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048:狙われた大聖女

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048:狙われた大聖女

 さらに右足で背中を踏みつけ、ジルの体を地面へと固定した。

「指だけ切り落とすなんて、キミは人としてどうかしている」
「ペッ、うるせえよ。こちとら仕事なんだ、言われた事だけやりゃいいだけだ」
「ほぅ。じゃあ誰に言われてここへ来たのかを説明してもらおうか」
「ぐぅッ!?」

(チ、俺としたことが余計なことを……どうする? どうしたら……)

 ジルは焦りながら状況を打開しようと好材料を探す。
 その時だった、彼の目線は白い牛の背後。つまり沼の中へと向かう。

(いいぞ、これならいける。後はタイミングを合わせて――)

「――今だ! そいつを人質にしろ!!」
「なに!? しまった、アネモネ!!」

 沼から勢いよく飛び出したのは、先ほど沼に突き落とされた護衛の一人。
 その男がナイフを片手にアネモネへと襲いかかる。

 焦ったランスロットだったが、距離が離れているため、確実に間に合わない。

「アネモネエエエエエエエ!!」
きゃあああああモモモモオオオオ!?」

 やだ、やめてこっちへ来ないで!!
 焦って逃げようとしたけど、それが悪かった。
 思わず足元の草に滑ってしまい、前のめりに転ぶ。

「ステーキはやめだ! まずはここから脱出するから来い!!」
ちょ、乗らないでモモ、モムウウウ!! 痛いってばモオオオ!!』

 ツノを思い切り持たれて、頭をグイっと後ろへと引っ張られてナイフを首に当てられてしまう。
 その時、頭の上でジローのオソロシイ声がした。

『貴様……この雌牛に乗っていいのは、吾だけぞ!!』

 ジローはそいう言うと、背中に乗っている男の鼻を噛みちぎる。
 本来の姿なら、その程度ですむはずもないけれど、ちんちくりんな体のくせに頑張ってくれて大感謝だよ。

 暴漢は「ぎゃあああ!?」と鼻を押さえナイフを落とした所で、チャンスと思い腰を振って暴漢を振り落とす。
 すると抵抗もなく、また沼へ落ちた暴漢が這い上がって来たからケリを顔面へと食らわせたら沈んでいった。

『ふぅ、助かったよ。ありがとうジロー』
『カカカ! なに、この程度ぞうさもない事よ。それよりナイスキックだったな』
『でっしょ? って、優男は?』
『心配はいらぬだろう。ほれ、逃走に失敗した哀れな奴がフルボッコだ』

 よほど私が襲われたのがショックだったのか、その怒りを無言で目の前の男へと拳で語る優男。
 鈍い音が響くにつれ、「やめ、ちょ、もう、ゲボッ、勘弁してくださいいいい!!」と、涙を流して地面へと転がっていた。うわぁ……容赦ないなぁ。

「な、なんでも話すからもう許して……」
「その前に謝れ」
「す、すみませんでしたダンナ! マリーナ様!」

 その様子を見たマリーナは、呆れながら吐き捨てる。

「ジルあなた、謝る相手が違うわよ」

 ジルは「へ?」とマヌケな声を出した瞬間、優男の拳が飛んできて顔面へと突き刺さった。
 無表情で拳を叩き込む優男の拳は止むことがなく、ジルが気絶するまで続いた……キレると怖い。

「……っと、やりすぎたかな」

 優男がそう言いながら頭をかくと、マリーナの隣りにいたタン爺が話す。

「いえ、やり過ぎた事もないですよ。ジルは当家の裏方のトップですから、このくらいしないと素直にならなかったでしょうし」
「ならいいのですが……」

 白目をむいてヒクつくジルを見て、優男も反省しているみたい。
 この隙にとジルを縄でしばり、沼の水を頭からぶちかけることで、ジルは苦しげに目覚めた。
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