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第三章:滅ぼす者と、領域者との出会い

075:お嬢様の容赦ない日常

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 朝起きると美琴がなぜか怒っている気がする……。
 原因は多分コイツラ・・・・だ。

「おい……お前達。なぜ俺の布団で寝ている?」
「ふわ~おはようなのです。それじゃあ朝ごはんの用意をしてくるのです」

 そう言うとニンジン柄のパジャマを着た、うさ耳の「おねいさん」は何処かへと行ってしまう。

「で、お前は?」
「ふふふ、良いではございませんか……たまにはご一緒したいと思いますが、いけませんか?」

 思わずくらっと来るような微笑みを〆はする。
 そんな彼女を見ると、肌まで透けて見える薄絹一枚のような着物を羽織っており、その姿のまま寝ていたらしい。

「また愛でられたいらしいな、今度は容赦しないぞ? 今日は尻尾の付け根から下へと――」
「ひぅ!? ご勘弁くださいまし。わ、私も朝食の支度を手伝って来ますね!」
 
 そう言うと〆は顔を真っ赤にしながら、脱兎だっとの如く飛び去って行った。狐なのに……。

「まったく……ま、そう怒るなよ美琴。あいつらなりに俺を心配してくれているんだろうさ」

 そう言うと美琴はふるりと揺れる。

「さてっと、昨日の話をまとめると――」

 情報をあつめつつ、ダンジョン攻略へと向かう。そこで経験を積み、『鍵鈴の印』を覚醒させる事が一つ。

 もう一つが借りている屋敷を買い取り、防衛拠点にする事が一つ。

 最後に「異世界を楽しむ」事が一つ。
 これは〆達全員が流れに望んだ事だったので、それも目標に入れておいた感じだ。
 そして初めに契約書に書いた「素晴らしい人生と義務の遂行を」と言うのは、どうやら先祖が異世界で立てた誓いらしく、代々の古廻の長はそれを宣言するそうだ。

「まぁ、こんな所か? 後は向こうに行って決めるかな。今回は何を持って行こうかなぁ……う~ん楽しみだわ」

 暫くまどろんで居ると、〆が狐の折紙になって飛んできた。

「〆:古廻様。お食事の準備が整いましたのでお越しくださいまし」
「むぅ、よく見ればその折紙もまたいい出来だな。ど~れよく見てしんぜよう?」
「〆:ひゃぃ!? そ、そんなに見ないでくださいましな」
「はっはっは、冗談だよ。さて、ウサちゃんが待ってるから行こうぜ?」

 人型に戻った〆と二人で廊下を歩きながら話す。

「今回は少し多めに骨董品や、こっち側の品を持って行きたいんだが可能か?」
「はい、可能です。一般の品ならば、さほど規制はされませんからね」
「規制か。それなんだが、今回お前の兄である参も行くんだろう? それは大丈夫なのか?」
「ええ……私達は曲がりなりにも神の一柱なので。それに門が解放された現在では、古廻様の鍵鈴を使用しなくても、あなた様の認識が好意的ならば、自由に出入りが出来るようになったのです。そして以前も申したかも知れませんが、古廻様の許可があれば双方ともから人員が移動可能ですし、ある程度の品も移動が可能となります」

 そう言う物かと納得し、手早く朝食をすませると倉庫へ向かう。
 ちなみに因幡なっとうは今日も美味かった。ぜひ商品かしたいレベルである。

「品が増えてるな……」

 倉庫にある品が以前よりも、それなりに数が増えていたので少し驚く。

「そうですね。少し仕入れておきました」
「じゃあ適当に持って行きますかね! 何がいいかな~。お! これなんかも良いぞ。あとこれと――」

 荷物の移動をする流の楽しそうな姿を見ているだけで、〆の瞳は潤み顔がデレデレに緩んでしまっており、尻尾はフルルと揺れている。

「壱:おい、見たか参よ。もうダメやろアレ? きしょ悪いったらあらへんで」
「フム。まるで純粋な小娘のようで心底不気味ですな……もしや狐の皮を被った別人では?」

 そんな楽しそうにお喋りをしている二人に、〆はニコリと微笑む。
 お喋りをしていた二人もニコリと微笑み、冷や汗を流す。

 そして〆はおもむろに袖を〝パサリ〟と一振りすると、そこから高速で黄金の長針が高速で飛翔してきた。

「壱:あぎゃああ!?」
「フムゥゥッ!?」

 黄金の長針は壱の眉間を撃ち抜き、参もまた眉間に向かって来た針をギリギリ躱す。

「壱:よ、容赦の欠片も感じないわ……今が不死鳥で良かったわぁ」
「フム。わたしは……み、耳が少し欠けましたが……」

((恐ろしい、色々な意味で恐ろしい……))

「おいおい、何をじゃれているんだお前達は? さて準備も整ったからそろそろ行くぞ二人とも」
「まったく何をしているのです? ほら、古廻様がご出立されますよ。さっさと立ち上がってお供をなさい」

((一体どの口が言ってるんだうろか……))

 〆の容赦ない仕置きに恐怖する二人だった。
 流は異超門を開放する。振り返ると楽し気に見つめる〆と、もふもふに戻った因幡に挨拶をする。

「じゃあ行ってくるよ、お前達も元気でな」
「はい、お早いお帰りをお待ちしております」
「お客人また来てねなのです! あ、これお弁当なのです」

 〆はにこやかに手を振り、因幡はもこもこの手をフリフリしている。

「ありがとな、二人とも。じゃあ、お前達行くぞ」
「参、頼みましたよ? 必ず古廻様をお守りくださいね」
「フム。言われるまでも無し。お任せあれ」
「壱:僕には何か無いんかい!?」
「……邪魔だけはしないようにお願いします」
「壱:なんでやねん!!」

 オチがついた所で三人は門を超えて行き、その姿が見えなくなるまで二人は見送るのだった。


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