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027:旅は道連れ世は情けを感じる大聖女
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まったく、恩を仇で返すとはこの事だよね。
そう憤慨していると、ジローが私の頭の上へとよじ登る。
そしてなにやら立ち上がり、右手を指して話す。
「おい貴様。これから下僕として飼ってやるから感謝するのだ」
おやめなさい駄犬。
誰が聞いてもワンワンとしか聞こえないからね?
って、ホラみなさい……そんなに抱きしめられちゃって。
「うわ~可愛いねぇ! キミも迷子になったのかい? なら一緒に旅をしようか!」
優男……あんた、迷いなく決めたね。
天然を超えた、ミラクル・ド・天然認定試験があったら首席で合格できるほど、何を言っているのかが理解できないんですが。
「ぬぉ!? 離せ人間! 吾を誰だと思っている!!』
短い足をパタパタと動かし必死に抵抗するけど、所詮は白銀の毛玉。
無駄な努力という言葉がこれほど似合う生物もいないと思う。ウン。
そっと私の上に毛玉を戻し、ニコニコと微笑む優男を見ながらフト思う。
『ん? ジローって人間の言葉を話せたよね?』
『この姿の時は使えぬようにされてしまったのだ』
『そ、そんな一体誰に!?』
ジローは頭からぶらさがると、『貴様だが?』とジトメを向ける。
『……さ、無駄話はさておき、馬車の中の人を助けないと!』
そう言いながら馬車へと向かう。
中からはまだうめき声が聞こえているけれど、のぞいた所けが人もなく大丈夫みたい。
『ふぅ、助かってよかった。ねぇジロー?』
『うむ。吾以外は無事でよかったな。吾・い・が・い・は・な!!』
そんな私たちを見て、優男は「もふたちがじゃれているのって、微笑ましいね」とホッコリしながらも、馬車を覗きこみながら扉を引く。
馬車が襲われた反動で壊れたらしく、扉がきしみながらも開く。
どうやら内部に居るのは男女三名であり、私と同じくらいの女の子と、三十代ほどの商人ぽい服装の男。そして執事らしき初老のイケオジが倒れていた。
執事のおじいちゃんは、いかにも執事してますって感じの細身の人。
緑を基調にした服を来ている商人は、まぁありふれた太った体型かな。
でも目が鋭くて、歴戦の商人って感じ。
「みなさん大丈夫ですか?」
「うぅ……ここは……」
赤髪の娘はそういうと、優男にやさしく起こされる。そのセリフって流行っているの?
それにしても特徴的な容姿に驚く。赤髪と赤目だけでも珍しいのに、肌はこんがりとした小麦色だもん。
どこか異国の美形を見ている気分になっちゃう、そんな不思議な娘。
「どこか痛むかな?」
「いえ大丈夫……って、爺や!? しっかりして! オハラさんも大丈夫ですか?!」
赤髪の娘は焦りながら爺やを起こす。
その声で二人がめざめたようで、打ち身からか苦しげに爺やが起きると同時に、赤髪の娘を心配する。
「お嬢様! ご無事で何よりでしたぞ」
「いたた……はぁ、助かったようですな」
「ふぅ、どうやら無事なようでよかったです」
「皆さんだけでも無事でよかった。でもすみません、護衛の方たちは助けられませんでした」
優男の言葉に全員がハっとする。
その意味がわかり、赤髪の娘が優男へと話す。
「あなたが助けてくれたのですね? なんと御礼を申せばいいのか。本来なら家へ招いて厚く感謝をいたしたいのですが、なにぶん急ぎの旅の途中でございまして……」
窓から覗き込む車内。そこには確かに必要最低限の旅の荷物が詰まっているようで、それが散乱していた。
よく見れば三人とも身なりもよく、どうやら何処かへと向かう貴族という感じにみえた。どこに行くのかな?
「いえ。そのお言葉だけで十分です」
「本当に何も御礼ができず、心苦しい限りです。申し遅れましたが、わたしは――」
そう赤髪娘が言うと、執爺ちゃんが言葉を被せて「お嬢様」と静かに制す。
どうやらこの一行、ワケアリってやつかしらん?
