210 / 247
終章
204-カルラ星系攻略戦(後編)
しおりを挟む
カルラ星系に、第二の刺客が迫る。
それは、亜空間の海面下で静かに浮いていた。
その名は、オレブ=ザラク。
ドローン指揮機体である。
周囲には、夥しい数のクロス級水雷戦艦が付随している。
『個体名:ラヴェンカ。指揮官呼称:ズィーヴェン。貴官の今作戦での役割が、貴官の今後の評価に関わる。シン艦隊総司令は貴官の活躍に期待している。それを裏切る事の無いように...』
「ハイハイ。分かってますよーっと」
そのブリッジでは、一人の女性が、壁面に嵌め込まれた赤いランプと会話していた。
豊かな胸部を持ちながら、その身体は毛に覆われ、頭には頭髪に紛れた垂れ耳が二対、付いていた。
ルルやネムのような獣人よりもずっと原初の獣人に近い、『始祖』である。
対するは、オーロラやコバルトとも全く異なる全自動戦術AI、『メメントモリ』。
「どうせあたしの仕事は、ハイハイ言うだけでしょ」
『それが何より重要だと理解してください』
「はーい」
『メメントモリ』は、オーロラやコバルトのような、『シン』という司令塔を必要としない完全な指揮型AIである。
その代わり、作戦の指揮においては常に「承諾」を行う知的生命体が必要になる。
それには、投薬に耐え、それによって24時間以上起きていられ、尚且つ忠誠心の高い人間が必要になるのだ。
『これより、浮上し作戦を開始します』
「承認」
オレブ=ザラクは、境界面に現れたプローブによる結節点めがけて船を動かした。
そして、結節点を超えて艦隊は通常空間へと浮上する。
『機関出力をワープドライブへと切り替え...』
「承認」
亜空間での航行ではワープドライブは使用出来ない。
それ故に、亜空間内を航行する船は全て、ディメンジョンドライブを搭載して、ワープドライブと切り替えて使用しているのだ。
『ワープを行います』
「承認」
そして、オレブ=ザラクの率いる艦隊は、カルラⅡの惑星軌道上へとワープアウトする。
王国艦隊の射程距離外であり、しかしオレブ=ザラク艦隊の射程圏内である。
『巡航ミサイルの射程圏内ですが、総数を減らすため”バアルの慈雨”を使用することを提案』
「しょうに~ん」
『実行します』
オレブ=ザラクの「顎」が開き、そこから無数の光子魚雷が飛び出した。
まるで吹き付ける吹雪のような速度で王国艦隊内部に浸透した魚雷は、内包した反物質エネルギーを解放する。
反物質と光子エネルギーが反応する事で、擬似的にA.O.Iのような効果を生み出し、王国艦のシールドや装甲を削り取って行く。
光子魚雷を覆っているのはP.O.Dであり、シールドを削り切り、光子が炸裂、その後装甲に直撃する形で爆発が起こる。
そして、シールドを持たない背後のステーションは.....
「何だこれは...ぎゃああああ――――」
「死にたくない、死にたくな――――」
「息が出来な....ごぼっ.....」
ドックにいた艦船にいた避難民を容赦なくバアルの慈雨が蹂躙し、通路に押し掛けていた民間人たちは、廊下が破壊されたことでゴミのように外へと吸い出され、窒息死した。
『投射終了。これ以上の投射は無意味と判断。全艦隊に攻撃指令を出すことを提案します』
「承認~はー、ダル....」
『左翼、右翼に分かれ、プライマリA・B・C・Dに対して各個巡航ミサイルにて攻撃開始。......こちらも”マグパイ”を展開することを提案します』
「承認」
『了解』
オレブ=ザラクの左右から、全百二十機の多機能型ドローン「マグパイ」が展開され、ミサイルの雨霰を回避しながら王国艦隊へと襲い掛かる。
時折王国艦のレーザーが当たるものの、直撃ではないうえマグパイにもシールドがあるため無効化される。
到達した巡航ミサイルの第一波が、王国艦隊を混乱の極致へと陥れる。
「バアルの慈雨」を受けてシールドを失っていた王国艦隊。
その装甲にミサイルの鋭い弾頭が突き刺さり、衝撃で起爆する。
『敵戦力の四割の壊滅を確認、更なる追撃を提案します』
「承認~♪」
その頃、ブリッジでは。
ズィーヴェンがケーキを食べながら頷いていた。
オレブ=ザラクの上部に設置されたレールガンから放たれた砲弾が、艦隊旗艦に精密射撃を行う。
「ねぇ」
『何でしょうか』
「お茶が切れたんだけどー、ダルいわ~」
『直ちにご用意します』
「あと、あたしの事は御嬢様って呼んでよね」
『承知いたしました、御嬢様』
メメントモリはズィーヴェンの我儘に対して何か思う事もなく、淡々とメモリーの書き換えを行う。
その裏で、数万もの虐殺が同時に起きていたのであった。
それは、亜空間の海面下で静かに浮いていた。
その名は、オレブ=ザラク。
ドローン指揮機体である。
周囲には、夥しい数のクロス級水雷戦艦が付随している。
『個体名:ラヴェンカ。指揮官呼称:ズィーヴェン。貴官の今作戦での役割が、貴官の今後の評価に関わる。シン艦隊総司令は貴官の活躍に期待している。それを裏切る事の無いように...』
「ハイハイ。分かってますよーっと」
そのブリッジでは、一人の女性が、壁面に嵌め込まれた赤いランプと会話していた。
豊かな胸部を持ちながら、その身体は毛に覆われ、頭には頭髪に紛れた垂れ耳が二対、付いていた。
ルルやネムのような獣人よりもずっと原初の獣人に近い、『始祖』である。
対するは、オーロラやコバルトとも全く異なる全自動戦術AI、『メメントモリ』。
「どうせあたしの仕事は、ハイハイ言うだけでしょ」
『それが何より重要だと理解してください』
「はーい」
『メメントモリ』は、オーロラやコバルトのような、『シン』という司令塔を必要としない完全な指揮型AIである。
その代わり、作戦の指揮においては常に「承諾」を行う知的生命体が必要になる。
それには、投薬に耐え、それによって24時間以上起きていられ、尚且つ忠誠心の高い人間が必要になるのだ。
『これより、浮上し作戦を開始します』
「承認」
オレブ=ザラクは、境界面に現れたプローブによる結節点めがけて船を動かした。
そして、結節点を超えて艦隊は通常空間へと浮上する。
『機関出力をワープドライブへと切り替え...』
「承認」
亜空間での航行ではワープドライブは使用出来ない。
それ故に、亜空間内を航行する船は全て、ディメンジョンドライブを搭載して、ワープドライブと切り替えて使用しているのだ。
『ワープを行います』
「承認」
そして、オレブ=ザラクの率いる艦隊は、カルラⅡの惑星軌道上へとワープアウトする。
王国艦隊の射程距離外であり、しかしオレブ=ザラク艦隊の射程圏内である。
『巡航ミサイルの射程圏内ですが、総数を減らすため”バアルの慈雨”を使用することを提案』
「しょうに~ん」
『実行します』
オレブ=ザラクの「顎」が開き、そこから無数の光子魚雷が飛び出した。
まるで吹き付ける吹雪のような速度で王国艦隊内部に浸透した魚雷は、内包した反物質エネルギーを解放する。
反物質と光子エネルギーが反応する事で、擬似的にA.O.Iのような効果を生み出し、王国艦のシールドや装甲を削り取って行く。
光子魚雷を覆っているのはP.O.Dであり、シールドを削り切り、光子が炸裂、その後装甲に直撃する形で爆発が起こる。
そして、シールドを持たない背後のステーションは.....
