16 / 222
序章
016-『フォートモジュール』
しおりを挟む
『お前に教えてやろう』
『なに? お兄ちゃん!』
今から三年前と二十二日、十五時間前。
お兄ちゃんは私に、教えてくれた。
『もしお前が、数十の艦隊に囲まれたらどうする?』
『それって.....死ぬしかないんじゃ?』
『それで終わりか? 悔しくないのか?』
あの時の私は、その通りだと思った。
ただ理不尽に船を落とされて、悔しく思わないはずがない。
『お前が使っている船――――アベリアは、襲撃型戦艦だ。つまりは、襲撃型の特徴を受け継いでいるわけだな』
『....うん』
『つまり、戦術武装が使えるわけだ』
『戦術武装?』
『高度ダメージ制御のようなやつだ』
『....ああ!』
私が当時乗っていた船は、襲撃型戦艦のアベリア。
アドアステラより安いのは、まあ当然だろう。
『お前が使う高度ダメージ制御は、戦術武装の中でも最下位に位置する』
『そうなの?』
『それの上位版を今から紹介する。【フォートモジュール】だ』
『フォートモジュール?』
フォートモジュール。
お兄ちゃんは、馬鹿な私にそれを懇切丁寧に説明してくれた。
『お前が使う高度ダメージ制御は、電力を消費するモジュールだが、中位の戦術武装は船のキャパシタとは別に、燃料を消費する。』
『燃料......確かに、使うね』
アドアステラとは違い、アベリアは稼働に燃料を使う。
環境に優しい水素反応機関だ。
『だが、その燃料とはまた違うぞ?』
『えっ?』
『水素燃料じゃない、反物質燃料だ』
『反物質ゥ?』
特殊天体からしか入手のできない燃料で、私のお財布的には当時少し厳しかった。
だがお兄ちゃんは、代替燃料も教えてくれた。
『一応だが、ダークマターも燃料として使えるぞ。飛んでるだけで溜まるから、そっちがおすすめだな』
『効率はいかほど?』
『そうだな....大体反物質の15%くらいだな』
『少なっ!』
そんなやり取りをしたものだ。
懐かしい。
「お兄ちゃん、あのことは忘れないよ!」
CJDでジャンプした私は、右目に痛みを感じた。
だが、立ち止まるわけにはいかない。
「【フォートモジュール】、起動」
物凄く高い反物質燃料だが、今はカーゴスペースの一角を占拠するレベルにまで貯められた。
全く、ひと箱でシタデルが建てられるんだよね......ヤレヤレ。
『フォートモジュール起動。推進装置へのエネルギーが遮断されました、ワープコア停止。副航行機関系統へのエネルギーを停止。シールド増幅システム起動、兵装へのエネルギーを増幅、ターゲティングシステムへのCPUノードを増幅』
私はお兄ちゃんの説明を思い出す。
『このモジュールは、ひとたび起動すれば推進系が全部使えなくなる』
『ええっ? 弱くなっちゃうんじゃ.....』
『その代わり、まず射程が10倍になる上に、攻撃系統の単体ダメージは概算で5.5倍。戦闘機やドローンの制御範囲や攻撃力、防御力に機動力まで上がる』
『強すぎない?』
『その代わり燃料は高いし、動けなくなるけどな』
確かに、それはかなりのデメリットだった。
負けそうになっても逃げられないんだから。
「フフフ、フハハハ、ハハハハハハ!!! 圧倒的な射程の前に屈しろ!」
アドアステラの主砲が、眩い光を放つ。
何百倍にも増幅されたレーザー砲撃が、巡洋戦艦の一隻を叩く。
シールドが一瞬貫通して、装甲板にまでダメージが入った。
「おっと、そういえばスキャンを忘れてた」
レーダーに船の詳細が表示される。
「........は?」
『カラドオロズ級襲撃型戦艦7、メリローグ級攻城戦艦5、アリステロン級艦載機母艦4、ケルジェッドエイン指揮型戦艦2、ケイロン級戦艦8、カラッド級巡洋戦艦12、イリース級巡洋戦艦6、ジーグベルム級巡洋艦5、リシモス級巡洋艦2』
妙に数が多いと思ってたけど、明らかにおかしい。
こんなの、海賊の主力級だと思うんだけど....もしかして、今回の相手って、かなりの大物なの..........?
「あんの野郎.....」
道理で、破格の報酬だと思った。
にっくきアレンスターの顔を思い浮かべ、私は拳を握り締める。
「こうなったら本気で行くぞ」
私はドローンを展開する。
その名は「オルトロス」。
神話の狼の名を冠した、超強力なドローンである。
流石に強すぎて、一度に二機しか出せない。
護衛に「アイギス」を出す。
防衛ドローンで、援護対象を庇うように動くし、ミサイルなどを自動で迎撃するのだ。
「これでドローン系はネタ切れだ」
いくらこの船が大きくとも、積めるドローンには限りがある。
これ以上新しいドローンはない。
...戦闘機はあるが、あれは有人で尚且つ個人の腕がモノを言う。
私が乗っても100%の能力を発揮できるわけではない。
「帰ったらアレを使わないとな...」
ドローンの処分先に見当をつけつつ、私は一気に攻勢へと出る。
まずは艦隊の先鋒に布陣しているカラドオロズ級とメリローグ級を集中的に砲撃し、ドローンはドローンで指揮型戦艦を直接叩かせる。
勿論コマンダーシップは硬いので、装甲の薄い場所を優先的に狙わせる形になるが。
「生き残るんだ....!」
生き残って、もしお兄ちゃんに会えたなら.....
その時は――――!
『なに? お兄ちゃん!』
今から三年前と二十二日、十五時間前。
お兄ちゃんは私に、教えてくれた。
『もしお前が、数十の艦隊に囲まれたらどうする?』
『それって.....死ぬしかないんじゃ?』
『それで終わりか? 悔しくないのか?』
あの時の私は、その通りだと思った。
ただ理不尽に船を落とされて、悔しく思わないはずがない。
『お前が使っている船――――アベリアは、襲撃型戦艦だ。つまりは、襲撃型の特徴を受け継いでいるわけだな』
『....うん』
『つまり、戦術武装が使えるわけだ』
『戦術武装?』
『高度ダメージ制御のようなやつだ』
『....ああ!』
私が当時乗っていた船は、襲撃型戦艦のアベリア。
アドアステラより安いのは、まあ当然だろう。
『お前が使う高度ダメージ制御は、戦術武装の中でも最下位に位置する』
『そうなの?』
『それの上位版を今から紹介する。【フォートモジュール】だ』
『フォートモジュール?』
フォートモジュール。
お兄ちゃんは、馬鹿な私にそれを懇切丁寧に説明してくれた。
『お前が使う高度ダメージ制御は、電力を消費するモジュールだが、中位の戦術武装は船のキャパシタとは別に、燃料を消費する。』
『燃料......確かに、使うね』
アドアステラとは違い、アベリアは稼働に燃料を使う。
環境に優しい水素反応機関だ。
『だが、その燃料とはまた違うぞ?』
『えっ?』
『水素燃料じゃない、反物質燃料だ』
『反物質ゥ?』
特殊天体からしか入手のできない燃料で、私のお財布的には当時少し厳しかった。
だがお兄ちゃんは、代替燃料も教えてくれた。
『一応だが、ダークマターも燃料として使えるぞ。飛んでるだけで溜まるから、そっちがおすすめだな』
『効率はいかほど?』
『そうだな....大体反物質の15%くらいだな』
『少なっ!』
そんなやり取りをしたものだ。
懐かしい。
「お兄ちゃん、あのことは忘れないよ!」
CJDでジャンプした私は、右目に痛みを感じた。
だが、立ち止まるわけにはいかない。
「【フォートモジュール】、起動」
物凄く高い反物質燃料だが、今はカーゴスペースの一角を占拠するレベルにまで貯められた。
全く、ひと箱でシタデルが建てられるんだよね......ヤレヤレ。
『フォートモジュール起動。推進装置へのエネルギーが遮断されました、ワープコア停止。副航行機関系統へのエネルギーを停止。シールド増幅システム起動、兵装へのエネルギーを増幅、ターゲティングシステムへのCPUノードを増幅』
私はお兄ちゃんの説明を思い出す。
『このモジュールは、ひとたび起動すれば推進系が全部使えなくなる』
『ええっ? 弱くなっちゃうんじゃ.....』
『その代わり、まず射程が10倍になる上に、攻撃系統の単体ダメージは概算で5.5倍。戦闘機やドローンの制御範囲や攻撃力、防御力に機動力まで上がる』
『強すぎない?』
『その代わり燃料は高いし、動けなくなるけどな』
確かに、それはかなりのデメリットだった。
負けそうになっても逃げられないんだから。
「フフフ、フハハハ、ハハハハハハ!!! 圧倒的な射程の前に屈しろ!」
アドアステラの主砲が、眩い光を放つ。
何百倍にも増幅されたレーザー砲撃が、巡洋戦艦の一隻を叩く。
シールドが一瞬貫通して、装甲板にまでダメージが入った。
「おっと、そういえばスキャンを忘れてた」
レーダーに船の詳細が表示される。
「........は?」
『カラドオロズ級襲撃型戦艦7、メリローグ級攻城戦艦5、アリステロン級艦載機母艦4、ケルジェッドエイン指揮型戦艦2、ケイロン級戦艦8、カラッド級巡洋戦艦12、イリース級巡洋戦艦6、ジーグベルム級巡洋艦5、リシモス級巡洋艦2』
妙に数が多いと思ってたけど、明らかにおかしい。
こんなの、海賊の主力級だと思うんだけど....もしかして、今回の相手って、かなりの大物なの..........?
