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明日香お嬢様の楽しい日常
066:悪霊の襲撃
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「祕巫女が現れたという事は、それだけ日本がやべぇという事だ。これまでの話と経験で、おまえが狙われている理由も分かったと思うけど……枢木明日夏。おまえが祕巫女だという自覚があるか?」
「うん……本当は今日、目覚めてから体の中で何かが大きくなる感じがしたの。だから気のせいだと思いたくて、気分を変えて散歩にでもと思ってさ」
震える瞳で変態さんを見つめる。
彼は一切動じずに、静かに私の瞳を見つめながら話す。
「でも怖いよ……そんな事を急に言われても……」
「奇遇だな。俺も怖い」
「え、それはどうして? こんなに強いのに」
変態さんはそのままの姿勢で、コーヒーの紙カップを差し出しながら話す。
「俺も魂の奥底に獣を飼っている。そいつがいつ暴れ出すかと思うと不安でさ……おかげで、夜も眠れず昼寝をするほどだからな」
一瞬何を言っているのかが分からなかったけど、意味を理解すると思わず吹き出す。
「ぷっ、何よそれ。寝ちゃっているじゃないのよ。でもありがとう」
真面目な表情だけど、言っている事は冗談だと分かった。
だから思わず笑みが漏れ、変態さんの気遣いに感謝の言葉がでる。
確かに意味がわからない状況に巻き込まれ、気がついたら結界の調律者というものになった。
実際ここ最近、怪異と思える現象を〝何となく〟感じていたし、それが昨日から今日にかけて現実だと認識してしまった。
そして一番認識した原因。それは目の前の自称・陰陽師だという男であり、私を何度も助けてくれた変態な男。
どうしようもないほどに自信家で、どうしようもないほどに変態で、どうしようもないほどに――私の心がゆり動かされた。
それでもまだ不安げな顔を見たからか、変態さんは何とも言いようのない表情で、苦くはにかみながら「本当だぜ?」と言いながら続ける。
「なによその顔は。本当にずるい人ね」
「そうか? まぁよく言われるけど」
「知っているかしら? そう言うのをあざといと言うのよ?」
「あざといついでにもう一つ。なにがあろうと明日夏……俺がおまえを絶対に守ってやる。だから受け取れ」
変態らしからぬ凛々しくも真摯な表情。
そんな顔にドキリとし頬が熱くなるのを感じた。
けれどこちらの気持ちなどお構いなしに、彼――戦極は片膝立ちのまま、私の口元へとコーヒーのカップを差し出す。
思わず「う、うん」と答えるのが精一杯だったが、きっと顔が真っ赤なのだろうという自信がある。
今度は落とさないように、しっかりと両手でつかみ思わずカップで顔を隠してしまう。
ちらりとカップの上部から彼を見下ろすと、「黒……か。微妙だな」と意味の分からない事を言いつつ立ち上がる。
そして善次へと向き直ると、何かを渡しながら遠くを指差して口を開く。
「おいでなすったな」
「承知いたしました。あとはお任せを」
彼は「頼む」と言うと、また私へと向き直ると最初は軽やかに話し、後半は重々しく話す。
「何かあったらすぐに異怪骨董やさんへ来いよ。俺が居なくても誰かいるから安心しな」
「異怪骨董やさんね? うん、わかった」
「それと祕巫女たるもの、幽霊になれるのも大事だ。そこでレッスンワン! 幽霊を食い止めろ……だッ!!」
ビシリと彼は鴨川の向こう岸を指差す。
見る。いえ、視るとそこには人とは思えない色白の美しい肌の少女と、あの子狐ちゃんがいた。
「戦極様! やっと見つけたんだよ!!」
「もぅ~ワレは眠いんだからして、あるじぃ~の捜索は一人でしてほしいんだワン」
「無駄に高性能なお鼻しているんだから、こういう時だけは頼りにしているんだよ」
「色々酷いワンけど、あるじぃ~が見つかったからヨシとするんだワン」
そんなやり取りがここまで聞こえてくる。
だからまた自殺した霊が私へと来るのかとゾっとして、彼の方を向くが。
「ち、ちょっと戦極くん。また水辺に幽……って居ない?! どこへ消えたの?」
今まで隣に居たはずだけど、煙のようにかき消えた彼。
コーヒーカップを持つ手に力が軽く入ると、違和感を感じてその原因を見る。
そこには紙が一枚はさまっており、〝ピンクに黒はちょっと、な?〟と書いてあった。
「ピンクに黒……? って!? それは私のスカートと下着の色じゃない?! ッ……あの変態めええええ!!」
