51 / 486
第二章:偉大なる称号
050:騒然の冒険者ギルド前
しおりを挟む町を歩くと、領都内の定期馬車が忙しそうに道を往復し、買い物客や仕事帰りのワーカーで溢れていた。
子供連れの親子がバスケットいっぱいに詰まったパンを購入し、嬉しそうにそれを持つ子供。
巨大な肉の塊を男二人で回し焼している屋台や、不思議な果物が山積みになっている店が隣にあるかと思えば、キノコ専門店まであり、屋台だけで数えるのが馬鹿らしいほどずらりと並んでいる。
ふと少し離れた広場を見れば、大道芸が始まると宣伝をしている。
すると子供から大人まで殺到し歓声が上がり、その大道芸の客達に飲み屋の呼び込みを明るく元気にこなす娘達など、見ていて飽きないどころか興味が尽きない。
「この時間が一番活気がある感じだな……それに大抵の人の顔が明るい。ここの領主はよほど善政を敷いているのかね」
中央広場を抜け、しばらく歩くと遠くに正門が見えて来た。その傍に冒険者ギルドがあるためか、正門から少し行った場所には人が沢山集まっていた。
「ギルドもこの時間は大忙しか? こんな時に昇格試験をするなんてジェニファーちゃんも何を考えてるんだ?」
更に近づくと異様な雰囲気が伝わって来る。
「おいおい、まさかこれって……原因は、俺? うっそだろ、アホなのか異世界……」
朝には無かった屋台が道の領端に所狭しと並び、飲み物や食べ物を大声で売っており、更に「場外賭札場」とデカデカと看板が上がり、そこへ人が殺到していた。
良く見ると、その屋台群の中に見知った顔を見つける。
「ファン! 一体これは何事だ!?」
「おお!! ナガレか! お前のお陰でうちの奴らも大助かりだぜ!」
「やっぱり俺がこの騒ぎの原因か……で、オッズはどうなってる?」
「流石商人、切り替えが早いな!」
そう言うとファンは豪快に笑う。
「今の所お前が劣勢だ。何せ相手は巨滅級だろ? しかも単独討伐だ。普通に考えりゃ無理つーか、死ぬ。そんな負け勝負に誰が賭けるか? って話よ」
「だよな~。で、お前はどうしたんだ?」
「ばっか、聞くなよ恥ずかしい! 当然お前に全ツッパよ!!」
「お前なあ~商人なら手堅く行けよ? ギャンブルは身を持ち崩すぞ?」
「それこそまさかって奴よ、こんなんギャンブルにすらなってねーだろ? 何せ確実にお前が勝つんだからな!」
「おいおい、勝負は時の運だぜ? まあ、負ける気はしないがな」
そう言うと二人はニヤリと口角を上げる。
「死ぬなよ、ナガレ。お前にはまだまだ、返さなきゃいけない借りがあるんだからな」
「貸したつもりは無いが、死ぬつもりもない。だから安心して商売してろ」
「はは、相変わらずだな。俺も始まる頃には他の奴に任せて見学に行くわ。あ、そうだ! この串焼きを食べてけ。最上級の力豚の頬肉だ、力が湧くぜ?」
「おお~そりゃいい。丁度腹も減ってたから、うさちゃん特製の弁当でも食べようかと思ってたんだよ」
「うさちゃん? まあそれなら丁度良かったな。ほれ、焼きたてだ!」
ファンは流に焼いていた串焼きを全部渡す。
「おいおい、食いきれないぞ」
「そん時はギルドの奴にやればいい、まあ持ってけ」
ファンは串焼きを包み、周囲を見渡しながら流に面白そうに語り掛ける。
「こいつ等はお前のショータイムに期待して、今や噴火間際の活火山だぜ。無論俺もだがな!」
「お、ありがとうよ、串焼きは貰っておく。じゃあ後で来てくれ、俺に役者の才能が求められているのなら、主演としては最高のショーを演じてみせようじゃないの」
「はっはっは、そうさせてもらうぜ」
「あっと、ファン。これを俺に全額賭けといてくれ」
そう言うと流はファンに、腰の袋を放り投げる。
「ッハ! 勝負は時の運だと? 良く言うぜ」
返事代わりに流は右手をヒラヒラ振りながら、振り返らずにギルドへと歩く。
相変わらず無駄に誘ってる、バニー人形を一瞥しながらギルドの前に到着すると、ウエスタンドアを思いっきり「押して」入る。
――鳴り響くよそ者アラートが、喧騒のギルドに一時の静寂をもたらす。
シンと静まり返るギルド、そして入り口には歓迎するかのように奴らが居た。
「おい、挨拶はどうした?」
「ヒィ! ヒ、ヒャッハー!」
「ココ、ここは通さねーぜ~!」
