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シーズン7-対エミド戦線
152-闇夜を照らす極光
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その頃。
ワープトンネルから離脱したルルと、その部下達は、遥か下を飛ぶエミド艦隊を視界に入れていた。
『これより、急降下奇襲を仕掛ける。奴らは近接戦闘こそがもっとも得意とする所。気を付けて戦ってください』
『応!!』
戦闘機隊は、エミド艦の死角である直上より奇襲を仕掛ける。
照準器に敵艦を捉えながら、ルルはシンの言葉を思い出していた。
『奴らは急な衝撃に弱い。インプラントで脳に電極を埋め込まれ、指揮官機の言いなりだからなのだが...とにかく、指揮官機の死角である真上から仕掛ければ、最初の一撃だけは必ず成功させられる。必ず、奴らの機関である特異点部分を狙え。接合を破壊すれば、エネルギーの逆爆縮が位相のズレで誤作動を引き起こして自爆するからな』
何を言っているかルルにはさっぱりだったが、とにかくエミド艦の露出した黒い球体を撃てばいいと分かっているので、話は簡単である。
指揮官機さえ撃ち落とせば、他は沈黙する。
『撃て!』
ルルの指示で、編隊は一斉に発砲する。
インデペンデンスには、左右に二つ、スワローエッジ:ウィルには四つ搭載された長い砲身の砲塔。
これには、対シールド装甲貫通型徹甲弾が入っている。
装甲の内側に突き刺さり、爆発で蹂躙する。
そういう兵器である。
目論見通り、指揮官機が炎上し、爆発する。
だが、沈黙したはずのエミド艦の一隻が、P.O.Dで薙ぎ払ってきた。
『!? 回避しなさい!』
『避けられ――――姫様!』
編隊のうち一隻が、P.O.Dによってその機体を焼き切られ、爆発四散する。
通信を通して響いた悲鳴を、ルルは聞かなかったことにした。
何故ならば――――聞いてしまえば、耐えられないからだ。
『旋回! 敵の兵器を振り切りながら射線を合わせなさい!』
ルルは叫ぶが、エミド艦はスワロー・エッジのみを執拗に狙う。
『ルル様! お逃げください!』
『いいから、撃ちなさい、撃って!』
『はっ!』
スワローエッジとインデペンデンスの特殊武装には違いがない。
スワローエッジだけ二門多いだけである。
ルルが逃げている隙に、エミド艦を編隊が取り囲み、射撃を以てシールドを破壊した。
更に砲撃を続け、エミド艦を撃沈する。
例え撃たれていても、反撃せず指揮官機を狙うその不気味さは、その中身を知るルルにはより一層のものとして映った。
「(何故.......)」
シンは教育し、反抗的な者を配下に置くことはある。
しかし、自我を奪ったり、完全に隷属させることはない。
あくまで、教育された者たちは自分の意思で従っているのだ。
「(全てを完全に従えて兵士にするなんて.....シン様なら絶対にやらないはず)」
天空騎士団を、洗脳することもなく雇用するシン。
自分に優しくしてくれたカレンを殺さず、救ってくれたシン。
『エミド艦が追加で来ました!』
『もう好きにはさせません、各個分散し、指揮官機とみられる艦を砲撃開始!』
ルルはスワローエッジを駆り、ワープアウトしたエミド艦隊の援軍に対して追跡を開始するのであった。
『............』
遮蔽状態のラムブレードⅡは、同じく遮蔽状態の爆撃艦とアステロイドベルトに潜んでいた。
狙いは、敵のエミド無人艦隊の本隊。
星系中に分散したエミド艦隊の中でも最も数が多い艦隊が、このアステロイドベルトに一度集結するのだ。
『既にワープ地点は設定済みです。うまくクロスポイントを算出し、攻撃してください』
『.....はい!』
ラムブレードⅡは、シンとオーロラによりワープ能力を大幅に高められている。
仮に逃げ遅れても、妨害を掛けられる前に、もしくはワープ妨害を掛けられたとしても急速に強度を上げて逃げ切れる仕組みになっている。
その代わり、武装は貧弱なままだが。
『来たっ!』
そして。
爆撃艦隊の向いている方向の丁度先に、エミド艦隊がワープアウトしてきた。
『5秒後に遮蔽を解除し、ボムを投射します!』
『了解しました。では、7秒後にワープドライブを起動します』
爆撃艦隊は遮蔽を解く。
遮蔽状態では各種センサーが起動せず、火器管制システムのセーフティが外れないのだ。
『軸線に乗りましたっ、ボム発射!』
電磁加速されたボムが、エミド艦隊に向けて飛翔する。
エミド艦隊は、ボムの威力を些事と認め、脅威になる可能性のあるラムブレード旗艦の艦隊を狙う。
だが、すぐに全ての艦がワープへと突入し、その場から逃げ去る。
ただし、ラムブレードは遮蔽を維持したまま、着弾を確認する。
『敵艦隊の大部分の喪失を確認しました』
『やったぁっ!』
指揮官機を失ったことで、無事、もしくは半壊したエミド艦も沈黙する。
『戦域を離脱します。回収ポイントへ向かってください』