消え去ったあいつ、ド変態へと怒りの咆哮をあげながら、高くなった空を睨む。
そんな空中を、黒の友禅を着た幽霊が子狐と共にやってくるのが見えた。
「うん……本当は今日、目覚めてから体の中で何かが大きくなる感じがしたの。だから気のせいだと思いたくて、気分を変えて散歩にでもと思ってさ」
震える瞳で変態さんを見つめる。
彼は一切動じずに、静かに私の瞳を見つめながら話す。
「でも怖いよ……そんな事を急に言われても……」
「奇遇だな。俺も怖い」
「え、それはどうして? こんなに強いのに」
変態さんはそのままの姿勢で、コーヒーの紙カップを差し出しながら話す。
「俺も魂の奥底に獣を飼っている。そいつがいつ暴れ出すかと思うと不安でさ……おかげで、夜も眠れず昼寝をするほどだからな」
一瞬何を言っているのかが分からなかったけど、意味を理解すると思わず吹き出す。
「ぷっ、何よそれ。寝ちゃっているじゃないのよ。でもありがとう」
真面目な表情だけど、言っている事は冗談だと分かった。
だから思わず笑みが漏れ、変態さんの気遣いに感謝の言葉がでる。
確かに意味がわからない状況に巻き込まれ、気がついたら結界の調律者というものになった。
実際ここ最近、怪異と思える現象を〝何となく〟感じていたし、それが昨日から今日にかけて現実だと認識してしまった。
そして一番認識した原因。それは目の前の自称・陰陽師だという男であり、私を何度も助けてくれた変態な男。
どうしようもないほどに自信家で、どうしようもないほどに変態で、どうしようもないほどに――私の心がゆり動かされた。
それでもまだ不安げな顔を見たからか、変態さんは何とも言いようのない表情で、苦くはにかみながら「本当だぜ?」と言いながら続ける。
「なによその顔は。本当にずるい人ね」
「そうか? まぁよく言われるけど」
「知っているかしら? そう言うのをあざといと言うのよ?」
「あざといついでにもう一つ。なにがあろうと明日夏……俺がおまえを絶対に守ってやる。だから受け取れ」
変態らしからぬ凛々しくも真摯な表情。
そんな顔にドキリとし頬が熱くなるのを感じた。
けれどこちらの気持ちなどお構いなしに、彼――戦極は片膝立ちのまま、私の口元へとコーヒーのカップを差し出す。
思わず「う、うん」と答えるのが精一杯だったが、きっと顔が真っ赤なのだろうという自信がある。
今度は落とさないように、しっかりと両手でつかみ思わずカップで顔を隠してしまう。
ちらりとカップの上部から彼を見下ろすと、「黒……か。微妙だな」と意味の分からない事を言いつつ立ち上がる。
そして善次へと向き直ると、何かを渡しながら遠くを指差して口を開く。
「おいでなすったな」
「承知いたしました。あとはお任せを」
彼は「頼む」と言うと、また私へと向き直ると最初は軽やかに話し、後半は重々しく話す。
「何かあったらすぐに異怪骨董やさんへ来いよ。俺が居なくても誰かいるから安心しな」
「異怪骨董やさんね? うん、わかった」
「それと祕巫女たるもの、幽霊になれるのも大事だ。そこでレッスンワン! 幽霊を食い止めろ……だッ!!」
ビシリと彼は鴨川の向こう岸を指差す。
見る。いえ、視るとそこには人とは思えない色白の美しい肌の少女と、あの子狐ちゃんがいた。
「戦極様! やっと見つけたんだよ!!」
「もぅ~ワレは眠いんだからして、あるじぃ~の捜索は一人でしてほしいんだワン」
「無駄に高性能なお鼻しているんだから、こういう時だけは頼りにしているんだよ」
「色々酷いワンけど、あるじぃ~が見つかったからヨシとするんだワン」
そんなやり取りがここまで聞こえてくる。
だからまた自殺した霊が私へと来るのかとゾっとして、彼の方を向くが。
「ち、ちょっと戦極くん。また水辺に幽……って居ない?! どこへ消えたの?」
今まで隣に居たはずだけど、煙のようにかき消えた彼。
コーヒーカップを持つ手に力が軽く入ると、違和感を感じてその原因を見る。
そこには紙が一枚はさまっており、〝ピンクに黒はちょっと、な?〟と書いてあった。
「ピンクに黒……? って!? それは私のスカートと下着の色じゃない?! ッ……あの変態めええええ!!」
消え去ったあいつ、ド変態へと怒りの咆哮をあげながら、高くなった空を睨む。
そんな空中を、黒の友禅を着た幽霊が子狐と共にやってくるのが見えた。
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