上 下
158 / 244
シーズン7-対エミド戦線

152-闇夜を照らす極光

しおりを挟む
その頃。
ワープトンネルから離脱したルルと、その部下達は、遥か下を飛ぶエミド艦隊を視界に入れていた。

『これより、急降下奇襲を仕掛ける。奴らは近接戦闘こそがもっとも得意とする所。気を付けて戦ってください』
『応!!』

戦闘機隊は、エミド艦の死角である直上より奇襲を仕掛ける。
照準器に敵艦を捉えながら、ルルはシンの言葉を思い出していた。

『奴らは急な衝撃に弱い。インプラントで脳に電極を埋め込まれ、指揮官機の言いなりだからなのだが...とにかく、指揮官機の死角である真上から仕掛ければ、最初の一撃だけは必ず成功させられる。必ず、奴らの機関である特異点部分を狙え。接合を破壊すれば、エネルギーの逆爆縮が位相のズレで誤作動を引き起こして自爆するからな』

何を言っているかルルにはさっぱりだったが、とにかくエミド艦の露出した黒い球体を撃てばいいと分かっているので、話は簡単である。
指揮官機さえ撃ち落とせば、他は沈黙する。

『撃て!』

ルルの指示で、編隊は一斉に発砲する。
インデペンデンスには、左右に二つ、スワローエッジ:ウィルには四つ搭載された長い砲身の砲塔。
これには、対シールド装甲貫通型徹甲弾が入っている。
装甲の内側に突き刺さり、爆発で蹂躙する。
そういう兵器である。
目論見通り、指揮官機が炎上し、爆発する。
だが、沈黙したはずのエミド艦の一隻が、P.O.Dで薙ぎ払ってきた。

『!? 回避しなさい!』
『避けられ――――姫様!』

編隊のうち一隻が、P.O.Dによってその機体を焼き切られ、爆発四散する。
通信を通して響いた悲鳴を、ルルは聞かなかったことにした。
何故ならば――――聞いてしまえば、耐えられないからだ。

『旋回! 敵の兵器を振り切りながら射線を合わせなさい!』

ルルは叫ぶが、エミド艦はスワロー・エッジのみを執拗に狙う。

『ルル様! お逃げください!』
『いいから、撃ちなさい、撃って!』
『はっ!』

スワローエッジとインデペンデンスの特殊武装には違いがない。
スワローエッジだけ二門多いだけである。
ルルが逃げている隙に、エミド艦を編隊が取り囲み、射撃を以てシールドを破壊した。
更に砲撃を続け、エミド艦を撃沈する。
例え撃たれていても、反撃せず指揮官機を狙うその不気味さは、その中身を知るルルにはより一層のものとして映った。

「(何故.......)」

シンは教育し、反抗的な者を配下に置くことはある。
しかし、自我を奪ったり、完全に隷属させることはない。
あくまで、教育された者たちは自分の意思で従っているのだ。

「(全てを完全に従えて兵士にするなんて.....シン様なら絶対にやらないはず)」

天空騎士団を、洗脳することもなく雇用するシン。
自分に優しくしてくれたカレンを殺さず、救ってくれたシン。

『エミド艦が追加で来ました!』
『もう好きにはさせません、各個分散し、指揮官機とみられる艦を砲撃開始!』

ルルはスワローエッジを駆り、ワープアウトしたエミド艦隊の援軍に対して追跡を開始するのであった。






『............』

遮蔽状態のラムブレードⅡは、同じく遮蔽状態の爆撃艦とアステロイドベルトに潜んでいた。
狙いは、敵のエミド無人艦隊の本隊。
星系中に分散したエミド艦隊の中でも最も数が多い艦隊が、このアステロイドベルトに一度集結するのだ。

『既にワープ地点は設定済みです。うまくクロスポイントを算出し、攻撃してください』
『.....はい!』

ラムブレードⅡは、シンとオーロラによりワープ能力を大幅に高められている。
仮に逃げ遅れても、妨害を掛けられる前に、もしくはワープ妨害を掛けられたとしても急速に強度を上げて逃げ切れる仕組みになっている。
その代わり、武装は貧弱なままだが。

『来たっ!』

そして。
爆撃艦隊の向いている方向の丁度先に、エミド艦隊がワープアウトしてきた。

『5秒後に遮蔽を解除し、ボムを投射します!』
『了解しました。では、7秒後にワープドライブを起動します』

爆撃艦隊は遮蔽を解く。
遮蔽状態では各種センサーが起動せず、火器管制システムのセーフティが外れないのだ。

『軸線に乗りましたっ、ボム発射!』

電磁加速されたボムが、エミド艦隊に向けて飛翔する。
エミド艦隊は、ボムの威力を些事と認め、脅威になる可能性のあるラムブレード旗艦の艦隊を狙う。
だが、すぐに全ての艦がワープへと突入し、その場から逃げ去る。
ただし、ラムブレードは遮蔽を維持したまま、着弾を確認する。

