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065:地下よりの脱出
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「ジハード! 何をしているのです、アネモネを殺しなさい!!」
声を荒らげてジハードへと怒りの矛先を向ける。
だけどジハードは左手で頭を抑えながら、「アネモネ……様……をコロス?」と、うわ言を呟く。
が、突然ジハードは唸り声を上げて苦しみだし、獣になった瞳で襲いかかってきた。
やっぱり何かの呪いがかけられていて、自分の判断すらつかないみたい。
許せない、ゆるせないよマリエッタ様!
「ジハードになんて事をしたのですか!!」
「貴女にそれを言う資格があって? 貴女はこれまでその男に何をしたのかを思い出しなさい」
「痛いほど思い出してるよ。だからジハード……ごめんね。神聖魔法開放! 七つの鎖に縛られよ、ホーリーチェーン!!」
瞬間、ジハードの両手両足、前後の胴体と首に白い鎖が絡みつく。
あれほど獣じみた動きだったけど、ホーリーチェーンの威力にはどうすることも出来ず、ジハードは苦しげに叫ぶ。
だからさらなる神聖魔法を叩き込む。
「黎明の聖歌隊召喚! 歌え! 清浄なる歌声で! 響け! 天の旋律! 調律魔法・第十一章 エメラルドの蒼穹!!」
瞬間、セイントローブを着た、純白の骸骨たちが地面や壁からはいでて来た。
だけど全員が聖なるオーラに包まれており、それは聖人の遺体だとすぐに分かるほど、清らかで心落ち着く歌声を響かせる。
その声がエメラルド色の波を思わせる様相で、一気に広場へと拡散。
波は広がり、ジハードや聖騎士団へとそれが当たると、彼らの動きが止まる。
直後、彼らは不動のまま目から涙を流して地面へと倒れ込んだ。
ふぅ~。どうやら無事に解呪できたみたい。
それをみたマリエッタ様は、ワナワナと震え上へと飛び上がると、背中に羽を作り出す。
「アネモネ貴女という娘は……」
「それはこちらのセリフです。聖騎士団に一体なんの呪いをかけたのですか!? ご自分が聖女だと言うのに恥を知るべきです!!」
「フン、貴女が聖女のなんたるかを語るなどと烏滸がましい。いいでしょう……大聖女を超えた神の力を見せてあげましょう」
マリエッタ様はそのまま外へ出ると、さらに上空へと昇る。
そして極限に高まった神力を使い、五つの多層魔法陣を作り出す。
「第百七十八式魔法陣展開……開けアークラッドの扉! 大天使召喚魔法・聖なる翼の群れ!!」
突如現れた垂直にそびえ立った箱。それがパズルを外すように、あちこちが動き出し、最後にそれが四つに別れたと同時に、その奥から白い羽根が無数に現れる。
それらが複雑に絡み合い、あちこちで丸い塊になると、大きな翼が中心を包み込む姿勢になった。
さらに変態は続き、終いには醜悪な顔をした、醜い赤子の天使になる。
それが複数現れ、気がつけば天が気味の悪い天使で埋め尽くされていた。
「チッ、やはりまだ早かったのですわね……が! 大聖女程度、これで十分すぎますわ。ほ~ら?」
マリエッタ様は片手を振ると、天使の一体が大爆発をする。
一体であの威力だ。これが複数で町を襲ったらどうなるかと思う。
「どうですアネモネ? 圧倒的じゃぁ~ありませんか? これぞ神たる力の一端ですわ!」
高らかに嗤うマリエッタ様を見て、いつの間にか肩に乗っていたジローへと話す。
『ねぇジロー、もうイケルよね?』
『カカカ! 貴様が元に戻った以上、それはそうだろう。吾は王なるぞ?』
『なら、さ。やっちゃえジロー♪』
『承知! 久々に食い散らかそうぞ!!』
ジローは肩から飛び降りると、勢いよくジャンプする。
あの短い手足でよくもまぁと思えるほど飛びあがり、『ワオオオン!!』と吠える。うん、犬だ。しかもすっごく大きい犬になったね。
その姿を見て、領兵たちは無論、ランスロットたちまで驚く。
ふと見ると、タン爺も無事だったみたいでよかったけれど、彼も驚いてあんぐりと大きく口をあけてる。
そんな驚く彼らを見て、クスリとしながらジローへと飛び乗る。
「みんなはここに居て、さっさと決着をつけてくるからさ!」
「なら僕もいかないとね。さっきキミが放った魔法の歌の効果で、解呪とまで行かなくても十分に復活できたから」
いつの間にかジローの足元に居たランスロットを皮切りに、マリーナとタン爺も話す。
「アネモネ、私たちも上へつれていって! お父様のご無事な姿を見たいの!」
「私も同じですアネモネ様。どうか旦那様の元へ!」
「ハハ、じゃあみんなで行っちゃおうか♪」
「うん!」「はい!」「お願い致します!」
「カカカ! 話は決まったようだな、急げ醜悪な天使が動き出したぞ」
ジローはしゃがみこむと、全員を乗せて「吾の毛にしっかりと掴まっておれよ!」と言いながら、壁を蹴って地上へと躍り出た。
声を荒らげてジハードへと怒りの矛先を向ける。
だけどジハードは左手で頭を抑えながら、「アネモネ……様……をコロス?」と、うわ言を呟く。
が、突然ジハードは唸り声を上げて苦しみだし、獣になった瞳で襲いかかってきた。
やっぱり何かの呪いがかけられていて、自分の判断すらつかないみたい。
許せない、ゆるせないよマリエッタ様!
「ジハードになんて事をしたのですか!!」
「貴女にそれを言う資格があって? 貴女はこれまでその男に何をしたのかを思い出しなさい」
「痛いほど思い出してるよ。だからジハード……ごめんね。神聖魔法開放! 七つの鎖に縛られよ、ホーリーチェーン!!」
瞬間、ジハードの両手両足、前後の胴体と首に白い鎖が絡みつく。
あれほど獣じみた動きだったけど、ホーリーチェーンの威力にはどうすることも出来ず、ジハードは苦しげに叫ぶ。
だからさらなる神聖魔法を叩き込む。
「黎明の聖歌隊召喚! 歌え! 清浄なる歌声で! 響け! 天の旋律! 調律魔法・第十一章 エメラルドの蒼穹!!」
瞬間、セイントローブを着た、純白の骸骨たちが地面や壁からはいでて来た。
だけど全員が聖なるオーラに包まれており、それは聖人の遺体だとすぐに分かるほど、清らかで心落ち着く歌声を響かせる。
その声がエメラルド色の波を思わせる様相で、一気に広場へと拡散。
波は広がり、ジハードや聖騎士団へとそれが当たると、彼らの動きが止まる。
直後、彼らは不動のまま目から涙を流して地面へと倒れ込んだ。
ふぅ~。どうやら無事に解呪できたみたい。
それをみたマリエッタ様は、ワナワナと震え上へと飛び上がると、背中に羽を作り出す。
「アネモネ貴女という娘は……」
「それはこちらのセリフです。聖騎士団に一体なんの呪いをかけたのですか!? ご自分が聖女だと言うのに恥を知るべきです!!」
「フン、貴女が聖女のなんたるかを語るなどと烏滸がましい。いいでしょう……大聖女を超えた神の力を見せてあげましょう」
マリエッタ様はそのまま外へ出ると、さらに上空へと昇る。
そして極限に高まった神力を使い、五つの多層魔法陣を作り出す。
「第百七十八式魔法陣展開……開けアークラッドの扉! 大天使召喚魔法・聖なる翼の群れ!!」
突如現れた垂直にそびえ立った箱。それがパズルを外すように、あちこちが動き出し、最後にそれが四つに別れたと同時に、その奥から白い羽根が無数に現れる。
それらが複雑に絡み合い、あちこちで丸い塊になると、大きな翼が中心を包み込む姿勢になった。
さらに変態は続き、終いには醜悪な顔をした、醜い赤子の天使になる。
それが複数現れ、気がつけば天が気味の悪い天使で埋め尽くされていた。
「チッ、やはりまだ早かったのですわね……が! 大聖女程度、これで十分すぎますわ。ほ~ら?」
マリエッタ様は片手を振ると、天使の一体が大爆発をする。
一体であの威力だ。これが複数で町を襲ったらどうなるかと思う。
「どうですアネモネ? 圧倒的じゃぁ~ありませんか? これぞ神たる力の一端ですわ!」
高らかに嗤うマリエッタ様を見て、いつの間にか肩に乗っていたジローへと話す。
『ねぇジロー、もうイケルよね?』
『カカカ! 貴様が元に戻った以上、それはそうだろう。吾は王なるぞ?』
『なら、さ。やっちゃえジロー♪』
『承知! 久々に食い散らかそうぞ!!』
ジローは肩から飛び降りると、勢いよくジャンプする。
あの短い手足でよくもまぁと思えるほど飛びあがり、『ワオオオン!!』と吠える。うん、犬だ。しかもすっごく大きい犬になったね。
その姿を見て、領兵たちは無論、ランスロットたちまで驚く。
ふと見ると、タン爺も無事だったみたいでよかったけれど、彼も驚いてあんぐりと大きく口をあけてる。
そんな驚く彼らを見て、クスリとしながらジローへと飛び乗る。
「みんなはここに居て、さっさと決着をつけてくるからさ!」
「なら僕もいかないとね。さっきキミが放った魔法の歌の効果で、解呪とまで行かなくても十分に復活できたから」
いつの間にかジローの足元に居たランスロットを皮切りに、マリーナとタン爺も話す。
「アネモネ、私たちも上へつれていって! お父様のご無事な姿を見たいの!」
「私も同じですアネモネ様。どうか旦那様の元へ!」
「ハハ、じゃあみんなで行っちゃおうか♪」
「うん!」「はい!」「お願い致します!」
「カカカ! 話は決まったようだな、急げ醜悪な天使が動き出したぞ」
ジローはしゃがみこむと、全員を乗せて「吾の毛にしっかりと掴まっておれよ!」と言いながら、壁を蹴って地上へと躍り出た。
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