「よし、合格!! やれば出来るじゃないか、これで立派な特級雑魚認定だな。うむ、実に清々しい」
「へい、アニキ! これからも精進しやす!」
「誰がアニキだ、誰が。人聞きの悪い事を言うな」
そんな手下? との温かい交流をしていると、ギルド内部が徐々に騒がしくなる。
☆*:゚♪+。.☆.+**:゚+。☆彡
【あなた様に大感謝♪】
☆*:゚+。.☆.+*♪*:゚+。★彡
ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます!
更新の励みになりますので、よろしければブックマークや感想を頂けたら、とっても嬉しいです♪
あなた様の応援、こころよりお待ちしています。(*ᴗˬᴗ)⁾⁾ペコリ
0
お気に入りに追加
274
あなたにおすすめの小説
大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います
騙道みりあ
ファンタジー
魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。
その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。
仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。
なので、全員殺すことにした。
1話完結ですが、続編も考えています。
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが……
アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。
そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。
実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。
剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。
アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。
チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい
616號
ファンタジー
不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。
ゴミアイテムを変換して無限レベルアップ!
桜井正宗
ファンタジー
辺境の村出身のレイジは文字通り、ゴミ製造スキルしか持っておらず馬鹿にされていた。少しでも強くなろうと帝国兵に志願。お前のような無能は雑兵なら雇ってやると言われ、レイジは日々努力した。
そんな努力もついに報われる日が。
ゴミ製造スキルが【経験値製造スキル】となっていたのだ。
日々、優秀な帝国兵が倒したモンスターのドロップアイテムを廃棄所に捨てていく。それを拾って【経験値クリスタル】へ変換して経験値を獲得。レベルアップ出来る事を知ったレイジは、この漁夫の利を使い、一気にレベルアップしていく。
仲間に加えた聖女とメイドと共にレベルを上げていくと、経験値テーブルすら操れるようになっていた。その力を使い、やがてレイジは帝国最強の皇剣となり、王の座につく――。
※HOTランキング1位ありがとうございます!
※ファンタジー7位ありがとうございます!
平凡すぎる、と追放された俺。実は大量スキル獲得可のチート能力『無限変化』の使い手でした。俺が抜けてパーティが瓦解したから今更戻れ?お断りです
たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
ファンタジー
★ファンタジーカップ参加作品です。
応援していただけたら執筆の励みになります。
《俺、貸します!》
これはパーティーを追放された男が、その実力で上り詰め、唯一無二の『レンタル冒険者』として無双を極める話である。(新形式のざまぁもあるよ)
ここから、直接ざまぁに入ります。スカッとしたい方は是非!
