは間違いなく。今頃出口の無い廊下を歩いている事でしょうな」
「そうですか」

 そう言い残すと、〆は無表情のまま陽炎のようになり消えていく。

「厄災は去りましたか……フム、さて」

 参は転がっている汚物達を見ると、ガクリと肩を落として窓から遠くを見る。

「フム。後片付けをしますかな。さすがにこのまま屋敷に置いておくのも、はばかられますね……。と、なれば庭にでも転がしておきますか。しかし妹相手とはね……全員生きたまま拘束しろとの命でしたが、地下に行った賊は無理かもしれませんね」

 やれやれと一言独り言ちると、純白の上着を脱ぎソファーに掛ける。
 転がった賊を汚物そのものを掴むように片手で持ち上げると、次々と窓の外へと放り投げた。
 不思議な事に、窓の外に放られた賊達はクッションでもあるかのようにバウンドし、庭に転がる。

 それを確認するでもなく、床に広がった汚物と染みを参は一人で撤去作業をするのだった。



 同時刻――。
 
 地下へと向かう階段の終わりが一向に見えずに、少し休憩をしている賊達がいた。
 その顔には焦りと疲れが見えるほどに顔色が悪く、この状況を一刻も早く解決しようとリーダー格の男が頭を悩ませていた。

「おかしい……この階段はこんなに長くはなかったはずだ」
「キルトさんはここに来た事があるんですか?」
「ああ、まだ幽霊屋敷と呼ばれる前に何度か取引でな」
「それだけヤバイ物がある地下室ですか?」
「まあそんなところだ、ここの元の主人は俺達の協力者でな。散々お互いに稼がせてもらったんだがな、ドジこいてコレものだ」

 キルトは首に親指を当て、それを横にスライドするような素振りをする。

「だからこそおかしいんだよ、こんなに長い階段じゃなかったはずだ」
「なるほど……」
「まあ、考えても仕方がない。そろそろ行くぞ」

 部下達は立ち上がると、静かにキルトの後をついて行く。
 ほどなくして先程までの先の見えない階段が、嘘のように突如として終わりが見える。

「着いた、か。全員油断するなよ? 何か嫌な予感がする」

 部下たちは真剣な表情のまま無言で頷く。
 キルトは右手を掲げると握り拳を作り、その後指二本を出すと左右に振って合図を出す。
 すると部下二人が静かに扉の前まで行くと、音が出ないように開ける。
 押し開いたそれは、油をさしたばかりの扉のように、きしみもせずに抵抗なくゆっくりと開いていく。

「キルトさん……なんですか……こりゃあ……」
「何だろうな……夢でも見ているのかもな……」

 後ろに控えていた賊達も安全だと分かったのか、次々と地下室へと入って来る。
 そして全員同じ光景を見て絶句する。

 そこにあったのは金貨、白貨、竜貨まであり、ちらほらと王貨まで見える硬貨の山に、淡い輝きを放つ宝石が無造作にちりばめられ、宝剣ともいえるような美しい剣や、一目で分かる高価な壺や、皿や器などが硬貨の山に突き刺さるように置いてあった。
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