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061:最後の力
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唖然とする私たちの上に、ヒラヒラと何かの紙が降ってくる。
眼の前に落ちてきたそれを掴むと、そこには驚愕の内容が書かれていた。
「これは……ッ!? マリエッタ様が取引していた詳細な内容! しかも保管場所まで書かれているの!?」
「そうですじゃ。この大悪女がエリクラムを精製するために、各方面へと手を回して必要な機材・人材・設備・そして――」
村長は「お連れしろ」と言いながら、一人の男を縁に立たせる。
その姿を見たマリーナは「お父様!? それに伯父上!!」と叫び、それがローゼンスタイン伯爵と、不当に伯爵領を手にしていたマリーナの伯父だとすぐに分かった。
伯爵は元気そうだったけど、叔父さんは顔をボコボコにされて、肉塊みたいになって泣き叫んでる。ちょっとキモイ。
「――ローゼンスタイン伯爵様をさらった場所・方法・等々が全て書かれておりますじゃ」
「マリーナ!? 本当に助けに来てくれてたとは……すまぬ。オールレンジ衆よ、この恩は忘れぬぞ……だが忘れたくても忘れられんなぁマリエッタ……キサマの悪事だけはなッ!! ローゼンスタイン領の誇りを取り戻せ、アイン騎士団長!!」
「ハッ! 伯爵閣下の汚名を雪ぐ時ぞ! 大悪女マリエッタを召し捕れ!!」
ローゼンスタイン伯爵がそう叫ぶと、伯爵の騎士団が大穴の周囲を囲む。
さらに遠くから硬質なブーツの音がし、地下通路を大勢がやってくるのがわかった。
流石のマリエッタ様も観念したのか、一点を見つめて微動だにしない。
そして足元に転がるジハードへと耳打ちすると、すっと立ち上がりとてもいい笑顔で話す。
「見事ですわアネモネ。まさかここまで暴かれるだなんて……まぁそれもそのはず、まさか伝説のオールレンジ衆を復活させて、この時を計っていたとは驚きですわ」
伝説? オールレンジ衆? な、なにそれ?
そんなの知らないよ! だってただの食いしん坊のせいで、二回も死に損なった残念な人たちだったのに、なんでこんなに大活躍しちゃってるの!? しかも牛の被り物してる変な人たちだし?! ウソでしょ!!
でも悔しいからここはこう言ってやるもん。
「ふ、ふふん。マリエッタ様のやる事なんて、全てお見通しなのです! ですから大人しく大神殿で裁かれてください。それが……生きている私の最後の願いです!!」
「あら、その願いは聞き届けられなくてよ? そういうのって、無駄な抵抗とでもいうのかしらね? だってねぇ……ジハード!!」
呆けていたジハードへと、マリエッタ様は強く命じた。
それが何かが分からなかったけれど、彼の中での行動原理は分かっている。
聖騎士団。特にジハードは聖女の言うことを最優先に聞くという、ある意味呪いが体に刻まれていると言ってもいい。
それがジハードの場合は特に強く、最優先は私。そして二番目に強く命令を実行するのはマリエッタ様だ。
だからこそ、なんの迷いもなく何かを命じられて突っ込んできた。
多分私を殺しに来るのだと思った。そう、思い込んでしまった。
この場で一番邪魔なのは私だし、私さえ居なければマリエッタ様の饒舌な口は、状況をひっくり返すのだと、勘違いをしてしまう。
だから思考が停止してしまい、一瞬呆けてしまった次の瞬間、ジハードは足をマリーナへと向ける。
それで全て理解した。先程のマリエッタ様の見つめていた視線の先は、すでに渡したマリーナが持つ〝エリクラムの箱〟だったという事を。
「ッ!? いけない、マリーナ箱を守って!! ジハード止まりなさい!! ケホッ! って、なぜ止まらないの!?」
私のいうことを最優先に聞くはずなのに、ジハードは目を血走らせて突っ込んでくる。
それを察したランスロットは、力を振り絞り剣を投げた。
まっすぐ飛んでいくランストットの剣は、ジハードの体めがけて飛ぶ。
と、同時に村長たちが上から降って来ながら短剣を投擲したのが見えたけれど、どう見ても間に合わない。
なぜなら、ジハードは落とした剣をもっており、確実にそれを弾き飛ばす事が出来るのを私は知っているから。
「こんなモノで俺が止マルカヨオオオオオオ!!」
ジハードは電光石火の動きで全ての武器を払い除けた。
その一本が払い落ちた時に、床に弾かれてしまうのが私には分かる。
それがありえない角度で、マリーナの元へと飛ぶんだとも経験から分かった。
あのままなら箱を壊し、さらにマリーナに貫通しちゃう。
そう予測したからこそ、硬直して叫ぶ動けないマリーナの元へと無我夢中で飛び込む。
「キャアアアア!! って、アネモネ!? うそ……ウソでしょ……なんでまたこんな事をしたの?!」
「かはッ…………よかった。無事……で……」
今度はお腹が鈍く熱い痛みがかけあがり、見れば短剣が刺さっていた。
でもそんな事は些細なこと。どうせもう時間がなかったのだから、それが少し短くなっただけなのだから。
「いい、よく聞いて……その箱の中みだけは壊しちゃだめ……だから守って……」
「分かった! わかったからもう大人しくしていて! 誰か! アネモネを助けて!!」
意識が霞む。
遠くからランスロットの声がするけれど、耳までおかしくなったのかな?
