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シーズン8-オルトス王国侵攻編
197-六大指揮官総力戦
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その頃。
集結して三十六万になったNoa-Tun連邦軍は、ジャンプインしてきた王国艦隊六十万と交戦していた。
主力艦を三隻も失った時点で、王国はもう引くに引けなくなったのだろう。
そして、戦場には範囲型ワープ妨害器が無数に展開され、艦隊を足止めしていた。
『”アレ”を使います! 時間稼ぎを!』
戦場の通信に、ツヴァイの声が入る。
そして、それを聞いたのは。
『任せます、ツヴァイ!』
アインスであった。
獣人たちの乗る艦載機編隊を率い、対空砲火の中をタウミエルで駆け抜ける。
機銃掃射でシールドごと装甲を貫き艦船を撃沈させ、バレルロールで対空射撃を躱して加速する。
「ぐッ.....!」
覚醒することでGに耐えることのできる獣人とは違い、アインスは弱い。
たとえ流れる血が高貴であっても、人間と変わらないからだ。
しかし、
『ぐわッ!? 被弾しました、アインス様、星空の帝王様、万歳!』
また、一機が落ちる。
アインスはそれに、少しの悲しみを覚えた。
指揮官として彼女は冷徹でなければならない。
しかし――――
「(私は、この悲しみを忘れてはならない!)――――指揮権を移譲! ラタット、お前はエースだろう、この場を乗り切って見せよ」
『はっ! この命に替えましても!』
指揮権を移譲したアインスは、タウミエルを一挙に加速させ敵艦隊の内部に斬り込む。
ランダムな回避運動で巧みに射撃を回避し、ときにはシールドで受けながら、旗艦の直上に躍り出た。
「刺し違えてでも!」
アインスはレバーを引く。
『変形』という文字が、マウントディスプレイに浮かび、タウミエルは人型になって旗艦の甲板に着地する。
巨大な甲板だ、艦載機サイズのタウミエルですら、十分なスペースがあると感じるほどだ。
変形したタウミエルは、両腕の砲を旗艦の艦橋に向け、撃った。
それらはシールドを貫通し、艦橋内部を焼き払う。
すぐに再変形したタウミエルは、上昇軌道のまま艦隊の真上に抜けようとする。
だが、そこに射撃が集中する。
「見誤った.....ッ」
『オレもいる! 諦めるな!』
直後。
艦隊のど真ん中に飛び込んだオギエルが、ECMコラプサーを起動する。
センサー類を焼かれた艦隊は、滅茶苦茶な方向へ撃ち始め、味方と相打ちになる。
「ダメです、ドライ!」
『大丈夫です、アインス殿! オギエルは....そんなにヤワじゃないですから!』
オギエルを追う艦載機編隊を、近接信管のスマートミサイルで攪乱し、四基の小型レーザー砲で仕留めていく。
そして、エナジーバニッシュフィールドを王国艦隊の内部にばら撒きながら退散していった。
『準備出来ました、アインス様、退避を!』
「ええ!」
タウミエルは内部に搭載されたワープドライブで味方陣に戻る。
直後、王国艦隊の上下左右側から同時に出現した爆撃艦隊が、一斉にボムを投射した。
爆撃艦隊はワープアウトするまでに撃たれて目減りしていくものの、数百のボムのうち八割は爆発し、王国艦隊に甚大な被害を与えた。
一瞬で四十万以上の艦船が吹き飛び、指揮系統が混乱している中、指揮官達が動き出す。
「ラタット、指揮権返上! 全機、敵艦隊前衛と、艦載機編隊を叩きます!」
華麗なアウトサイドループを披露したタウミエルは、そのまま帰還中の艦載機編隊と合流、敵陣へと再び斬り込む。
その眼下では、アボルダージュ・シップ――――即ち、衝角突撃艦が艦隊の内部から出てきていた。
その名を、オリンピアス。
初速で音速に達したそれらは、王国艦隊の内部に突き刺さり、幾つもの船を衝角のサビへと変えた。
だが、それだけではない。
オリンピアスに搭載されているのは、全80基の突入ポッドランチャーである。
敵艦隊に向けて放たれた突入ポッドは、シールドを突き抜けて装甲に突き刺さり、それを破壊して内部へと「ワームⅡ」の群体50機を送り込む。