「あんの野郎.....」
道理で、破格の報酬だと思った。
にっくきアレンスターの顔を思い浮かべ、私は拳を握り締める。
「こうなったら本気で行くぞ」
私はドローンを展開する。
その名は「オルトロス」。
神話の狼の名を冠した、超強力なドローンである。
流石に強すぎて、一度に二機しか出せない。
護衛に「アイギス」を出す。
防衛ドローンで、援護対象を庇うように動くし、ミサイルなどを自動で迎撃するのだ。
「これでドローン系はネタ切れだ」
いくらこの船が大きくとも、積めるドローンには限りがある。
これ以上新しいドローンはない。
...戦闘機はあるが、あれは有人で尚且つ個人の腕がモノを言う。
私が乗っても100%の能力を発揮できるわけではない。
「帰ったらアレを使わないとな...」
ドローンの処分先に見当をつけつつ、私は一気に攻勢へと出る。
まずは艦隊の先鋒に布陣しているカラドオロズ級とメリローグ級を集中的に砲撃し、ドローンはドローンで指揮型戦艦を直接叩かせる。
勿論コマンダーシップは硬いので、装甲の薄い場所を優先的に狙わせる形になるが。
「生き残るんだ....!」
生き残って、もしお兄ちゃんに会えたなら.....
その時は――――!
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜
八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。
第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。
大和型三隻は沈没した……、と思われた。
だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。
大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。
祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。
※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています!
面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※
※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※
【VRMMO】イースターエッグ・オンライン【RPG】
一樹
SF
ちょっと色々あって、オンラインゲームを始めることとなった主人公。
しかし、オンラインゲームのことなんてほとんど知らない主人公は、スレ立てをしてオススメのオンラインゲームを、スレ民に聞くのだった。
ゲーム初心者の活字中毒高校生が、オンラインゲームをする話です。
以前投稿した短編
【緩募】ゲーム初心者にもオススメのオンラインゲーム教えて
の連載版です。
連載するにあたり、短編は削除しました。
【マテリアラーズ】 惑星を巡る素材集め屋が、大陸が全て消失した地球を再興するため、宇宙をまたにかけ、地球を復興する
紫電のチュウニー
SF
宇宙で様々な技術が発達し、宇宙域に二足歩行知能生命体が溢れるようになった時代。
各星には様々な技術が広まり、多くの武器や防具を求め、道なる生命体や物質を採取したり、高度な
技術を生み出す惑星、地球。
その地球において、通称【マテリアラーズ】と呼ばれる、素材集め専門の集団がいた。
彼らにはスポンサーがつき、その協力を得て多くの惑星より素材を集める危険な任務を担う。
この物語はそんな素材屋で働き始めた青年と、相棒の物語である。
青年エレットは、惑星で一人の女性と出会う事になる。
数奇なる運命を持つ少女とエレットの織り成すSFハイファンタジーの世界をお楽しみください。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
強制ハーレムな世界で元囚人の彼は今日もマイペースです。
きゅりおす
SF
ハーレム主人公は元囚人?!ハーレム風SFアクション開幕!
突如として男性の殆どが消滅する事件が発生。
そんな人口ピラミッド崩壊な世界で女子生徒が待ち望んでいる中、現れる男子生徒、ハーレムの予感(?)
異色すぎる主人公が周りを巻き込みこの世界を駆ける!
日本国転生
北乃大空
SF
女神ガイアは神族と呼ばれる宇宙管理者であり、地球を含む太陽系を管理して人類の歴史を見守ってきた。
或る日、ガイアは地球上の人類未来についてのシミュレーションを実施し、その結果は22世紀まで確実に人類が滅亡するシナリオで、何度実施しても滅亡する確率は99.999%であった。
ガイアは人類滅亡シミュレーション結果を中央管理局に提出、事態を重くみた中央管理局はガイアに人類滅亡の回避指令を出した。
その指令内容は地球人類の歴史改変で、現代地球とは別のパラレルワールド上に存在するもう一つの地球に干渉して歴史改変するものであった。
ガイアが取った歴史改変方法は、国家丸ごと転移するもので転移する国家は何と現代日本であり、その転移先は太平洋戦争開戦1年前の日本で、そこに国土ごと上書きするというものであった。
その転移先で日本が世界各国と開戦し、そこで起こる様々な出来事を超人的な能力を持つ女神と天使達の手助けで日本が覇権国家になり、人類滅亡を回避させて行くのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる