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シーズン8-オルトス王国侵攻編

189-『蜂の巣作戦』(中編)

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ストラクチャの至近距離に、Noa-Tun艦隊がワープアウトする。
そのすぐ背後に、主力艦がワープアウトした。

『て、敵襲! 前線基地付近に敵艦隊がワープアウト! 非常警報を発令!』
『主力艦に指令、敵ストラクチャ砲台付近を重点的に砲撃せよ』

主力艦の艦砲が一斉に王国前線基地の砲台を叩き、その手前でシールドに阻まれる。
しかし、シールドは明滅し、今にも崩壊寸前といった様子であった。
これではたまらないといった様子で、基地から小型艦隊が出現する。

「コンチェルト、スピードウェーブを投下」

インテグリティ艦隊が動き出し、小型艦に接近した直後に発砲する。
その一撃は、小型艦のシールドを突き破り、頭から尾まで貫通して撃沈した。
30隻のインテグリティが一斉に襲い掛かり、最初に出てきた小型艦隊はほぼ全滅した。
撤退する残存艦を支援するように、巡洋艦、巡洋戦艦の艦隊がドックから進み出る。

「インテグリティ艦隊、後退せよ。ミアプラキドゥス艦隊、包囲陣系にて射撃開始。ギャラハッド、前進。ブラックガード、電子戦装備を起動せよ、妨害ドローン投下」
『了解。インテグリティ陣形変更。ミアプラキドゥス、包囲陣系に移行。ギャラハッド、対射撃戦防御陣形に移行、ブラックガード、ギャラハッドに対して一定距離を保持、妨害ドローンは高速旋回行動に移行』

シンの的確な指示と、オーロラによる艦隊の一糸乱れぬ動きはまさに芸術である。
完全な自律統制よりは精度が低いが、人間の敵に対しては有効である。

『ブラックガード、被弾率増加』
「ギャラハッド、ECM起動」
『了解。コンチェルト、シールドエコー展開』
「シールドウェーブを展開しろ、インテグリティを再度突出させろ。B2に指定した対象を優先対象に移行」
『了解』

ブラックガードの被弾が増えたため、被弾したブラックガードは後退してクロケルに装甲修復支援を受ける。
クロケルは装甲/シールドを修復できる戦艦なのだ。

「ヴァーテックス、主力艦と合わせて破壊を続行しろ」
『了解』

ヴァーテックスは攻城戦艦である。
主力艦とほぼ変わらないため取り回しは悪いが...しかし、動かない対物に対しては凶悪な破壊力を持つ。
加えて、戦艦級の強固な装甲が、集中攻撃にも耐えるタフさをヴァーテックスに持たせていた。

『第三装甲、もうもちません! 貫通されます!』
『気密が失われる前に、各員搭乗可能な艦艇・航宙機・シャトルに乗って離脱せよ!』

装甲が破れれば、気密フィールドを失いかけている要塞は気密を保てなくなる。
空いた穴から空気が真空に向かって急速に吸い出され、要塞内に甚大な被害を齎す。
それが起こる前にと、大型要塞の内部から艦船が次々に飛び出す。

「全艦隊、後方に離脱! キルゾーンより離脱せよ!」
『了解!!』

その途端、全ての艦船が主力艦より後方へ離脱を始める。
対象が逃げたことで、指揮系統が混乱中の王国軍はそちらに向けて追撃を始める。
推力を最大にし、獲物を追った。

『アルファ・コール、攻撃形態に変化』

エフェクトスフィアと呼ばれる兵装を使用するため、アルファ・コールの外装が変化する。
艦載機用の低重力滑走路が収納され、二対の影響波生成フィールド発生器が突き出す。

『っ...全艦隊に通達! 今すぐ追撃をやめてワープアウトせよ! 敵の主力艦の外装が変化している! 強力な超兵器の使用の兆候と予測される!』

司令部より、王国艦隊に指令が飛ぶが、基本的に艦船は横滑りワープなど出来ない。
方向を指定し、そちらに向けて指向性を持たせたワープベクトルを生成しなければワープアウトできないのだ。

『攻撃範囲内に想定される敵の総数、全体の26%に相当』
「エフェクトスフィア、まずはワープ妨害! 足を止めろ!」
『了解!』

アルファ・コールの影響波生成フィールド発生器が、赤い光を放つ。
直後、円形に一瞬発生したワープ妨害フィールドが、逃げようとしていた王国艦隊を捕らえた。

「続けてヘル、ECMエフェクトスフィア投下!」

アルファ・コールの陰に隠れていたヘル級軍事力補強旗艦が、その姿を露にする。
エフェクトスフィア生成時のアルファ・コール級に注目を集め、自分もエフェクトスフィア投下の準備を行っていたのだ。
ECMを受けた艦隊のセンサーが乱され、ロックオン機能に障害が出る。
その真上で、何かが煌めいた。

「今だ! グレン-ライカ艦隊、クラスターボム一斉投下!」

迎撃のできない状態で、冷酷に王国艦隊を爆弾が焼き払う。
数百を超える船が、数万を超える命がその一瞬で散った。
爆風で混乱する艦隊の内部に、ワープアウトしてきた別の艦隊が襲撃を行う。
シュナイデン級要撃型フリゲート艦隊である。
同じ要撃型フリゲートのウェーブライナーの上位種に当たる艦船であり、剣による斬撃のように素早く、確実に混乱した艦隊へと迫り、小型艦には単独でとどめを、大型艦には集団でとどめを刺していく。
そして、王国艦隊が統制を取り戻したころには、グレン-ライカ艦隊も、シュナイデン艦隊もいなくなっていた。
そして、撤退中のNoa-Tun主力艦隊に問題が起きた。
アルファ・コールが立ち往生したのだ。

「状況報告」
『エフェクトスフィアの過剰電力使用により、キャパシターが枯渇。推力維持が出来ません』
「分かった、全主力艦隊と、アルファコール以外の護衛艦隊は離脱せよ。直ぐに増援を送る」

主力艦一隻と、護衛が孤立。
これを逃す手はないと、もう一つの意思が動き出す。
それは、カルの子飼いの中隊。
彼らは結果を出すため、悠然とワープアウトする。
そして、姿を現した大艦隊に対して、シンは。

「相変わらず、搦め手に弱いな――――流歌」

目が笑っていない状態のまま、歪んだ笑みを浮かべるのであった。
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