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015:村人の疑心と大聖女
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「さぁ始めよう。まずはこの大タライに甘野草を入れて上蓋を落としてっと。アネモネ悪いが頼めるかい?」
「仕方ないわね、ほらどきなさい」
「うわ、牛がやるのか!? あんちゃん、本当に大丈夫かよ!?」
「大丈夫、アネモネはとても頭がいいんだ。だから安心して見ていておくれ?」
よく言ったわ優男。まったく、失礼な愚民の子供たちだよ。
まぁ見ていなさい、今すぐ絶妙な踏み加減で汁を絞り出すからね。
「なるほど、これなら一気に絞れるね」
さっき雑貨屋で見つけた、小麦粉を伸ばす台と太い棒。
それを少し改造して、台と棒を固定する物を作り出す。
あとは台と棒の間に甘野草を入れた蓋付きのタライを固定して、台に傾斜をつけながら私の体重で棒を押すと、一気に蓋が押され草が潰れて汁が下のタライの底へとたまる。
べ、べつに私が重いってワケじゃないんだから勘違いしないでよ優男。
「うん、さすがアネモノの体重なら簡単に絞れるね! さ、どんどんいこう」
ちょっとあんた! 人がデブみたく言わないでよね!? 泣けてくるじゃない!! …………後でおしおきだからね?
そんなこんなで絞りもうまくいき、あとは結晶を溶かすだけなんだけど……。
「すり鉢に汁を九。結晶を一でゆっくりと押しつぶしながら溶かす。これでいいかいアネモネ?」
あんたバカでしょ?
ほら御覧なさい。私に聞きながら作ろうとしているから言われちゃてるよ?
「な、なんだあの若者……牛から教えを受けている……のか?」
愚民αはドン引いているし、愚民βは息も絶え絶えなのに、「本気か!?」とか大声をだす元気が復活してるんですけど?
愚民γは「牛に殺されるッ!?」とか失礼な事言っているし、愚民εにいたっては目がεεになってるんだけど!?
そんな事を知ってか知らずか、優男の集中力は目の前の調合だけしか見えない。
呆れた。本当にこの男は、他人のためにここまで一途になれるなんてね。
でもまぁ……ふん、嫌いじゃないかも。
「ダメだよ。最高の品質にするなら見ていて」
足で地面に線を引き、八対二にして見せる。
そしてゆっくりじゃなくて、すり鉢の縁のくぼみへ、すりこぎ棒をそわせる動作を見せた。
「なるほど、潰すんじゃなくて縁のくぼみへ当たる振動で溶かす。そうだねアネモネ?」
「それであっているよ」
この優男……しんじられない。
ふつう牛の言う事をここまで信じる事ができる? しかも足でジェスチャーしただけなのに。
なんなのよ、この私に対する信頼は。
でも……なんだろう。
「ちょっと嬉しいかも」
まるで人間相手に接してくれているようで、心が踊ってしまうほどだけどさ。
でも愚民は不安なんでしょうね。それはそうだよ、だって今の私は見た目は牛だもん。
そんな彼らの心配をよそに、優男は私の指示通りに鑑定結果を無視して薬を調合する。
やがて村の時計で五十七分が経過した頃、「出来た……」と優男はひたいの汗をふきながら私を見つめる。
「アネモネ、ついに完成したよ!!」
うん。艶・匂い・粘度のどれをとっても完璧な仕上がり。
効能も大聖女の私なら、口にふくまなくてもわかる。これは完全にオウレンジ病の特効薬の完成体だよ。
あんた、実はプロの薬師じゃないの? そう思えるほど完璧な出来だった。でも……。
「お、おい……大丈夫なのか? 牛に聞いて作った薬なんて……」
「ハァフゥ、飲まなければ死ぬだけじゃぞ?」
「ですが村長。ハァフゥ……よそ者、しかも牛に聞きながら作った薬なんて……信用、できません……」
ハァ~、やっぱりそうなるよね。
だから愚民は嫌いよ。自分たちを救おうとしてくれている優男へ、失礼な言い方するんじゃないわよ!
