上 下
114 / 222
シーズン4-スリーパー防衛編

114-乾坤一擲

しおりを挟む
再突入を行ったアドアステラは、砲火に晒されながら加速する。
私の操縦は別に上手くも下手でもないが、それをシトリンがサポートしてくれる。
ドローンの裏をかくように、機体をあらゆる方向へ転進させ、スラスターを使った無理な機動を行って砲撃を回避していく。
もちろん、その間の砲撃は一切止めていない。
ただ...

「数が多過ぎるな...」

指揮官が狙われた瞬間に、奴らはセンティネルではなくこちらを狙い始めた。
正直、手が足りない...

「いいや、それでは甘いな」

私はアリアに敵の座標を同期共有する。

「アリア、敵の座標をもとに、偏差でミサイルを撃ち込め...出来るな?」
「...やってみます!」

近接信管ではなく、時限信管のミサイルを放ち、出来る限り多くのドローンを巻き込む。
これは感覚が重要だが、ミサイルの発射を何度もやってきたアリアなら出来るはずだ。

「ケイン、オルトロスを全機射出! 最適と思われる対象に攻撃を放て、一撃でも受けたら帰投させ、シールドを修復してから再度出撃!」
「了解!」

オルトロスは高火力のドローンだが、耐久力は比較的低い。
だがケインの即時判断があれば、あのドローン達は即座に帰還するだろう。

「ノルス、推力上昇、SWDの起動、サブワープドライブの出力に関してはお前に任せる...頼んだ!」
「喜んで...御主人!」

基本は私の指示で行なっているけれど、もう彼はアドアステラの機関出力だけに目を向けるならば、素人ではないと言える。
全て任せてしまおう。

「ファイス、シールド系モジュールやサブシステムの起動については、お前の判断に任せる」
「お任せを」

直後、押されていたシールドが内部から響く機械の稼働音と共に回復していく。
ファイスがシールドブースターを起動したのだろう。

「...ッ!」

エリートドローン(旗艦級)の砲口が、ついにこちらを向いた。
私は咄嗟に指を鳴らす。
直後、SWDが起動し、アドアステラは高速でエリートドローンの射角から離脱する。

「シトリン!」
『はい、射撃再開します』

丁度真横にエリートドローンが来る形になったため、アドアステラの主砲が旋回し、再び捕捉されるより速く砲撃を行う。

「ノルス!」
「CJD起動いたします」

捕捉され、砲撃が飛ぶと同時にアドアステラは艦首を跳ね上げ、そのまま上へと向けてジャンプする。

「......がっ!?」

突如、脳裏に石をぶつけられたかのような衝撃が走る。
慌ててマスクを解除して、エチケット袋を取り出して血を吐く。
この傷は体内の出血によるものだけれど、医療ポッドに入ればすぐに治る、骨折とはものが違うものだ...気にする理由はない。

「降下する、総員、自らの職務を全うせよ!」
「「「「『了解』」」」」

エリートドローンに再接近するには、周囲の小型ドローンが邪魔だ。
一気に急降下して一撃を撃ち込まなければならない。
そう考えていた時。

『雷撃接近、直下です』

雨霰のような勢いで、魚雷群がアドアステラの直下にいるドローン艦隊に襲い掛かった。
シールドが剥げ落ち、吹き飛ぶドローン達。
その攻撃を行ったのは誰かと、私は簡易レーダーを見た。

『カル、やっちまえ! 俺は逃げるけどな!』

ネメシスが機首を逆側へ向け、逃げていくのが見える。
一部のドローンのヘイトがそちらに向き、ネメシスを追っていく。
あまりのファインプレーに、私はついアルゴを疑った。
けれど、真実だ。

「ありがとう、アルゴ...砲撃準備!」
『射撃準備完了』

アドアステラとエリートドローンの射線が交差する、その一瞬。
不安定なシールドへ向け、全ての砲塔を連射する。
すぐにシールドが砕け散り、エリートドローンが被弾する。