『敵艦隊の大部分の喪失を確認しました』
『やったぁっ!』

指揮官機を失ったことで、無事、もしくは半壊したエミド艦も沈黙する。

『戦域を離脱します。回収ポイントへ向かってください』
『はいっ!』

ラムブレードⅡは、単騎で回収ポイントへとワープするのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜 

八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。 第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。 大和型三隻は沈没した……、と思われた。 だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。 大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。 祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。 ※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています! 面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※ ※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※

Another World〜自衛隊 まだ見ぬ世界へ〜

華厳 秋
ファンタジー
───2025年1月1日  この日、日本国は大きな歴史の転換点を迎えた。  札幌、渋谷、博多の3箇所に突如として『異界への門』──アナザーゲート──が出現した。  渋谷に現れた『門』から、異界の軍勢が押し寄せ、無抵抗の民間人を虐殺。緊急出動した自衛隊が到着した頃には、敵軍の姿はもうなく、スクランブル交差点は無惨に殺された民間人の亡骸と血で赤く染まっていた。  この緊急事態に、日本政府は『門』内部を調査するべく自衛隊を『異界』──アナザーワールド──へと派遣する事となった。  一方地球では、日本の急激な軍備拡大や『異界』内部の資源を巡って、極東での緊張感は日に日に増して行く。  そして、自衛隊は国や国民の安全のため『門』内外問わず奮闘するのであった。 この作品は、小説家になろう様カクヨム様にも投稿しています。 この作品はフィクションです。 実在する国、団体、人物とは関係ありません。ご注意ください。

お兄ちゃんのいない宇宙には住めません!~男装ブラコン少女の宇宙冒険記~

黴男
SF
お兄ちゃんの事が大・大・大好きな少女、黒川流歌’(くろかわるか)は、ある日突然、自分のやっていたゲームの船と共に見知らぬ宇宙へ放り出されてしまう! だけど大丈夫!船はお兄ちゃんがくれた最強の船、「アドアステラ」! 『苦難を乗り越え星々へ』の名の通り、お兄ちゃんがくれた船を守って、必ずお兄ちゃんに会って見せるんだから! 最強無敵のお兄ちゃんに会うために、流歌はカルと名を変えて、お兄ちゃんの脳内エミュレーターを起動する。 そんなブラコン男装少女が、異世界宇宙を舞う物語! ※小説家になろう/カクヨムでも連載しています

未来への転送

廣瀬純一
SF
未来に転送された男女の体が入れ替わる話

ビキニに恋した男

廣瀬純一
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

―異質― 激突の編/日本国の〝隊〟 その異世界を掻き回す重金奏――

EPIC
SF
日本国の戦闘団、護衛隊群、そして戦闘機と飛行場基地。続々異世界へ―― とある別の歴史を歩んだ世界。 その世界の日本には、日本軍とも自衛隊とも似て非なる、〝日本国隊〟という名の有事組織が存在した。 第二次世界大戦以降も幾度もの戦いを潜り抜けて来た〝日本国隊〟は、異質な未知の世界を新たな戦いの場とする事になる―― 大規模な演習の最中に異常現象に巻き込まれ、未知なる世界へと飛ばされてしまった、日本国陸隊の有事官〝制刻 自由(ぜいこく じゆう)〟と、各職種混成の約1個中隊。 そこは、剣と魔法が力の象徴とされ、モンスターが跋扈する世界であった。 そんな世界で手探りでの調査に乗り出した日本国隊。時に異世界の人々と交流し、時に救い、時には脅威となる存在と苛烈な戦いを繰り広げ、潜り抜けて来た。 そんな彼らの元へ、陸隊の戦闘団。海隊の護衛艦船。航空隊の戦闘機から果ては航空基地までもが、続々と転移合流して来る。 そしてそれを狙い図ったかのように、異世界の各地で不穏な動きが見え始める。 果たして日本国隊は、そして異世界はいかなる道をたどるのか。 未知なる地で、日本国隊と、未知なる力が激突する―― 注意事項(1 当お話は第2部となります。ですがここから読み始めても差して支障は無いかと思います、きっと、たぶん、メイビー。 注意事項(2 このお話には、オリジナル及び架空設定を多数含みます。 注意事項(3 部隊単位で続々転移して来る形式の転移物となります。 注意事項(4 主人公を始めとする一部隊員キャラクターが、超常的な行動を取ります。かなりなんでも有りです。 注意事項(5 小説家になろう、カクヨムでも投稿しています。

実はスライムって最強なんだよ?初期ステータスが低すぎてレベルアップが出来ないだけ…

小桃
ファンタジー
 商業高校へ通う女子高校生一条 遥は通学時に仔犬が車に轢かれそうになった所を助けようとして車に轢かれ死亡する。この行動に獣の神は心を打たれ、彼女を転生させようとする。遥は獣の神より転生を打診され5つの希望を叶えると言われたので、希望を伝える。 1.最強になれる種族 2.無限収納 3.変幻自在 4.並列思考 5.スキルコピー  5つの希望を叶えられ遥は新たな世界へ転生する、その姿はスライムだった…最強になる種族で転生したはずなのにスライムに…遥はスライムとしてどう生きていくのか?スライムに転生した少女の物語が始まるのであった。

入れ替われるイメクラ

廣瀬純一
SF
男女の体が入れ替わるイメクラの話

処理中です...