ふん、やっぱりマリエッタ様の言う事は間違っていなかったと思った瞬間、優男は信じられない行動にでた。
「仕方ないわね、ほらどきなさい」
「うわ、牛がやるのか!? あんちゃん、本当に大丈夫かよ!?」
「大丈夫、アネモネはとても頭がいいんだ。だから安心して見ていておくれ?」
よく言ったわ優男。まったく、失礼な愚民の子供たちだよ。
まぁ見ていなさい、今すぐ絶妙な踏み加減で汁を絞り出すからね。
「なるほど、これなら一気に絞れるね」
さっき雑貨屋で見つけた、小麦粉を伸ばす台と太い棒。
それを少し改造して、台と棒を固定する物を作り出す。
あとは台と棒の間に甘野草を入れた蓋付きのタライを固定して、台に傾斜をつけながら私の体重で棒を押すと、一気に蓋が押され草が潰れて汁が下のタライの底へとたまる。
べ、べつに私が重いってワケじゃないんだから勘違いしないでよ優男。
「うん、さすがアネモノの体重なら簡単に絞れるね! さ、どんどんいこう」
ちょっとあんた! 人がデブみたく言わないでよね!? 泣けてくるじゃない!! …………後でおしおきだからね?
そんなこんなで絞りもうまくいき、あとは結晶を溶かすだけなんだけど……。
「すり鉢に汁を九。結晶を一でゆっくりと押しつぶしながら溶かす。これでいいかいアネモネ?」
あんたバカでしょ?
ほら御覧なさい。私に聞きながら作ろうとしているから言われちゃてるよ?
「な、なんだあの若者……牛から教えを受けている……のか?」
愚民αはドン引いているし、愚民βは息も絶え絶えなのに、「本気か!?」とか大声をだす元気が復活してるんですけど?
愚民γは「牛に殺されるッ!?」とか失礼な事言っているし、愚民εにいたっては目がεεになってるんだけど!?
そんな事を知ってか知らずか、優男の集中力は目の前の調合だけしか見えない。
呆れた。本当にこの男は、他人のためにここまで一途になれるなんてね。
でもまぁ……ふん、嫌いじゃないかも。
「ダメだよ。最高の品質にするなら見ていて」
足で地面に線を引き、八対二にして見せる。
そしてゆっくりじゃなくて、すり鉢の縁のくぼみへ、すりこぎ棒をそわせる動作を見せた。
「なるほど、潰すんじゃなくて縁のくぼみへ当たる振動で溶かす。そうだねアネモネ?」
「それであっているよ」
この優男……しんじられない。
ふつう牛の言う事をここまで信じる事ができる? しかも足でジェスチャーしただけなのに。
なんなのよ、この私に対する信頼は。
でも……なんだろう。
「ちょっと嬉しいかも」
まるで人間相手に接してくれているようで、心が踊ってしまうほどだけどさ。
でも愚民は不安なんでしょうね。それはそうだよ、だって今の私は見た目は牛だもん。
そんな彼らの心配をよそに、優男は私の指示通りに鑑定結果を無視して薬を調合する。
やがて村の時計で五十七分が経過した頃、「出来た……」と優男はひたいの汗をふきながら私を見つめる。
「アネモネ、ついに完成したよ!!」
うん。艶・匂い・粘度のどれをとっても完璧な仕上がり。
効能も大聖女の私なら、口にふくまなくてもわかる。これは完全にオウレンジ病の特効薬の完成体だよ。
あんた、実はプロの薬師じゃないの? そう思えるほど完璧な出来だった。でも……。
「お、おい……大丈夫なのか? 牛に聞いて作った薬なんて……」
「ハァフゥ、飲まなければ死ぬだけじゃぞ?」
「ですが村長。ハァフゥ……よそ者、しかも牛に聞きながら作った薬なんて……信用、できません……」
ハァ~、やっぱりそうなるよね。
だから愚民は嫌いよ。自分たちを救おうとしてくれている優男へ、失礼な言い方するんじゃないわよ!
ふん、やっぱりマリエッタ様の言う事は間違っていなかったと思った瞬間、優男は信じられない行動にでた。
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