『ねぇジロー。この人たちは悪い臭いがする?』
『いや、せぬな。どうやらこの者たちは、ハメられたのであろうよ』
ジローはそういうと、短い前足で森の中を指す。
見れば森の林の中から感じる視線が二つ、こちらを確かに見ていた。
そう憤慨していると、ジローが私の頭の上へとよじ登る。
そしてなにやら立ち上がり、右手を指して話す。
「おい貴様。これから下僕として飼ってやるから感謝するのだ」
おやめなさい駄犬。
誰が聞いてもワンワンとしか聞こえないからね?
って、ホラみなさい……そんなに抱きしめられちゃって。
「うわ~可愛いねぇ! キミも迷子になったのかい? なら一緒に旅をしようか!」
優男……あんた、迷いなく決めたね。
天然を超えた、ミラクル・ド・天然認定試験があったら首席で合格できるほど、何を言っているのかが理解できないんですが。
「ぬぉ!? 離せ人間! 吾を誰だと思っている!!』
短い足をパタパタと動かし必死に抵抗するけど、所詮は白銀の毛玉。
無駄な努力という言葉がこれほど似合う生物もいないと思う。ウン。
そっと私の上に毛玉を戻し、ニコニコと微笑む優男を見ながらフト思う。
『ん? ジローって人間の言葉を話せたよね?』
『この姿の時は使えぬようにされてしまったのだ』
『そ、そんな一体誰に!?』
ジローは頭からぶらさがると、『貴様だが?』とジトメを向ける。
『……さ、無駄話はさておき、馬車の中の人を助けないと!』
そう言いながら馬車へと向かう。
中からはまだうめき声が聞こえているけれど、のぞいた所けが人もなく大丈夫みたい。
『ふぅ、助かってよかった。ねぇジロー?』
『うむ。吾以外は無事でよかったな。吾・い・が・い・は・な!!』
そんな私たちを見て、優男は「もふたちがじゃれているのって、微笑ましいね」とホッコリしながらも、馬車を覗きこみながら扉を引く。
馬車が襲われた反動で壊れたらしく、扉がきしみながらも開く。
どうやら内部に居るのは男女三名であり、私と同じくらいの女の子と、三十代ほどの商人ぽい服装の男。そして執事らしき初老のイケオジが倒れていた。
執事のおじいちゃんは、いかにも執事してますって感じの細身の人。
緑を基調にした服を来ている商人は、まぁありふれた太った体型かな。
でも目が鋭くて、歴戦の商人って感じ。
「みなさん大丈夫ですか?」
「うぅ……ここは……」
赤髪の娘はそういうと、優男にやさしく起こされる。そのセリフって流行っているの?
それにしても特徴的な容姿に驚く。赤髪と赤目だけでも珍しいのに、肌はこんがりとした小麦色だもん。
どこか異国の美形を見ている気分になっちゃう、そんな不思議な娘。
「どこか痛むかな?」
「いえ大丈夫……って、爺や!? しっかりして! オハラさんも大丈夫ですか?!」
赤髪の娘は焦りながら爺やを起こす。
その声で二人がめざめたようで、打ち身からか苦しげに爺やが起きると同時に、赤髪の娘を心配する。
「お嬢様! ご無事で何よりでしたぞ」
「いたた……はぁ、助かったようですな」
「ふぅ、どうやら無事なようでよかったです」
「皆さんだけでも無事でよかった。でもすみません、護衛の方たちは助けられませんでした」
優男の言葉に全員がハっとする。
その意味がわかり、赤髪の娘が優男へと話す。
「あなたが助けてくれたのですね? なんと御礼を申せばいいのか。本来なら家へ招いて厚く感謝をいたしたいのですが、なにぶん急ぎの旅の途中でございまして……」
窓から覗き込む車内。そこには確かに必要最低限の旅の荷物が詰まっているようで、それが散乱していた。
よく見れば三人とも身なりもよく、どうやら何処かへと向かう貴族という感じにみえた。どこに行くのかな?
「いえ。そのお言葉だけで十分です」
「本当に何も御礼ができず、心苦しい限りです。申し遅れましたが、わたしは――」
そう赤髪娘が言うと、執爺ちゃんが言葉を被せて「お嬢様」と静かに制す。
どうやらこの一行、ワケアリってやつかしらん?
『ねぇジロー。この人たちは悪い臭いがする?』
『いや、せぬな。どうやらこの者たちは、ハメられたのであろうよ』
ジローはそういうと、短い前足で森の中を指す。
見れば森の林の中から感じる視線が二つ、こちらを確かに見ていた。
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