「君みたいな平均的な冒険者は不要だ」
この一言で、パーティーリーダーに追放を言い渡されたヨシュア。
しかしその実、彼は平均を装っていただけだった。
レベル35と見せかけているが、本当は350。
水属性魔法しか使えないと見せかけ、全属性魔法使い。
あまりに圧倒的な実力があったため、パーティーの中での力量バランスを考え、あえて影からのサポートに徹していたのだ。
それどころか攻撃力・防御力、メンバー関係の調整まで全て、彼が一手に担っていた。
リーダーのあまりに不足している実力を、ヨシュアのサポートにより埋めてきたのである。
その事実を伝えるも、リーダーには取り合ってもらえず。
あえなく、追放されてしまう。
しかし、それにより制限の消えたヨシュア。
一人で無双をしていたところ、その実力を美少女魔導士に見抜かれ、『レンタル冒険者』としてスカウトされる。
その内容は、パーティーや個人などに借りられていき、場面に応じた役割を果たすというものだった。
まさに、ヨシュアにとっての天職であった。
自分を正当に認めてくれ、力を発揮できる環境だ。
生まれつき与えられていたギフト【無限変化】による全武器、全スキルへの適性を活かして、様々な場所や状況に完璧な適応を見せるヨシュア。
目立ちたくないという思いとは裏腹に、引っ張りだこ。
元パーティーメンバーも彼のもとに帰ってきたいと言うなど、美少女たちに溺愛される。
そうしつつ、かつて前例のない、『レンタル』無双を開始するのであった。
一方、ヨシュアを追放したパーティーリーダーはと言えば、クエストの失敗、メンバーの離脱など、どんどん破滅へと追い込まれていく。
ヨシュアのスーパーサポートに頼りきっていたこと、その真の強さに気づき、戻ってこいと声をかけるが……。
そのときには、もう遅いのであった。
S級スキル【竜化】持ちの俺、トカゲと間違われて実家を追放されるが、覚醒し竜王に見初められる。今さら戻れと言われてももう遅い
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
ファンタジー
主人公ライルはブリケード王国の第一王子である。
しかし、ある日――
「ライル。お前を我がブリケード王家から追放する!」
父であるバリオス・ブリケード国王から、そう宣言されてしまう。
「お、俺のスキルが真の力を発揮すれば、きっとこの国の役に立てます」
ライルは必死にそうすがりつく。
「はっ! ライルが本当に授かったスキルは、【トカゲ化】か何かだろ? いくら隠したいからって、【竜化】だなんて嘘をつくなんてよ」
弟である第二王子のガルドから、そう突き放されてしまう。
失意のまま辺境に逃げたライルは、かつて親しくしていた少女ルーシーに匿われる。
「苦労したんだな。とりあえずは、この村でゆっくりしてくれよ」
ライルの辺境での慎ましくも幸せな生活が始まる。
だが、それを脅かす者たちが近づきつつあった……。
全裸追放から始まる成り上がり生活!〜育ててくれた貴族パーティーから追放されたので、前世の記憶を使ってイージーモードの生活を送ります〜
仁徳
ファンタジー
テオ・ローゼは、捨て子だった。しかし、イルムガルト率いる貴族パーティーが彼を拾い、大事に育ててくれた。
テオが十七歳になったその日、彼は鑑定士からユニークスキルが【前世の記憶】と言われ、それがどんな効果を齎すのかが分からなかったイルムガルトは、テオをパーティーから追放すると宣言する。
イルムガルトが捨て子のテオをここまで育てた理由、それは占い師の予言でテオは優秀な人間となるからと言われたからだ。
イルムガルトはテオのユニークスキルを無能だと烙印を押した。しかし、これまでの彼のユニークスキルは、助言と言う形で常に発動していたのだ。
それに気付かないイルムガルトは、テオの身包みを剥いで素っ裸で外に放り出す。
何も身に付けていないテオは町にいられないと思い、町を出て暗闇の中を彷徨う。そんな時、モンスターに襲われてテオは見知らぬ女性に助けられた。
捨てる神あれば拾う神あり。テオは助けてくれた女性、ルナとパーティーを組み、新たな人生を歩む。
一方、貴族パーティーはこれまであったテオの助言を失ったことで、効率良く動くことができずに失敗を繰り返し、没落の道を辿って行く。
これは、ユニークスキルが無能だと判断されたテオが新たな人生を歩み、前世の記憶を生かして幸せになって行く物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる