上 下
21 / 486
第一章:素敵な出会い、それは狂った妖刀でした

020:飴玉と信楽焼と

しおりを挟む
「RPGも真っ青な効果は理解した、これは使い所が色々ありそうだな」
「〆:はい、その代わり全体の時間では、飴が溶けて効果が出るまでの時間は約七分です。ワサビからは一分後に効果発動となりますので、そこをお忘れになりませぬように」
「つまりワサビになってからが効果のカウントダウンだな、使い勝手は悪そうだが効果は了解した。あ、そうだ思い出した。ここに戻って来る時に障子戸が出る場所じゃない所で鉾鈴を使ったんだけど、障子戸が出なかったんだよな。何か知ってるか?」

 謎の飴玉。エリク飴の講習が終わり、異世界での出来事を〆に尋ねる。

「〆:あ~それはですね、現在の状況では短時間内に|異超門(いちょうもん)を開く事が出来るのは、元の場所だけですね。異超門を使用後、二四時間経過すればどこでも開く事が出来ますが、今度はその場所でしか開く事が出来なくなるので注意してください」
「つまり二四時間たてばセーブポイントが変更可能って感じか……分かった、気を付けるよ。それと、もし俺以外もここへ連れてくることは可能なのか?」
「〆:可能です。しかし古廻様の許可が無いと異超門に触る事すら出来ませんし、攻撃も不可能です。が、見る事は可能です」
「異超門って言うのか。異界を超える門か……なるほどね、いざとなったらシェルターとしても役に立ちそうだ」
「〆:ただ過信はしないでくださいね、攻撃されると接続が不安定になる事もあり、待ち伏せの危険性もあります」
「そう言う事もあるのか、気を付けるよ」

 そんな話をしていると、因幡が温泉マークの付いた|半被(はっぴ)を羽織って来る。

「〆:お風呂の準備が整っております、案内は因幡が致しますので不明な点は彼女に聞いてください」

「そうか、じゃあ因幡頼むよ」
「はーい。お客人こちらなのです」

 すると何も無かった壁だった所が入口になり、その奥に廊下が続いていた。

「本当に何でもありなんだな……」
「当店自慢のどこでも回廊なのです! 便利ですよ?」
「便利すぎて普通の生活に戻るのが怖いわ。時に、俺は何時間寝てたんだ? 時計もスマホも荷物袋に入れっぱなしで見てないんだわ」
「そうですね~。一日ちょっとなのです。着ていたものは洗濯して枕元にあるですよ」
「そんなに寝てたのか……。それより、因幡は仕事が早いうさぎさんですね」
「えへへ~なのです」

 因幡は照れながら風呂場の前まで案内する。
 暖簾を潜ると正に大浴場がそこにあった。
 正面には檜風呂があり、その左右には信楽焼の個性的な形の壺風呂が並び、打たせ湯、電気風呂、炭酸風呂、滝湯、足湯、寝湯、ゆず湯、ワイン風呂や牛乳風呂まであり、サウナまであった。
 
 この風呂は|四阿(あずまや)のような、大きな屋根がかかっているだけの構造で、実に開放的な空間だった。 
 さらに奥には庭園のような露天風呂があり、あそこに入ると池に入っているんじゃないのか? と思うような作りだった。

「これはまた凄いな! 一人で入るのはもったいない感じがするな、因幡も一緒に入るか?」
「だ、ダメですょ! 年頃の娘を風呂に誘うなんて、いけないのです!」
「そうは言ってもモフモフウサギだからなぁ。つい忘れてたよ」
「もぅ! これは本当の姿ですけど、仮の姿でもあるんですからね。本当のボクは綺麗系なお姉さんなのです」
「おいおい、どっちが本当の姿なんだよ」

(お子様は背伸びしたがるって言うし……でも神話のウサギなんだよなぁ? う~む)

