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016:初めての嫉妬と大聖女
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「あんちゃん……本当に大丈夫なのか?」
「うん。僕の信じているアネモネが教えてくれたんだ。絶対に大丈夫!!」
「でも……もしもみんなが言ってるみたく、毒薬だったら母ちゃんが……」
涙を堪えきれずに泣き出す愚民の子供。
それに白い歯をニカリと見せながら、優男は出来たばかりの特効薬へコップをぶち込むと、それをすくい上げて宣言した。
「みなさん心配は無用です! なぜなら――」
言葉を終わらせる前に、優男はコップの中身を一気飲みしちゃった。
薬効を知っていても、思わず「うそ~!?」と驚く私と同様に、愚民たちも「「「まさか!?」」」と驚く。
「ぷっは~! ほら、大丈夫!! 甘辛くて不思議な味だけど、病なんてあっという間に逃げ出すほどの元気がでますよ!!」
優男はそう言うと、手に持った木製のコップを片手で砕いてしまう。
いや、ちょっと待って。その特効薬にそんな効果ないんですけど!? あんた怪しげなモノは入れてないでしょうね?!
それが功をなし、村人たちが顔を見合わせながら、一番懐疑的だった太った男が静かに手を挙げる。
「お、俺がためしてみる」
「ありがとう。キミの勇気が村を救ったと、後世まで語り継がれるだろうね。はい、落ちついて飲んでみて」
太った男は「お、おう」と震える手で中身を飲み干す。
すると男は「うお?! な、なんだこりゃ!?」と叫びながら服を破り捨て、体中を撫で回した。
「うそだろ……オレンジ色のアザが消えている……」
一瞬変態かと思ったけれど、どうやら急速に回復した衝撃で、思わず服を破り捨てて確認したみたい。どうせ見るなら、ポヨンより細マッチョの方がよかったんですが?
愚民βが勇気を出してくれたおかげで、その後も続々と愚民たちが特効薬を飲み、一気に回復していった……はぁ良かったぁ、間に合って。
まったく失礼な愚民βだったけど、おかげでみんなが飲んでくれるきっかけを作ったから、失礼な態度は忘れてあげるわ。
それにしても優男、あんたが一番えらいよ。
だからみんなあんたに感謝してるんだから、すなおに感謝を受け取っておきなさいな。
「わわ!? ちょ、ちょっと待ってください! 僕は出来ることをしただけなので、そんなに頭を下げないでくださいよ!」
「何をおっしゃるか! 貴方様はこのオウレンジ村の救世主ですじゃ!! うむ、どうじゃろうか。ぜひ末の娘をもらってはくれぬじゃろうか? 年も貴方様と同じくらいじゃし、ついでに村長もしてほしいんじゃが?」
ちょ、どさくさに紛れて何を言い出すのよ愚民A!
なに娘を押し付けて、しかも村長にさせようとしているのさ。
むぅ……よく分からないけど、なにかイラっときたからこれでも喰らいなさいッ!!
「あ痛たッ!? 牛よ、なぜ尻尾で叩くのじゃ?!」
「知らないわよ! ハエでも止まってたんじゃないの!!」
ふんだ。なぜって聞かれても、自分でも知らないんだから答えようがないもん。
でもなんでこんなにイライラしているのかな? ……考えるともっとイライラするぅぅ!
だから「ぶふぅ~」と鼻息を吐き出すと、優男が困りながらも、とんでもないことを言い出す。
「ま、待ってください村長さんに村のみなさん。僕は旅を続けなくてはならないのです。そして勘違いをなさっているようですが、この村を救ったのは僕というよりは、この白い雌牛のアネモネなのですから」
一気に全員の視線が私へと私へと集まる。
そして私たちへ失礼な事を言っていた愚民たちが顔を見合わせて「そういえば……」と思い出したふうに話し出す。
「そうだった! 旅のお方も、この白牛に色々と教えをうけていた」
「そうよ! きっとこの白牛……いえ、白牛様は神の使いなのよ!!」
「「「おおおお!!」」」
フフン。ようやく理解できたようね愚民たち。
そうなのです、私が慈愛の女神様が直接神託で選んだ大聖女アネモネなのです。
でも……なんで私が称賛されるのさ。流れがなんかおかしくない?