『こちらセンティネル、直ちに離脱せよ』
「離脱する、ノルス!」
「はっ!」

アドアステラは加速し、キルゾーンから離脱する。
直後、センティネルの艦首付近に巨大なエネルギーが収束し、直後エリートドローンの艦隊と、その背後にあるステーションに向けて放たれた。
一般スリーパードローンのシールドを紙のように貫き、シールドの消えたエリートドローンを吹き飛ばした一撃は、ステーションに大穴を開け、内部で爆発してステーションを吹き飛ばした。
それによって、内部を巣にしていたドローンも纏めて消し飛んだ。

『攻撃終了。全艦、突入せよ、突入せよ、残党を掃討せよ!』
「よし、俺たちも行くぞ!」

アドアステラは再度方向転換し、エリートドローン艦隊の残党の掃討へ向かうのだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

入れ替われるイメクラ

廣瀬純一
SF
男女の体が入れ替わるイメクラの話

天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜 

八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。 第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。 大和型三隻は沈没した……、と思われた。 だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。 大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。 祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。 ※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています! 面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※ ※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※

能力が基本となった世界0

SF
これは、ある場所に向かう道すがら、とある男が子供の頃から組織に入るまでのことを仲間に話す。物語 能力が基本となった世界では語りきれなかった物語

【VRMMO】イースターエッグ・オンライン【RPG】

一樹
SF
ちょっと色々あって、オンラインゲームを始めることとなった主人公。 しかし、オンラインゲームのことなんてほとんど知らない主人公は、スレ立てをしてオススメのオンラインゲームを、スレ民に聞くのだった。 ゲーム初心者の活字中毒高校生が、オンラインゲームをする話です。 以前投稿した短編 【緩募】ゲーム初心者にもオススメのオンラインゲーム教えて の連載版です。 連載するにあたり、短編は削除しました。

【マテリアラーズ】 惑星を巡る素材集め屋が、大陸が全て消失した地球を再興するため、宇宙をまたにかけ、地球を復興する

紫電のチュウニー
SF
 宇宙で様々な技術が発達し、宇宙域に二足歩行知能生命体が溢れるようになった時代。  各星には様々な技術が広まり、多くの武器や防具を求め、道なる生命体や物質を採取したり、高度な 技術を生み出す惑星、地球。  その地球において、通称【マテリアラーズ】と呼ばれる、素材集め専門の集団がいた。  彼らにはスポンサーがつき、その協力を得て多くの惑星より素材を集める危険な任務を担う。  この物語はそんな素材屋で働き始めた青年と、相棒の物語である。  青年エレットは、惑星で一人の女性と出会う事になる。  数奇なる運命を持つ少女とエレットの織り成すSFハイファンタジーの世界をお楽しみください。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

強制ハーレムな世界で元囚人の彼は今日もマイペースです。

きゅりおす
SF
ハーレム主人公は元囚人?!ハーレム風SFアクション開幕! 突如として男性の殆どが消滅する事件が発生。 そんな人口ピラミッド崩壊な世界で女子生徒が待ち望んでいる中、現れる男子生徒、ハーレムの予感(?) 異色すぎる主人公が周りを巻き込みこの世界を駆ける!

日本国転生

北乃大空
SF
 女神ガイアは神族と呼ばれる宇宙管理者であり、地球を含む太陽系を管理して人類の歴史を見守ってきた。  或る日、ガイアは地球上の人類未来についてのシミュレーションを実施し、その結果は22世紀まで確実に人類が滅亡するシナリオで、何度実施しても滅亡する確率は99.999%であった。  ガイアは人類滅亡シミュレーション結果を中央管理局に提出、事態を重くみた中央管理局はガイアに人類滅亡の回避指令を出した。  その指令内容は地球人類の歴史改変で、現代地球とは別のパラレルワールド上に存在するもう一つの地球に干渉して歴史改変するものであった。  ガイアが取った歴史改変方法は、国家丸ごと転移するもので転移する国家は何と現代日本であり、その転移先は太平洋戦争開戦1年前の日本で、そこに国土ごと上書きするというものであった。  その転移先で日本が世界各国と開戦し、そこで起こる様々な出来事を超人的な能力を持つ女神と天使達の手助けで日本が覇権国家になり、人類滅亡を回避させて行くのであった。

処理中です...