冷徹にして正確無比な殺戮兵器50機は、敵艦内で暴れまわり、非戦闘員や戦闘員を区別なく平等に射殺していく。
....そして。
ツヴァイの乗るイェソドは、旗艦内部でワームⅡ突入隊500機と共に戦闘員を殺戮して回っていた。
最早艦隊戦の体裁は完全に崩壊したも同然だが、指揮官達の猛攻は止まらない。
『ほゥら、悲鳴の一つでも上げたらどうですか?! 貴様たちゴミ虫のような王国人にも! 死の瞬間には叫び声をあげられる栄誉があるのですよ!?』
ダァトは第二形態――――即ち、変形して四脚の形態となっており、甲板を渡り歩いては内部に斬り込み、その両手にある単分子ブレードで乗員を虐殺していた。
わざと腕や足から落とし、それを甚振って楽しんでいるのだ。
『ああああァ! いいですねぇ~~~ッ! 王国人なんて生きる価値のないゴミ共の悲鳴はッ! 耳障りですが、嫌いではありませんよ、私は!』
その通信にドン引きしつつも、フュンフとゼクスが動いていた。
亜空間の中でサタリエル率いるレッドシャーク艦隊が、異次元から一斉に魚雷を打ち上げる。
魚雷は艦隊下部から猛然と襲い掛かり、王国艦隊の中央部、戦艦などが位置するエリアにて大きな損害を与えた。
『いって、ゼクス』
『ん、ありがと』
そして。
シールドと装甲を損傷した艦隊は、ホドの格好の獲物である。
亜空間から飛び出したホドが、レーザーライフルの連射で巡洋艦を沈め、その爆炎に紛れてレーザーブレードを起動、起動すると同時にバレルロールをしながら、粒子の斬撃を広範囲にばらまく。
斬撃は装甲を冗談のように斬り捌き、船体を真っ二つにされた戦艦はそのまま沈黙、内部の乗組員が外へと放り出されていく。
『....虫みたい』
『見たことないくせに...』
『あるよ、シンさまが見せてくれたの』
ホドはそのまま敵陣から離脱して、亜空間へと潜るのであった。
早期に旗艦を失い、攪乱工作により戦力の半数を無力化、その後の大規模攻撃で艦隊の半分以上をロスト、一気に攻勢に出たNoa-Tun連邦艦隊によって、王国艦隊はその数を五万にまで減らし、ワープ妨害の範囲から何とか逃れる事が出来た二万のみがジャンプドライブにて王国へと帰艦するのであった。
集結して三十六万になったNoa-Tun連邦軍は、ジャンプインしてきた王国艦隊六十万と交戦していた。
主力艦を三隻も失った時点で、王国はもう引くに引けなくなったのだろう。
そして、戦場には範囲型ワープ妨害器が無数に展開され、艦隊を足止めしていた。
『”アレ”を使います! 時間稼ぎを!』
戦場の通信に、ツヴァイの声が入る。
そして、それを聞いたのは。
『任せます、ツヴァイ!』
アインスであった。
獣人たちの乗る艦載機編隊を率い、対空砲火の中をタウミエルで駆け抜ける。
機銃掃射でシールドごと装甲を貫き艦船を撃沈させ、バレルロールで対空射撃を躱して加速する。
「ぐッ.....!」
覚醒することでGに耐えることのできる獣人とは違い、アインスは弱い。
たとえ流れる血が高貴であっても、人間と変わらないからだ。
しかし、
『ぐわッ!? 被弾しました、アインス様、星空の帝王様、万歳!』
また、一機が落ちる。
アインスはそれに、少しの悲しみを覚えた。
指揮官として彼女は冷徹でなければならない。
しかし――――
「(私は、この悲しみを忘れてはならない!)――――指揮権を移譲! ラタット、お前はエースだろう、この場を乗り切って見せよ」
『はっ! この命に替えましても!』
指揮権を移譲したアインスは、タウミエルを一挙に加速させ敵艦隊の内部に斬り込む。
ランダムな回避運動で巧みに射撃を回避し、ときにはシールドで受けながら、旗艦の直上に躍り出た。
「刺し違えてでも!」
アインスはレバーを引く。
『変形』という文字が、マウントディスプレイに浮かび、タウミエルは人型になって旗艦の甲板に着地する。
巨大な甲板だ、艦載機サイズのタウミエルですら、十分なスペースがあると感じるほどだ。
変形したタウミエルは、両腕の砲を旗艦の艦橋に向け、撃った。
それらはシールドを貫通し、艦橋内部を焼き払う。
すぐに再変形したタウミエルは、上昇軌道のまま艦隊の真上に抜けようとする。