『はいっ!』
ラムブレードⅡは、単騎で回収ポイントへとワープするのであった。
ワープトンネルから離脱したルルと、その部下達は、遥か下を飛ぶエミド艦隊を視界に入れていた。
『これより、急降下奇襲を仕掛ける。奴らは近接戦闘こそがもっとも得意とする所。気を付けて戦ってください』
『応!!』
戦闘機隊は、エミド艦の死角である直上より奇襲を仕掛ける。
照準器に敵艦を捉えながら、ルルはシンの言葉を思い出していた。
『奴らは急な衝撃に弱い。インプラントで脳に電極を埋め込まれ、指揮官機の言いなりだからなのだが...とにかく、指揮官機の死角である真上から仕掛ければ、最初の一撃だけは必ず成功させられる。必ず、奴らの機関である特異点部分を狙え。接合を破壊すれば、エネルギーの逆爆縮が位相のズレで誤作動を引き起こして自爆するからな』
何を言っているかルルにはさっぱりだったが、とにかくエミド艦の露出した黒い球体を撃てばいいと分かっているので、話は簡単である。
指揮官機さえ撃ち落とせば、他は沈黙する。
『撃て!』
ルルの指示で、編隊は一斉に発砲する。
インデペンデンスには、左右に二つ、スワローエッジ:ウィルには四つ搭載された長い砲身の砲塔。
これには、対シールド装甲貫通型徹甲弾が入っている。
装甲の内側に突き刺さり、爆発で蹂躙する。
そういう兵器である。
目論見通り、指揮官機が炎上し、爆発する。
だが、沈黙したはずのエミド艦の一隻が、P.O.Dで薙ぎ払ってきた。
『!? 回避しなさい!』
『避けられ――――姫様!』
編隊のうち一隻が、P.O.Dによってその機体を焼き切られ、爆発四散する。
通信を通して響いた悲鳴を、ルルは聞かなかったことにした。
何故ならば――――聞いてしまえば、耐えられないからだ。
『旋回! 敵の兵器を振り切りながら射線を合わせなさい!』
ルルは叫ぶが、エミド艦はスワロー・エッジのみを執拗に狙う。
『ルル様! お逃げください!』
『いいから、撃ちなさい、撃って!』
『はっ!』
スワローエッジとインデペンデンスの特殊武装には違いがない。
スワローエッジだけ二門多いだけである。
ルルが逃げている隙に、エミド艦を編隊が取り囲み、射撃を以てシールドを破壊した。
更に砲撃を続け、エミド艦を撃沈する。
例え撃たれていても、反撃せず指揮官機を狙うその不気味さは、その中身を知るルルにはより一層のものとして映った。
「(何故.......)」
シンは教育し、反抗的な者を配下に置くことはある。
しかし、自我を奪ったり、完全に隷属させることはない。
あくまで、教育された者たちは自分の意思で従っているのだ。
「(全てを完全に従えて兵士にするなんて.....シン様なら絶対にやらないはず)」
天空騎士団を、洗脳することもなく雇用するシン。
自分に優しくしてくれたカレンを殺さず、救ってくれたシン。
『エミド艦が追加で来ました!』
『もう好きにはさせません、各個分散し、指揮官機とみられる艦を砲撃開始!』
ルルはスワローエッジを駆り、ワープアウトしたエミド艦隊の援軍に対して追跡を開始するのであった。
『............』
遮蔽状態のラムブレードⅡは、同じく遮蔽状態の爆撃艦とアステロイドベルトに潜んでいた。
狙いは、敵のエミド無人艦隊の本隊。
星系中に分散したエミド艦隊の中でも最も数が多い艦隊が、このアステロイドベルトに一度集結するのだ。
『既にワープ地点は設定済みです。うまくクロスポイントを算出し、攻撃してください』
『.....はい!』
ラムブレードⅡは、シンとオーロラによりワープ能力を大幅に高められている。
仮に逃げ遅れても、妨害を掛けられる前に、もしくはワープ妨害を掛けられたとしても急速に強度を上げて逃げ切れる仕組みになっている。
その代わり、武装は貧弱なままだが。
『来たっ!』
そして。
爆撃艦隊の向いている方向の丁度先に、エミド艦隊がワープアウトしてきた。
『5秒後に遮蔽を解除し、ボムを投射します!』
『了解しました。では、7秒後にワープドライブを起動します』
爆撃艦隊は遮蔽を解く。
遮蔽状態では各種センサーが起動せず、火器管制システムのセーフティが外れないのだ。
『軸線に乗りましたっ、ボム発射!』
電磁加速されたボムが、エミド艦隊に向けて飛翔する。
エミド艦隊は、ボムの威力を些事と認め、脅威になる可能性のあるラムブレード旗艦の艦隊を狙う。
だが、すぐに全ての艦がワープへと突入し、その場から逃げ去る。
ただし、ラムブレードは遮蔽を維持したまま、着弾を確認する。
『敵艦隊の大部分の喪失を確認しました』
『やったぁっ!』
指揮官機を失ったことで、無事、もしくは半壊したエミド艦も沈黙する。
『戦域を離脱します。回収ポイントへ向かってください』
『はいっ!』
ラムブレードⅡは、単騎で回収ポイントへとワープするのであった。
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