「うん。僕の信じているアネモネが教えてくれたんだ。絶対に大丈夫!!」
「でも……もしもみんなが言ってるみたく、毒薬だったら母ちゃんが……」
涙を堪えきれずに泣き出す愚民の子供。
それに白い歯をニカリと見せながら、優男は出来たばかりの特効薬へコップをぶち込むと、それをすくい上げて宣言した。
「みなさん心配は無用です! なぜなら――」
言葉を終わらせる前に、優男はコップの中身を一気飲みしちゃった。
薬効を知っていても、思わず「うそ~!?」と驚く私と同様に、愚民たちも「「「まさか!?」」」と驚く。
「ぷっは~! ほら、大丈夫!! 甘辛くて不思議な味だけど、病なんてあっという間に逃げ出すほどの元気がでますよ!!」
優男はそう言うと、手に持った木製のコップを片手で砕いてしまう。
いや、ちょっと待って。その特効薬にそんな効果ないんですけど!? あんた怪しげなモノは入れてないでしょうね?!
それが功をなし、村人たちが顔を見合わせながら、一番懐疑的だった太った男が静かに手を挙げる。
「お、俺がためしてみる」
「ありがとう。キミの勇気が村を救ったと、後世まで語り継がれるだろうね。はい、落ちついて飲んでみて」
太った男は「お、おう」と震える手で中身を飲み干す。
すると男は「うお?! な、なんだこりゃ!?」と叫びながら服を破り捨て、体中を撫で回した。
「うそだろ……オレンジ色のアザが消えている……」
一瞬変態かと思ったけれど、どうやら急速に回復した衝撃で、思わず服を破り捨てて確認したみたい。どうせ見るなら、ポヨンより細マッチョの方がよかったんですが?
愚民βが勇気を出してくれたおかげで、その後も続々と愚民たちが特効薬を飲み、一気に回復していった……はぁ良かったぁ、間に合って。
まったく失礼な愚民βだったけど、おかげでみんなが飲んでくれるきっかけを作ったから、失礼な態度は忘れてあげるわ。
それにしても優男、あんたが一番えらいよ。
だからみんなあんたに感謝してるんだから、すなおに感謝を受け取っておきなさいな。
「わわ!? ちょ、ちょっと待ってください! 僕は出来ることをしただけなので、そんなに頭を下げないでくださいよ!」
「何をおっしゃるか! 貴方様はこのオウレンジ村の救世主ですじゃ!! うむ、どうじゃろうか。ぜひ末の娘をもらってはくれぬじゃろうか? 年も貴方様と同じくらいじゃし、ついでに村長もしてほしいんじゃが?」
ちょ、どさくさに紛れて何を言い出すのよ愚民A!
なに娘を押し付けて、しかも村長にさせようとしているのさ。
むぅ……よく分からないけど、なにかイラっときたからこれでも喰らいなさいッ!!
「あ痛たッ!? 牛よ、なぜ尻尾で叩くのじゃ?!」
「知らないわよ! ハエでも止まってたんじゃないの!!」
ふんだ。なぜって聞かれても、自分でも知らないんだから答えようがないもん。
でもなんでこんなにイライラしているのかな? ……考えるともっとイライラするぅぅ!
だから「ぶふぅ~」と鼻息を吐き出すと、優男が困りながらも、とんでもないことを言い出す。
「ま、待ってください村長さんに村のみなさん。僕は旅を続けなくてはならないのです。そして勘違いをなさっているようですが、この村を救ったのは僕というよりは、この白い雌牛のアネモネなのですから」
一気に全員の視線が私へと私へと集まる。
そして私たちへ失礼な事を言っていた愚民たちが顔を見合わせて「そういえば……」と思い出したふうに話し出す。
「そうだった! 旅のお方も、この白牛に色々と教えをうけていた」
「そうよ! きっとこの白牛……いえ、白牛様は神の使いなのよ!!」
「「「おおおお!!」」」
フフン。ようやく理解できたようね愚民たち。
そうなのです、私が慈愛の女神様が直接神託で選んだ大聖女アネモネなのです。
でも……なんで私が称賛されるのさ。流れがなんかおかしくない?
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