「何だこれは...ぎゃああああ――――」
「死にたくない、死にたくな――――」
「息が出来な....ごぼっ.....」
ドックにいた艦船にいた避難民を容赦なくバアルの慈雨が蹂躙し、通路に押し掛けていた民間人たちは、廊下が破壊されたことでゴミのように外へと吸い出され、窒息死した。
『投射終了。これ以上の投射は無意味と判断。全艦隊に攻撃指令を出すことを提案します』
「承認~はー、ダル....」
『左翼、右翼に分かれ、プライマリA・B・C・Dに対して各個巡航ミサイルにて攻撃開始。......こちらも”マグパイ”を展開することを提案します』
「承認」
『了解』
オレブ=ザラクの左右から、全百二十機の多機能型ドローン「マグパイ」が展開され、ミサイルの雨霰を回避しながら王国艦隊へと襲い掛かる。
時折王国艦のレーザーが当たるものの、直撃ではないうえマグパイにもシールドがあるため無効化される。
到達した巡航ミサイルの第一波が、王国艦隊を混乱の極致へと陥れる。
「バアルの慈雨」を受けてシールドを失っていた王国艦隊。
その装甲にミサイルの鋭い弾頭が突き刺さり、衝撃で起爆する。
『敵戦力の四割の壊滅を確認、更なる追撃を提案します』
「承認~♪」
その頃、ブリッジでは。
ズィーヴェンがケーキを食べながら頷いていた。
オレブ=ザラクの上部に設置されたレールガンから放たれた砲弾が、艦隊旗艦に精密射撃を行う。
「ねぇ」
『何でしょうか』
「お茶が切れたんだけどー、ダルいわ~」
『直ちにご用意します』
「あと、あたしの事は御嬢様って呼んでよね」
『承知いたしました、御嬢様』
メメントモリはズィーヴェンの我儘に対して何か思う事もなく、淡々とメモリーの書き換えを行う。
その裏で、数万もの虐殺が同時に起きていたのであった。
0
お気に入りに追加
24
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ゲート0 -zero- 自衛隊 銀座にて、斯く戦えり
柳内たくみ
ファンタジー
20XX年、うだるような暑さの8月某日――
東京・銀座四丁目交差点中央に、突如巨大な『門(ゲート)』が現れた。
中からなだれ込んできたのは、見目醜悪な怪異の群れ、そして剣や弓を携えた謎の軍勢。
彼らは何の躊躇いもなく、奇声と雄叫びを上げながら、そこで戸惑う人々を殺戮しはじめる。
無慈悲で凄惨な殺戮劇によって、瞬く間に血の海と化した銀座。
政府も警察もマスコミも、誰もがこの状況になすすべもなく混乱するばかりだった。
「皇居だ! 皇居に逃げるんだ!」
ただ、一人を除いて――
これは、たまたま現場に居合わせたオタク自衛官が、
たまたま人々を救い出し、たまたま英雄になっちゃうまでを描いた、7日間の壮絶な物語。

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します
あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。
異世界パルメディアは、大魔法文明時代。
だが、その時代は崩壊寸前だった。
なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。
マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。
追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。
ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。
世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。
無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。
化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。
そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。
当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。
ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。

Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~
味のないお茶
ファンタジー
Sランクパーティのリーダーだったベルフォードは、冒険者歴二十年のベテランだった。
しかし、加齢による衰えを感じていた彼は後人に愛弟子のエリックを指名し一年間見守っていた。
彼のリーダー能力に安心したベルフォードは、冒険者家業の引退を決意する。
故郷に帰ってゆっくりと日々を過しながら、剣術道場を開いて結婚相手を探そう。
そう考えていたベルフォードだったが、周りは彼をほっておいてはくれなかった。
これはスローライフがしたい凄腕のおっさんと、彼を慕う人達が織り成す物語。

ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。
夜兎ましろ
ファンタジー
高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。
ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。
バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。
本当の仲間ではないと勇者パーティから追放されたので、銀髪ケモミミ美少女と異世界でスローライフします。
なつめ猫
ファンタジー
田中一馬は、40歳のIT会社の社員として働いていた。
しかし、異世界ガルドランドに魔王を倒す勇者として召喚されてしまい容姿が17歳まで若返ってしまう。
探しにきた兵士に連れられ王城で、同郷の人間とパーティを組むことになる。
だが【勇者】の称号を持っていなかった一馬は、お荷物扱いにされてしまう。
――ただアイテムボックスのスキルを持っていた事もあり勇者パーティの荷物持ちでパーティに参加することになるが……。
Sランク冒険者となった事で、田中一馬は仲間に殺されかける。
Sランク冒険者に与えられるアイテムボックスの袋。
それを手に入れるまで田中一馬は利用されていたのだった。
失意の内に意識を失った一馬の脳裏に
――チュートリアルが完了しました。
と、いうシステムメッセージが流れる。
それは、田中一馬が40歳まで独身のまま人生の半分を注ぎこんで鍛え上げたアルドガルド・オンラインの最強セーブデータを手に入れた瞬間であった!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる