上 下
48 / 70
異怪骨董やさんと、神喰の月蝕

047:ニコ・イチ

しおりを挟む
 鳥居の向こう側にある空間。こちらからは見えないが、黒い渦の向こう側にあるどこかの異界。
 そこからおもむろに引き出したるは、漆黒の霊符五枚。

 材質は和紙とは違い、動物か何かの革だろうか。
 見たことのないソレに描かれるは、黄金の文字列。
 しかもただの金色じゃなく、金箔を霊的に貼ったものであり、並大抵の物とは格が違う。

 それが誰の目にも分かるほど、漆黒の霊符は紫電をほと走らせながら右手に収まる。
 霊符自体が意思を持ち、今にもオレに噛みつこうと霊符の端から牙を剥き出した口が出現。

『チィ、お前らもオレに使われた方が楽しく殺れるだろうが! いい加減大人しくしやがれ!!』
『『『『『黙れ妖妖人人にこいち!! 我らの主は戦極のみよ!!』』』』』
『オレをその名で呼ぶんぢゃねえええええ!!』

 コンマ二秒で両手の指の間に五枚の霊符を挟み、十字に腕を交わえ馬鹿共を大人しくさせる。

『誰が主人か思い知れ。霊冥十五潰れいめいじゅうごつい! 屈従縛鎖くつじゅうばくさ!!』

 漆黒の霊符よりなお黒い、十五本の細い鎖が出現し全ての霊符の屈従に成功。
 必死にもがくが、徐々に力を失い大人しくなる漆黒の霊符。

『『『『『ぐぎいい!? 戦極すまぬ……』』』』』
『手間ぁかけやがって。んぢゃあよ、お次は――コイツだ』

 続けて札を放り投げ『ウ゛ン!』と術を発動。
 小刻みに震えながらも、漆黒霊符はオレの両足・両腕・頭部へと張り付く。
 次の瞬間、漆黒霊符と体中の霊術回路が接続し、オレ本体の妖気・・・・・・・が流入。
 
 漆黒霊符の金箔文字が眩しいほどに輝き、莫大な妖気が爆散したと同時に、わん太郎とグルキャンが遠くへと吹き飛ぶ。

「わ、わん太郎! 飴ん棒ちゃん!?」

 それを横目でニヤケつつ見ながら、腰のクソ妖刀女に命令してやる。

『おいおい、クソ子狐の心配している場合か? 次はテメェだ美琴ぉ! 今すぐ抜刀しろや!!』
「誰がオマエみたいなヤツの言う事聞くんだよッ!!」
『口の聞き方なってねぇぞクソアマアアア!!』

 腰から悲恋美琴を鞘ごと引き抜き、左手で縦に持ったまま右人差し指と中指を立てて持ち手部分のつかへと押し当てる。

『テメェはスペシャルだ。だから妖気を込めたコイツをくれてやる。霊冥九十九潰! 屈従縛鎖』

 空間にしっとりと濡れた、黒いくぼみが九十九箇所出現。
 そこから一気に漆黒の鎖が湧き出ると、一気に悲恋美琴へと絡みつきそのまま鞘から強制的に抜刀しようとする。

 美琴は苦しげに「あううう゛」と必死に堪える。
 が、その抵抗も無駄に終わり、徐々に悲恋が鞘から抜け出してきた。
 錆びた金属が〝ぎがぅぃ〟と耳障りな音を立てるよりも酷い、魂から拒絶する音とともに、鞘から鮮血が流れ落ちる。

 その光景に口角を上げながら、『オレに従う従順さがいいねぇ~』と頬を緩めわらう。
 やがて完全抜刀された悲恋は血に染まり、涙を流すみてぇにボタボタと汚物を流す。

『無駄な抵抗だったなぁ美琴ぉ?』
「くぅ……戦極様…………」
『さて、と。コイツで準備が完了ってやつだな。見ろよ美琴ぉ。猿面の三下野郎も、最高に楽しませる舞台を用意してくれるようだぜぇ?』