「そう言えば美琴はどうしたらいい? まさか風呂にまで持って行く事は無理だろう?」
「えっとですね、美琴さんは妖刀なので、水でもお湯でも塩水でも全部浸かっても問題ないのです。だから血糊が付いても浄化もしちゃうのです。あ、そうでした。先日の戦闘がとても激しかったと聞いているのです。なので少しお手入れをしたいと番頭さんが言っていたので、少し美琴さんをお借りするのです」
「そうか。それは構わないが、因幡は美琴を持てるのか?」
「うん、持てるのですよ。美琴さんが触れる事を許してくれる者なら誰でも触れるのです」
「そうか、じゃあ良く見てやってくれ。本当に今回は美琴に命を救われたからな」

 そう言うと流は美琴を一撫でしてから因幡へと渡す。

「お任せあれなのです。では『|四阿(あずまや)温泉郷』をごゆっくり、お楽しみくださいなのです。月見酒は中央のコロコロと動いている石から湧き出てるですので、ご自由にお楽しみくださいなのです」
「至れり尽くせりだな……」

 そう言うと因幡は美琴を両手に持つと、廊下をトテトテと戻っていった。

「しかし……どこから入ろうか迷うな」

 流は掛け湯で体を清めてから浴槽へ向かう。これをしない馬鹿がたまに居るが、他人が同じような事をしているのを見たら嫌にならないのだろうか? と流は何時も思っていた。

「よし、まずは檜だな! う~ん……檜のいい香りだぁ。ヤバイ、溶けそうになるわ~」
 
 しばらく堪能してからワイン、牛乳、電気でシビレて信楽焼の壺風呂に来てその出来に目を魅かれる。

「この火色が良い味出してるな、そして武骨ながらも滑らかな曲線が丁度湯舟に入ると遠くの山が雲海を纏っているかのようだ……狙ったかのような黄と緑の色が秋を感じさせる。本当に面白い作者だな」
 
 などとブツブツ独り言を言っていると、突然隣から「おい、小僧」と野太い声がした。


 ☆*:゚♪+。.☆.+**:゚+。☆彡
  【あなた様に大感謝♪】
 ☆*:゚+。.☆.+*♪*:゚+。★彡

 ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます!
 更新の励みになりますので、よろしければブックマークや感想を頂けたら、とっても嬉しいです♪
 あなた様の応援、こころよりお待ちしています。(*ᴗˬᴗ)⁾⁾ペコリ  
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います

騙道みりあ
ファンタジー
 魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。  その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。  仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。  なので、全員殺すことにした。  1話完結ですが、続編も考えています。

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

ゴミアイテムを変換して無限レベルアップ!

桜井正宗
ファンタジー
 辺境の村出身のレイジは文字通り、ゴミ製造スキルしか持っておらず馬鹿にされていた。少しでも強くなろうと帝国兵に志願。お前のような無能は雑兵なら雇ってやると言われ、レイジは日々努力した。  そんな努力もついに報われる日が。  ゴミ製造スキルが【経験値製造スキル】となっていたのだ。  日々、優秀な帝国兵が倒したモンスターのドロップアイテムを廃棄所に捨てていく。それを拾って【経験値クリスタル】へ変換して経験値を獲得。レベルアップ出来る事を知ったレイジは、この漁夫の利を使い、一気にレベルアップしていく。  仲間に加えた聖女とメイドと共にレベルを上げていくと、経験値テーブルすら操れるようになっていた。その力を使い、やがてレイジは帝国最強の皇剣となり、王の座につく――。 ※HOTランキング1位ありがとうございます! ※ファンタジー7位ありがとうございます!

