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今はこれだけにしとくけど
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…………という夢を見た。
「なんだよ夢か」
ツバキがあんなに甘い訳がない。つーか、まだ一回もしたことない。
はあ、とため息をついて、時計を見る。そういえば昼寝をしてたんだったと思い出し、ツバキの部屋へ向かった。
俺は皇族と契約した魔物だから、俺の部屋はツバキの部屋とは室内の扉で繋がっている。その扉を開けると夢と同じように姿勢よく読書をするツバキがいた。さらりと伸びた白銀色の髪に魅せられる。
「カオウ、おやつあるわよ」
入ってきた俺に気づいて振り返り、柔らかく微笑むその顔にまた魅せられた。
おやつよりツバキが食べたい、なんて言えるはずがなく。
隣に座って腕をツバキの肩に回した。侍女のサクラとカリンの眉が不快げにひそめられたのも気にせず、ツバキの耳に唇を寄せる。
「さっき夢でツバキにキスしたよ」
「……!」
ツバキにしか聞こえない声でぼそっと言うと、ツバキは顔を真っ赤にして耳を押さえた。
本当はもっとすごいことしてるんだけど、それはツバキには刺激が強すぎる。
「ねえ、していい?」
「ダメに決まってるでしょ。何言ってるの」
「じゃあほっぺだけね」
問答無用でチューする。ツバキが五歳のころから一緒にいるから、ほっぺにチューくらいは許してくれる。侍女の視線が痛いけど。
「もう。おやついらないの? カオウの好きなチョコだよ」
「食べさして」
「……まだ寝ぼけてるの?」
「あーん」
「寝ぼけてるのね」
呆れながらチョコを口に入れてくれた。引っ込めようとする手首を掴んで、チョコがついた指をくわえて舐める。
「ちょ、ちょっとカオウ?」
<おいしい>
「やだ離して」
<もうちょっと>
「やめてってば」
語気を強めたツバキは目の前から姿を消し、サクラのそばに一瞬で現れる。
俺と契約したツバキも瞬間移動できるから本気で嫌だと簡単に逃げられる。きっと生まれ変わらない限り、嫌がるツバキを組み敷くなんてできないんだろう。
かといって契約解除したら極上の魔力を吸えない。それにずっと一緒にいると約束しているから、解除したらツバキを傷つけてしまう。
はあ、と深くため息をつく。
ツバキが俺を好きだと言ってくれれば、皇女の立場なんて無視して誰もいないところへ連れ去るのに。
俺はもう一度深いため息をついてから、机に置かれたチョコを口一杯に頬張った。
「なんだよ夢か」
ツバキがあんなに甘い訳がない。つーか、まだ一回もしたことない。
はあ、とため息をついて、時計を見る。そういえば昼寝をしてたんだったと思い出し、ツバキの部屋へ向かった。
俺は皇族と契約した魔物だから、俺の部屋はツバキの部屋とは室内の扉で繋がっている。その扉を開けると夢と同じように姿勢よく読書をするツバキがいた。さらりと伸びた白銀色の髪に魅せられる。
「カオウ、おやつあるわよ」
入ってきた俺に気づいて振り返り、柔らかく微笑むその顔にまた魅せられた。
おやつよりツバキが食べたい、なんて言えるはずがなく。
隣に座って腕をツバキの肩に回した。侍女のサクラとカリンの眉が不快げにひそめられたのも気にせず、ツバキの耳に唇を寄せる。
「さっき夢でツバキにキスしたよ」
「……!」
ツバキにしか聞こえない声でぼそっと言うと、ツバキは顔を真っ赤にして耳を押さえた。
本当はもっとすごいことしてるんだけど、それはツバキには刺激が強すぎる。
「ねえ、していい?」
「ダメに決まってるでしょ。何言ってるの」
「じゃあほっぺだけね」
問答無用でチューする。ツバキが五歳のころから一緒にいるから、ほっぺにチューくらいは許してくれる。侍女の視線が痛いけど。
「もう。おやついらないの? カオウの好きなチョコだよ」
「食べさして」
「……まだ寝ぼけてるの?」
「あーん」
「寝ぼけてるのね」
呆れながらチョコを口に入れてくれた。引っ込めようとする手首を掴んで、チョコがついた指をくわえて舐める。
「ちょ、ちょっとカオウ?」
<おいしい>
「やだ離して」
<もうちょっと>
「やめてってば」
語気を強めたツバキは目の前から姿を消し、サクラのそばに一瞬で現れる。
俺と契約したツバキも瞬間移動できるから本気で嫌だと簡単に逃げられる。きっと生まれ変わらない限り、嫌がるツバキを組み敷くなんてできないんだろう。
かといって契約解除したら極上の魔力を吸えない。それにずっと一緒にいると約束しているから、解除したらツバキを傷つけてしまう。
はあ、と深くため息をつく。
ツバキが俺を好きだと言ってくれれば、皇女の立場なんて無視して誰もいないところへ連れ去るのに。
俺はもう一度深いため息をついてから、机に置かれたチョコを口一杯に頬張った。
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