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054:極めた技と極めた卑怯

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「ほぅ……この俺とここまで戦えるなんてやるじゃないか」
「キミもね」
「見たことのない剣術アーツ……いや、確かそれは隣国ハイン――ッ!?」
「戦いの最中におしゃべりは関心しないね」

 優男はジハードの会話を遮るようにケリを放つと、ジハードは一気に距離をとる。
 だけど優男は逃しはしないとばかりに、ジハードへと剣で斬りつけながら間合いのさらに奥。
 つまりジハードを殴れる距離まで詰め寄りながら本当に殴ってしまう。あんた、命知らずもいいところだよね!?

「チィ、やる! ならコイツはどうだ?」

 ジハードは五メートルほど距離を取ると、腰を落として重心を斜め後ろへとかけて剣を大きく後ろへと引く。
 大技が来ると予測した優男もまた、腰を落として剣を全面に構えて防御態勢へと移った。

 その正体を知っているからこそ、「いきなり第一章ブモオオオオ!?」と驚く。
 神聖剣技は全部で七章あり、通常の聖騎士は七~三章どまりが普通。
 でもジハードは類稀な才能の持ち主で、歴代の聖騎士達の中でも、神聖剣技を極めたとも言える第一章まで使えた。

「天道覆いて我に聖なる加護を……神聖剣技・第一章! 神山破斬しんざんはざんッ!!」

 ――神山破斬。
 白い光がジハードの剣に集まり、神聖力で剣の硬度・切れ味・素早さ・剣速まで一気に使用者と剣にバフをかけてしまう大技であり、その威力は神の山ですら斬れると言われるほどのもの。

 それが今、極限まで高まった光る刃を大上段たる天井へまっすぐ伸ばし、それを思い切り背後へとしならせてた後、体を弓なりにした状態から一気に全面の優男へと斬り放つ!

 そのまるで白く発光する壁みたいな斬撃は、容赦なく優男の元へと襲いかかる。
 でも微動だにしない優男。あんた、その威力舐めているでしょ!? 

お願い逃げてえええブモオオオオオ!!」

 そうは言っても頭では理解している。
 逃げたくらいじゃ、あの威力は避けきれない。それに優男は絶対に逃げない。だって――。

「――アネモネ・マリーナ嬢・セバス殿。キミ達が僕の後ろにいる限り、僕は鉄壁となろう。悪魔の腕よ力を貸せ! ただメシ喰らいの力見せてみろッ! 武帝アーツ七式・極硬千壁きょっこうせんへきッ!!」

 優男は右手に持った剣を真横にし、悪魔化した左腕で刃を全面へと押す。
 瞬間、彼の前方に魔力で出来た、幅五メートルほどの一本の太い剣が現れ、足元の石畳へと突き刺さる。
 と同時にジハードが放った神山破斬がぶつかった。

 いくら広い空間とはいえ、その衝撃で部屋が一瞬膨張した感覚を感じた直後、壁が崩れだす。
 それを見たオハラは「冗談ではないッ!!」と言いながら、マリーナへと掴みかかる。

「オハラ! お嬢様を離せ!!」
「老いぼれは黙ってあの世へいきなさい! ほら、丁度いい迎えが来た」

 そう言いながらオハラは、タン爺を崩れる壁への中へと蹴り飛ばす。

「セバス!? 離しなさいオハラ! セバス! セバスタン! 返事をしてちょうだい!!」

 タン爺を救出に行こうと、必死にオハラの手をほどこうとするマリーナ。
 しかし以外に力が強いのか、オハラはマリーナの腕を引きながら、崩れていない安全なルートから聖騎士団の方へと向かう。

 オハラは「暴れるなクソ娘がッ!」と言いながら、左手でマリーナの頬をおもいきり殴りつける。
 マリーナは悲鳴を上げて倒れるのを見て、私の体は自然に動く。
 何も迷わず、何も臆さず、ただまっすぐにマリーナの元へと向かい、オハラへと頭をぶち当てた。

あっちへ飛んでっちゃえブモオオオオオオン!!」
「ぐッ!? クソ牛がああああああああ!!」

 自分でも驚くほどオハラは空中を飛び、石壁へと激突。
 だけど裏切り者・オハラの運はまだ尽きず、「まだまだこんなもので自分は殺られんわ!!」と毒ナイフで襲いかかってきた。
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