 二人の視線の先にある光景。
 それは文曲が神喰の月蝕を封印している、結界そのものを破壊する寸前だった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

神様の住まう街

あさの紅茶
キャラ文芸
花屋で働く望月葵《もちづきあおい》。 彼氏との久しぶりのデートでケンカをして、山奥に置き去りにされてしまった。 真っ暗で行き場をなくした葵の前に、神社が現れ…… 葵と神様の、ちょっと不思議で優しい出会いのお話です。ゆっくりと時間をかけて、いろんな神様に出会っていきます。そしてついに、葵の他にも神様が見える人と出会い―― ※日本神話の神様と似たようなお名前が出てきますが、まったく関係ありません。お名前お借りしたりもじったりしております。神様ありがとうございます。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

あやかし雑草カフェ社員寮 ~社長、離婚してくださいっ!~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 令和のはじめ。  めでたいはずの10連休を目前に仕事をクビになった、のどか。  同期と呑んだくれていたのだが、目を覚ますと、そこは見知らぬ会社のロビーで。  酔った弾みで、イケメンだが、ちょっと苦手な取引先の社長、成瀬貴弘とうっかり婚姻届を出してしまっていた。  休み明けまでは正式に受理されないと聞いたのどかは、10連休中になんとか婚姻届を撤回してもらおうと頑張る。  職だけでなく、住む場所も失っていたのどかに、貴弘は住まいを提供してくれるが、そこは草ぼうぼうの庭がある一軒家で。  おまけにイケメンのあやかしまで住んでいた。  庭にあふれる雑草を使い、雑草カフェをやろうと思うのどかだったが――。

【取り下げ予定】愛されない妃ですので。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。 国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。 「僕はきみを愛していない」 はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。 『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。 (ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?) そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。 しかも、別の人間になっている? なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。 *年齢制限を18→15に変更しました。

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

ま性戦隊シマパンダー

九情承太郎
キャラ文芸
 魔性のオーパーツ「中二病プリンター」により、ノベルワナビー(小説家志望)の作品から次々に現れるアホ…個性的な敵キャラたちが、現実世界(特に関東地方)に被害を与えていた。  警察や軍隊で相手にしきれないアホ…個性的な敵キャラに対処するために、多くの民間戦隊が立ち上がった!  そんな戦隊の一つ、極秘戦隊スクリーマーズの一員ブルースクリーマー・入谷恐子は、迂闊な行動が重なり、シマパンの力で戦う戦士「シマパンダー」と勘違いされて悪目立ちしてしまう(笑)  誤解が解ける日は、果たして来るのであろうか?  たぶん、ない! ま性(まぬけな性分)の戦士シマパンダーによるスーパー戦隊コメディの決定版。笑い死にを恐れぬならば、読むがいい!! 他の小説サイトでも公開しています。 表紙は、画像生成AIで出力したイラストです。

伊賀忍者に転生して、親孝行する。

風猫(ふーにゃん)
キャラ文芸
 俺、朝霧疾風(ハヤテ)は、事故で亡くなった両親の通夜の晩、旧家の実家にある古い祠の前で、曽祖父の声を聞いた。親孝行をしたかったという俺の願いを叶えるために、戦国時代へ転移させてくれるという。そこには、亡くなった両親が待っていると。果たして、親孝行をしたいという願いは叶うのだろうか。  戦国時代の風習と文化を紐解きながら、歴史上の人物との邂逅もあります。

捨てられ更衣は、皇国の守護神様の花嫁。 〜毎日モフモフ生活は幸せです!〜

伊桜らな
キャラ文芸
皇国の皇帝に嫁いだ身分の低い妃・更衣の咲良(さよ)は、生まれつき耳の聞こえない姫だったがそれを隠して後宮入りしたため大人しくつまらない妃と言われていた。帝のお渡りもなく、このまま寂しく暮らしていくのだと思っていた咲良だったが皇国四神の一人・守護神である西の領主の元へ下賜されることになる。  下賜される当日、迎えにきたのは領主代理人だったがなぜかもふもふの白い虎だった。

処理中です...