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第一章:素敵な出会い、それは狂った妖刀でした

007:古廻流、悪魔を払う

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「〆:ああぁぁ!! ダメですよ! その子に呪われると言っては!」
「な、なんでだよ?」
「〆:だって……ほら……」

 流は刀を見ると、若い娘の聞くだけで呪われるような、不気味なすすり泣く声が聞こえて来た。
 しかもなぜか鞘から液体が、ポタリ……ポタリ……と、したたり落ちている。

「ヒッィィ!?」
「〆:ほらぁ! どうするんですか、ああなったら百年泣き止みませんよ!?」
「ど、ど、ど、どうすればいいんだ~?」
「〆:激安の殿堂みたいな言い方はやめてください! 早く悲恋美琴を手に取り、誠心誠意謝るのです!!」
「うぅ……よし、まずは触れないであやまろう。美琴様ごめんなさい! 迷わず成仏してね! アーメン! なんまいだぶ! 悪魔よ去れ!」
「〆:それ、謝ってませんよ!? ほら、ますます酷く泣き始めたじゃないですか!!」
「うぅぅ、俺ここで死んじゃう? え、ええいままよ!!!!!!」

 流は覚悟を決めて妖刀・悲恋美琴を手にし、心の中で誠心誠意謝った。それはもう土下座すら生温い気持ちで謝った。
 さらにはそれでも足りないと、実際に五体投地と言う「うつ伏せになったまま、床に体を投げ出す格好」で、魂の底から謝罪する。
 
 すると今まで泣いていた刀は嘘のように静かになり、涙と思われる液体は固形物となっていた。

「こ……これで良いのか?」
「〆:ふぅ~。なんとかなりましたね。それよりも無事に妖刀・悲恋美琴の入手おめでとうございます!」
「は? いや、〆が持てと言うから持っただけですが?」
「〆:過程はどうあれ、結果的に主と認められたようですね。もし美琴が拒否したら狂い死にしていたでしょうし」
「おまえはなんつー恐ろしい事をさらっと……って! またお前にハメめられたのか!?」
「〆:失礼な。古廻様なら出来ると信じていたからの事ですよ、正に信頼の証ですね。それと、なんとか無事に生還出来たので、特別報酬が発生しました。報酬は『異世界言語理解』です。触れて了承すれば即、力が反映されます」

 どうやら命の危機だったらしい流は、知らないうちに新たな報酬を手に入れていたようだ。

「お前はブラック企業の社長か? って言うか、お前『なんとか』ってやっぱり信じて無かったんだな! 大体いらないぞ、こんな呪――コホン。妖刀なんて! 返品を要求する!」
「〆:当社の規定により、クーリング・オフはお客様が手に取った瞬間から、返品不可となっておりますのでご了承ください☆」
「し、信じられねぇ……。消費者庁へ訴えてやるッ! 出発前に命の危機にあっていた事実にぶっ倒れそうなほど疲れたよ……帰っていい?」
「〆:まぁまぁ。おかげで軍資金も出来、さらに異世界言語も得られましたよ、ほら? すーぱーらっきーって感じしません?」
「しませんね! ええ全く持って!? たくっ……さて異界言語理解とやらはこの巻物っぽいやつか?」
「〆:はい。それを手に持ち、頭の中に出る選択肢を了承すれば完了です」
「どれどれ、こうか? おお! これは凄いな」

 流は頭の中に浮かぶ、まるで「ゲームのステータスウインドのような光景」に興奮しながらも了承を選ぶ。

「……別に何ともないが、成功したのか?」
「〆:はい、特に何も変わった事は無いと思います、実感は向こう側へ言って書物を見れば分かると思います」
「なるほどね。了解した」
「〆:ではこちらへ……」

 フワリと〆が浮かび上がると、悲恋美琴の傍まで行く。すると先ほどの涙が落ちた所をよく見ると真珠となって床一面にばら撒かれていた。
 その一粒を手に取り、流はまじまじと見つめて唸る。

「〆:これで活動資金にはなると思いますよ。あちらでも真珠は高価なはずですからね」
「かなりの良品だなこれは。深みと言い艶と言い申し分ない一品だ。呪われているとか言ってごめんな、美琴」

 すると美琴が嬉しそうに震えた感じがした。
 
「うぉッ震えた!? ……キモい。ん、それに湿っぽくなってきたぞ?」
「〆:もう! そう言う事を言うとまた泣いちゃいますよ?」
「あぁごめんごめん、慣れなくてつい、な?」
「〆:もう、美琴を泣かせないでくださいましよ?」
「分かっているって。じゃあ行って来る。行くぞ美琴!」

 流は真珠と近くにあった品を適当に袋へ詰め、悲恋美琴を片手に持ち障子戸の前に立つ。

「〆:行ってらっしゃいませ、鍵は無くさないように細心の注意を払ってください。無くすとここへ戻れなくなりますからね」
「分かった! では、開錠!」

 ●を押す。するといつの間にか治っていた障子がまたも〝ぷすっ〟と穴が開いたと同時に障子戸が開く。
 今度は少量の光が溢れただけで、即外へと繋がった。

 その様子を見ている〆は、内心はとても揺れていた。
 そして「あの日」から封印されたまま、開く事が無かった障子戸の向こうを見つめ、流の背を優しく見守る。
 
(〆:本当にまた開く日が来るとは……。流様・・行ってらっしゃいませ。そして美琴を頼みます、彼女は私の大事な友人ですからね。それと兄もよろしくお願いします)

 〆は流が消えて障子戸が閉まってもなお、その場所を見続けた。
 過去を思い出すように静かに、ずっと……。


 ◇◇◇


「あらためて見ると凄く広い所だな……ここはやはり崖の上なのか?」

 流が景色に見とれていると、背後から何かが落ちた音がしたので振り返ると、障子戸は無くなっていた。
 障子戸があった場所には、登山用に使えるリュック状の革製で出来た物と、固形燃料等の器具やレトルト食品が入った箱が置いてある。

「〆の奴、なんだかんだとサポートは万全だな」

 ふと、右手の重みを思い出し美琴を見ると、桜がほんのり赤くなった気がした。
 送られた荷物から無駄に豪華な帯剣用の腰帯を巻き、早速美琴を腰に佩ぐ。
 逸る気持ちから荷を適当に持ってきた流は、真珠やちょっとした行商が出来る物や食料を、〆が送ってきた質の良い黒皮のリュックに詰め込み準備を完了させる。

 準備が完了した流れは、荷物にあった双眼鏡で景色をもう一度よく見る。すると遠くに町のような建物群が見えた。

「よし! まずはあそこへ行ってみようぜ美琴!」

 美琴は流に答えるように、優し気に揺れるのだった。
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