平凡すぎる、と追放された俺。実は大量スキル獲得可のチート能力『無限変化』の使い手でした。俺が抜けてパーティが瓦解したから今更戻れ?お断りです

たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
ファンタジー
★ファンタジーカップ参加作品です。  応援していただけたら執筆の励みになります。 《俺、貸します!》 これはパーティーを追放された男が、その実力で上り詰め、唯一無二の『レンタル冒険者』として無双を極める話である。(新形式のざまぁもあるよ) ここから、直接ざまぁに入ります。スカッとしたい方は是非! 「君みたいな平均的な冒険者は不要だ」 この一言で、パーティーリーダーに追放を言い渡されたヨシュア。 しかしその実、彼は平均を装っていただけだった。 レベル35と見せかけているが、本当は350。 水属性魔法しか使えないと見せかけ、全属性魔法使い。 あまりに圧倒的な実力があったため、パーティーの中での力量バランスを考え、あえて影からのサポートに徹していたのだ。 それどころか攻撃力・防御力、メンバー関係の調整まで全て、彼が一手に担っていた。 リーダーのあまりに不足している実力を、ヨシュアのサポートにより埋めてきたのである。 その事実を伝えるも、リーダーには取り合ってもらえず。 あえなく、追放されてしまう。 しかし、それにより制限の消えたヨシュア。 一人で無双をしていたところ、その実力を美少女魔導士に見抜かれ、『レンタル冒険者』としてスカウトされる。 その内容は、パーティーや個人などに借りられていき、場面に応じた役割を果たすというものだった。 まさに、ヨシュアにとっての天職であった。 自分を正当に認めてくれ、力を発揮できる環境だ。 生まれつき与えられていたギフト【無限変化】による全武器、全スキルへの適性を活かして、様々な場所や状況に完璧な適応を見せるヨシュア。 目立ちたくないという思いとは裏腹に、引っ張りだこ。 元パーティーメンバーも彼のもとに帰ってきたいと言うなど、美少女たちに溺愛される。 そうしつつ、かつて前例のない、『レンタル』無双を開始するのであった。 一方、ヨシュアを追放したパーティーリーダーはと言えば、クエストの失敗、メンバーの離脱など、どんどん破滅へと追い込まれていく。 ヨシュアのスーパーサポートに頼りきっていたこと、その真の強さに気づき、戻ってこいと声をかけるが……。 そのときには、もう遅いのであった。

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

S級スキル【竜化】持ちの俺、トカゲと間違われて実家を追放されるが、覚醒し竜王に見初められる。今さら戻れと言われてももう遅い

猪木洋平@【コミカライズ連載中】
ファンタジー
 主人公ライルはブリケード王国の第一王子である。  しかし、ある日―― 「ライル。お前を我がブリケード王家から追放する!」  父であるバリオス・ブリケード国王から、そう宣言されてしまう。 「お、俺のスキルが真の力を発揮すれば、きっとこの国の役に立てます」  ライルは必死にそうすがりつく。 「はっ! ライルが本当に授かったスキルは、【トカゲ化】か何かだろ? いくら隠したいからって、【竜化】だなんて嘘をつくなんてよ」  弟である第二王子のガルドから、そう突き放されてしまう。  失意のまま辺境に逃げたライルは、かつて親しくしていた少女ルーシーに匿われる。 「苦労したんだな。とりあえずは、この村でゆっくりしてくれよ」  ライルの辺境での慎ましくも幸せな生活が始まる。  だが、それを脅かす者たちが近づきつつあった……。

全裸追放から始まる成り上がり生活!〜育ててくれた貴族パーティーから追放されたので、前世の記憶を使ってイージーモードの生活を送ります〜

仁徳
ファンタジー
テオ・ローゼは、捨て子だった。しかし、イルムガルト率いる貴族パーティーが彼を拾い、大事に育ててくれた。 テオが十七歳になったその日、彼は鑑定士からユニークスキルが【前世の記憶】と言われ、それがどんな効果を齎すのかが分からなかったイルムガルトは、テオをパーティーから追放すると宣言する。 イルムガルトが捨て子のテオをここまで育てた理由、それは占い師の予言でテオは優秀な人間となるからと言われたからだ。 イルムガルトはテオのユニークスキルを無能だと烙印を押した。しかし、これまでの彼のユニークスキルは、助言と言う形で常に発動していたのだ。 それに気付かないイルムガルトは、テオの身包みを剥いで素っ裸で外に放り出す。 何も身に付けていないテオは町にいられないと思い、町を出て暗闇の中を彷徨う。そんな時、モンスターに襲われてテオは見知らぬ女性に助けられた。 捨てる神あれば拾う神あり。テオは助けてくれた女性、ルナとパーティーを組み、新たな人生を歩む。 一方、貴族パーティーはこれまであったテオの助言を失ったことで、効率良く動くことができずに失敗を繰り返し、没落の道を辿って行く。 これは、ユニークスキルが無能だと判断されたテオが新たな人生を歩み、前世の記憶を生かして幸せになって行く物語。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

処理中です...