だが、そこに射撃が集中する。
「見誤った.....ッ」
『オレもいる! 諦めるな!』
直後。
艦隊のど真ん中に飛び込んだオギエルが、ECMコラプサーを起動する。
センサー類を焼かれた艦隊は、滅茶苦茶な方向へ撃ち始め、味方と相打ちになる。
「ダメです、ドライ!」
『大丈夫です、アインス殿! オギエルは....そんなにヤワじゃないですから!』
オギエルを追う艦載機編隊を、近接信管のスマートミサイルで攪乱し、四基の小型レーザー砲で仕留めていく。
そして、エナジーバニッシュフィールドを王国艦隊の内部にばら撒きながら退散していった。
『準備出来ました、アインス様、退避を!』
「ええ!」
タウミエルは内部に搭載されたワープドライブで味方陣に戻る。
直後、王国艦隊の上下左右側から同時に出現した爆撃艦隊が、一斉にボムを投射した。
爆撃艦隊はワープアウトするまでに撃たれて目減りしていくものの、数百のボムのうち八割は爆発し、王国艦隊に甚大な被害を与えた。
一瞬で四十万以上の艦船が吹き飛び、指揮系統が混乱している中、指揮官達が動き出す。
「ラタット、指揮権返上! 全機、敵艦隊前衛と、艦載機編隊を叩きます!」
華麗なアウトサイドループを披露したタウミエルは、そのまま帰還中の艦載機編隊と合流、敵陣へと再び斬り込む。
その眼下では、アボルダージュ・シップ――――即ち、衝角突撃艦が艦隊の内部から出てきていた。
その名を、オリンピアス。
初速で音速に達したそれらは、王国艦隊の内部に突き刺さり、幾つもの船を衝角のサビへと変えた。
だが、それだけではない。
オリンピアスに搭載されているのは、全80基の突入ポッドランチャーである。
敵艦隊に向けて放たれた突入ポッドは、シールドを突き抜けて装甲に突き刺さり、それを破壊して内部へと「ワームⅡ」の群体50機を送り込む。
冷徹にして正確無比な殺戮兵器50機は、敵艦内で暴れまわり、非戦闘員や戦闘員を区別なく平等に射殺していく。
....そして。
ツヴァイの乗るイェソドは、旗艦内部でワームⅡ突入隊500機と共に戦闘員を殺戮して回っていた。
最早艦隊戦の体裁は完全に崩壊したも同然だが、指揮官達の猛攻は止まらない。
『ほゥら、悲鳴の一つでも上げたらどうですか?! 貴様たちゴミ虫のような王国人にも! 死の瞬間には叫び声をあげられる栄誉があるのですよ!?』
ダァトは第二形態――――即ち、変形して四脚の形態となっており、甲板を渡り歩いては内部に斬り込み、その両手にある単分子ブレードで乗員を虐殺していた。
わざと腕や足から落とし、それを甚振って楽しんでいるのだ。
『ああああァ! いいですねぇ~~~ッ! 王国人なんて生きる価値のないゴミ共の悲鳴はッ! 耳障りですが、嫌いではありませんよ、私は!』
その通信にドン引きしつつも、フュンフとゼクスが動いていた。
亜空間の中でサタリエル率いるレッドシャーク艦隊が、異次元から一斉に魚雷を打ち上げる。
魚雷は艦隊下部から猛然と襲い掛かり、王国艦隊の中央部、戦艦などが位置するエリアにて大きな損害を与えた。
『いって、ゼクス』
『ん、ありがと』
そして。
シールドと装甲を損傷した艦隊は、ホドの格好の獲物である。
亜空間から飛び出したホドが、レーザーライフルの連射で巡洋艦を沈め、その爆炎に紛れてレーザーブレードを起動、起動すると同時にバレルロールをしながら、粒子の斬撃を広範囲にばらまく。
斬撃は装甲を冗談のように斬り捌き、船体を真っ二つにされた戦艦はそのまま沈黙、内部の乗組員が外へと放り出されていく。
『....虫みたい』
『見たことないくせに...』
『あるよ、シンさまが見せてくれたの』
ホドはそのまま敵陣から離脱して、亜空間へと潜るのであった。
早期に旗艦を失い、攪乱工作により戦力の半数を無力化、その後の大規模攻撃で艦隊の半分以上をロスト、一気に攻勢に出たNoa-Tun連邦艦隊によって、王国艦隊はその数を五万にまで減らし、ワープ妨害の範囲から何とか逃れる事が出来た二万のみがジャンプドライブにて王国へと帰艦するのであった。
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