そう思っていると、目の前でジローが私をまっすぐに見ていた。
眼の前に落ちてきたそれを掴むと、そこには驚愕の内容が書かれていた。
「これは……ッ!? マリエッタ様が取引していた詳細な内容! しかも保管場所まで書かれているの!?」
「そうですじゃ。この大悪女がエリクラムを精製するために、各方面へと手を回して必要な機材・人材・設備・そして――」
村長は「お連れしろ」と言いながら、一人の男を縁に立たせる。
その姿を見たマリーナは「お父様!? それに伯父上!!」と叫び、それがローゼンスタイン伯爵と、不当に伯爵領を手にしていたマリーナの伯父だとすぐに分かった。
伯爵は元気そうだったけど、叔父さんは顔をボコボコにされて、肉塊みたいになって泣き叫んでる。ちょっとキモイ。
「――ローゼンスタイン伯爵様をさらった場所・方法・等々が全て書かれておりますじゃ」
「マリーナ!? 本当に助けに来てくれてたとは……すまぬ。オールレンジ衆よ、この恩は忘れぬぞ……だが忘れたくても忘れられんなぁマリエッタ……キサマの悪事だけはなッ!! ローゼンスタイン領の誇りを取り戻せ、アイン騎士団長!!」
「ハッ! 伯爵閣下の汚名を雪ぐ時ぞ! 大悪女マリエッタを召し捕れ!!」
ローゼンスタイン伯爵がそう叫ぶと、伯爵の騎士団が大穴の周囲を囲む。
さらに遠くから硬質なブーツの音がし、地下通路を大勢がやってくるのがわかった。
流石のマリエッタ様も観念したのか、一点を見つめて微動だにしない。
そして足元に転がるジハードへと耳打ちすると、すっと立ち上がりとてもいい笑顔で話す。
「見事ですわアネモネ。まさかここまで暴かれるだなんて……まぁそれもそのはず、まさか伝説のオールレンジ衆を復活させて、この時を計っていたとは驚きですわ」
伝説? オールレンジ衆? な、なにそれ?
そんなの知らないよ! だってただの食いしん坊のせいで、二回も死に損なった残念な人たちだったのに、なんでこんなに大活躍しちゃってるの!? しかも牛の被り物してる変な人たちだし?! ウソでしょ!!
でも悔しいからここはこう言ってやるもん。
「ふ、ふふん。マリエッタ様のやる事なんて、全てお見通しなのです! ですから大人しく大神殿で裁かれてください。それが……生きている私の最後の願いです!!」
「あら、その願いは聞き届けられなくてよ? そういうのって、無駄な抵抗とでもいうのかしらね? だってねぇ……ジハード!!」
呆けていたジハードへと、マリエッタ様は強く命じた。
それが何かが分からなかったけれど、彼の中での行動原理は分かっている。
聖騎士団。特にジハードは聖女の言うことを最優先に聞くという、ある意味呪いが体に刻まれていると言ってもいい。
それがジハードの場合は特に強く、最優先は私。そして二番目に強く命令を実行するのはマリエッタ様だ。
だからこそ、なんの迷いもなく何かを命じられて突っ込んできた。
多分私を殺しに来るのだと思った。そう、思い込んでしまった。
この場で一番邪魔なのは私だし、私さえ居なければマリエッタ様の饒舌な口は、状況をひっくり返すのだと、勘違いをしてしまう。
だから思考が停止してしまい、一瞬呆けてしまった次の瞬間、ジハードは足をマリーナへと向ける。
それで全て理解した。先程のマリエッタ様の見つめていた視線の先は、すでに渡したマリーナが持つ〝エリクラムの箱〟だったという事を。
「ッ!? いけない、マリーナ箱を守って!! ジハード止まりなさい!! ケホッ! って、なぜ止まらないの!?」
私のいうことを最優先に聞くはずなのに、ジハードは目を血走らせて突っ込んでくる。
それを察したランスロットは、力を振り絞り剣を投げた。
まっすぐ飛んでいくランストットの剣は、ジハードの体めがけて飛ぶ。
と、同時に村長たちが上から降って来ながら短剣を投擲したのが見えたけれど、どう見ても間に合わない。
なぜなら、ジハードは落とした剣をもっており、確実にそれを弾き飛ばす事が出来るのを私は知っているから。
「こんなモノで俺が止マルカヨオオオオオオ!!」
ジハードは電光石火の動きで全ての武器を払い除けた。
その一本が払い落ちた時に、床に弾かれてしまうのが私には分かる。
それがありえない角度で、マリーナの元へと飛ぶんだとも経験から分かった。
あのままなら箱を壊し、さらにマリーナに貫通しちゃう。
そう予測したからこそ、硬直して叫ぶ動けないマリーナの元へと無我夢中で飛び込む。
「キャアアアア!! って、アネモネ!? うそ……ウソでしょ……なんでまたこんな事をしたの?!」
「かはッ…………よかった。無事……で……」
今度はお腹が鈍く熱い痛みがかけあがり、見れば短剣が刺さっていた。
でもそんな事は些細なこと。どうせもう時間がなかったのだから、それが少し短くなっただけなのだから。
「いい、よく聞いて……その箱の中みだけは壊しちゃだめ……だから守って……」
「分かった! わかったからもう大人しくしていて! 誰か! アネモネを助けて!!」
意識が霞む。
遠くからランスロットの声がするけれど、耳までおかしくなったのかな?
そう思っていると、目の前でジローが私をまっすぐに見ていた。
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