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第二章:偉大なる称号

058:大宴会始まり~闇の胎動

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「よっしゃ! 俺の財布を軽くしやがったクソガキに乾杯!」
「私の財布もやられたから悔しいが、ボウヤに祝福を。乾杯!」
「「「ヒャッハ~! アニキに乾杯だ! おっと、ここは通さね~ぜぇ~」」」
「ナガレさん、串焼き大事にしますね。かんぱ~い♪」
「ナガレの生還を祝して! 馬鹿だね、あんたら。だからナガレに賭けとけばよかったんだよ」

 何やらおかしな声も聞こえるが、気のせいだと思う流であった。
 その後、ナガレの討伐成功を祝うのを口実に、あちこちで乾杯が繰り返され、料理が次々運ばれて来るが、持ってきたそばから消えていく。

 そこへジェニファーがエールが入った木製のジョッキを流に差し出し、ヴァルファルドと三人で乾杯する。

「アハン♪ 驚いたかしらん? 本当に公開の等級認定は珍しいイベントなのよ。それに……」

 ジェニファーが視線を向けた方を見ると、若い冒険者を中心に盛り上がっていた。

「オレ、スッゲー興奮した!! あの触手とガチで一歩も動かないで、ヤリ合っている姿が今でも目に焼き付いてるゼ!!」
「ああ! あれは凄かったな! それにその後の大剣を登って行った時は死んだかと思ったら、何故か無傷だったのも驚いた」
「そして最後のアレだろ!? 巨滅兵を真っ二つにした意味の分からない攻撃! あれ剣でやったんだよな? 魔法? どっちにしてもスゲーよ!!」
「最後はこの大宴会の主役にして巨滅の英雄だろ~? しかも多額の報酬まで貰えるとか、憧れるなって言う方が無理だぜ!!」

 大興奮で流の戦いを絶賛する者達……さらに。

「そうそう! そして最後に収音魔具で拾ってたあのセリフがステキよね~」
「うんうん、ソニアの言う通りだよ! もうカッコよすぎて倒れそうになったもん!!」
「分かる、分かるよミニア! 息が出来ないくらいの緊張感で、最後にあのセリフでしょ!?

「「「よう、約束を果たしに来たぜ? 地獄こきょうへ帰りやがれ!!」」」

「もうヤバすぎだよね!!」
「色々漏れそうでやばかったよ!」
「ミニア、そこは人として自重しようね? でもカッコよすぎだよね、ナガレ様! 巨滅級最上位を単独討伐で++の称号でしょ!! もう、色々とハードに抱かれてもいい。いえ、むしろ抱いて!!」
「「アレアがまず女として自重しろ」」

 それを聞いた流は呑んでいたエールを盛大にブッ放つ。

「ブッボッ!? 何だよ! 収音の魔具って!? そんなのもあるのか!!」
「ハッハッハ、それだけじゃないぞナガレ? 今回の死合いの内容は映像保存の魔具で、今後上映予定だからな」
「まぢかよ!? 出演者オレに無許可で上映とか……。俺が許してもフランスの、イズニ―村の有名な子孫が起こした会社が許さんぞ」
「アハン♪ それを含めた報酬額って感じかしらん。ギルドとしても今回の興行でかなりの収益になったでしょうしねん。何より冒険者達、特に若い子達がボーイの健闘に憧れてるわん。それで依頼にますます力が入って、ギルドも冒険者もどっちもお得ってわ・けよん?」

 なるほど、と流は辺りを見渡し納得する。

(ただね、一部ではその逆もあるのよね……)

 ジェニファーは別の一角に集まっている三人にさりげなく注視する、そこには今日行った実力テストの参加者だった男を見る。

「チッ、あんなの何かトリックがあるに決まっている。きっとギルドと裏取引をしてイカサマをしてるに違いねぇ」
「もう、カワードったらいい加減にしなよ! ナガレさんがそんな事するわけないじゃない! ねぇお姉ちゃん?」
「ああ、アタシもそう思う」
「ハッ、お前達はみる目が無い。どう見てもイカサマだぞ。あんな曲がった細い剣で、馬鹿デカイ巨体が切れる・・・訳が無い! 大嘘だ、あんなのは!!」
「カワード……」
「…………」

 昔から内面的に酷く歪んだ男だったが、ここ最近はそれが特に酷く感じる。
 そんなカワードのあまりの妬みの酷さに姉妹は言葉を失う。

「こんな所に居ても面白くもなんともねぇ。さっさと飯食ったら外で飲み直そうぜ? あんなイカサマ野郎より、俺の剣技の方が冴えてるって分かるだろ? なぁ~リリアン?」
「……ああ、そうだな間違っていない」
「オネーチャンまで!」
「ああ、やっぱりもういいや。それじゃあもう行こうぜ。俺らは今日の参加者ってんで、ただ飯だから来たが、最悪の雰囲気で食ってもマズイだけだ」

(どうも気になるわね……あのカワードって子と、姉のリリアンだったかしら? 何も問題を起こさなければいいけれど)

 カワードを追いかけるように出て行く二人に、ジェニファーは経験上、嫌なものを感じていた。
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