【完結】SFゲームの世界に転移したけど物資も燃料もありません!艦隊司令の異世界宇宙開拓紀

黴男

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シーズン8-オルトス王国侵攻編

170-穿たれた楔

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こうして、集結した艦隊とNoa-Tun連邦艦隊は再度交戦したのだが――――
しかし、救援のない王国軍に襲い掛かったのは、襲撃した艦隊とは全く別のものであった。

『何だこいつらは!』
『シールドが突破、されてっ....うわぁああああああ――――』
『これじゃ持たない!』

艦隊に斬り込み、ただの一撃でシールドごと王国軍の駆逐艦を葬り去るのは、インテグリティ級フリゲート。
アコライトの上位艦種であり、その一撃はシールドに特化した戦艦にすら装甲へのダメージを許してしまうほどだ。
そして、それを援護するのはマータダム級フリゲート。
アローの上位艦種であり、アローほどの射程を持たないが、精度低下を防ぐエンジニアリング的改造を受けたものである。

「これは.......アドアステラ並ですな」

その恐るべき力を目にし、呟いたのはサルート・ムクラム上位士官。
まだ異動後の新入りだった頃に、対帝国戦に参加していた人間であった。
その戦いでは、ある傭兵の乗る巡洋艦「アドアステラ」が帝国相手に猛威を振るった。
主力艦のシールドすら破った一撃を思い出し、サルートは身震いする。

「だが、まだ負けたわけではない。こちらも敵の後衛を削ればよいのだ」
「それで勝てますかな?」
「勝てねば議論に意味はない」

指揮官はそう言い切ったものの、後衛を削るという判断はこの戦場において最も悪手だ。
後衛にはギガス級城塞級戦艦、アポスル級支援大母艦、そして二隻のゼルエル級襲撃型旗艦が控えており、その周囲には夥しい数のドラゴンスレイヤー(ダブルエッジ上位種)とベノムヴァイパー(ヘビーボンド上位種)が随伴している。

『アタック、ディフェンス、スピード、電子戦ウェーブ投下完了。各ナノウェーブ残数981』
『ハーモニックブースト、再発動完了じゃ』

アポスルから発進した軽戦闘機クロスアームと制圧戦闘機ファウヌスが敵の対空砲火を躱しながら敵艦隊に斬り込み、数機で一隻ずつ沈めていく。

「こちらも艦載機を出せ」
『既に展開中です、ただしパイロットが疲弊してます、長くは戦えません!』
「構わん、後衛に肉薄されることだけは防げ!」

連邦側の艦載機編隊は前衛艦隊を一斉に襲撃し、攪乱したのちに撃破していく。
王国側の艦載機編隊も、負けじとこれに襲い掛かるが――――

『こいつら速すぎます! 大体、何だよ、あの機動力! 普通あんなのGで――――』
『バカ、後ろを見ろディース!』
『何を言って...わ、わあああああああっ――――』

獣人の頑強さで無茶が出来、覚醒で更にそれを後押しするクロスアームに苦戦し、背後から迫ってきたファウヌスに撃墜される。
王国を防衛する彼らは、海賊モドキと見下していた編隊に大きく後れを取り、練度ですら負けていた。

『”サクラメント”、エネルギー充填完了』
『撃て』

そして。
肉薄していたフリゲートと編隊が一瞬で退避を完了した。
王国側がそれに気づいたとき、時すでに遅し。
ゼルエルが装備している最終兵器『サクラメント』により、放たれた光線が艦隊に迫る。

『全艦、射線より退避!』
『敵の超エネルギー兵器、分散しています!』

サクラメントは敵艦隊の眼前で『弾け』た。
数百もの光線に分散し、しかしその破壊力を保持したまま数多くの艦艇を残骸へと変えた。
そこに、ギガス級の『アルビオン・メイカー』とアポスル級の『ブラッドイースター:ランサー』が突き刺さり、後衛の旗艦と前哨基地を巻き込んで王国軍の艦隊は壊滅した。

『ぜ、全艦隊、現宙域を離脱せよ!』
『――――逃がすな、オギエル!』

その時、艦隊へと肉薄したオギエルを中心に、300kmの巨大なワープ妨害フィールドが形成される。
艦隊の足が完全に止まったその時、あちこちからワープアウトしてきたプロキオンが追加のインターディクションフィールドを展開し、接近してくるインテグリティを支援した。

『サクラメント、次弾装填完了』
『撃て』

そして再び、悪夢が顕現した。
王国軍の最前線はこうして崩壊し、王国は最初のくさびを打ち込まれた形になった。
生存者が誰もいなくなるまで連邦艦隊は戦闘を続け、残骸のみになった戦場は忘れ去られていくのであった。
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