上 下
141 / 226
シーズン6-ビージアイナ戦後

135-A.O.I

しおりを挟む
『こちらコマンダー。全体に通達。ルルの慈悲により、戦闘員だけの殲滅に留める事にした。開戦の一発はマルクトに行わせる』
「了解!」

ラムブレードに乗り、指揮を執っていたネムは、それに頷いた。
直後、空を割いて一発のミサイルが墜ちてきた。

「なんだ、あれは?」
「爆弾か?」
「はっ、あの程度の爆弾で何ができる?」

それは、不格好なパイロンを上下逆さまにして、円筒状のアクリルに蓋をした形をしていた。
アクリルの中には装置があり、その中では紫色の光が輝いていた。

「撃ち落とせ!」

竜たちは、一斉に衝撃波でそれを攻撃した。
だが、シールドを持つそれを破壊することはできない。
そして、

『臨界』

通信回線に、声が響いた。
その声が響いたすぐ後に、それは輝きを発する。
太陽の如き輝きを。

AArrowOOfIIndra、臨界率95%を超過。シールド出力を低下させます』

そして、完全臨界に達したAOIが、起爆した。
ケースとシールドを火球が呑み込み吹き飛ばす。

「こ、これは――――」
「神の火を、操るか......!?」

膨れ上がった火球は、竜族の群れを飲み込む。
それにより、長と呼ばれる竜族は巻き込まれ、蒸発した。

「これは.........!?」
『Arrow Of Indra.......ビージアイナ帝国の残党が使用していたヴァルチェーライナ.....破滅の光を、再利用及びアップグレードしたものだ』

シンの声が響く。

『帝国の各地で採取可能な特殊鉱物、『ビルジアイニウム』は、各種金属を組み合わせ『ビルジース合金』に加工し『RO-P2』ガスと接触させることにより、急速に反応を起こす事が出来る』
『反応は現状の威力では、主力艦級のシールドと装甲を完全に蒸発可能です。反応から5.11秒程度で最大半径200km以内に火球を生成します』
『知るがいい、トカゲ共』

シンの通信の声は、少し震えていた。
ネムは知っていた。
怒っているのだ、彼は。

『俺は神ではない。しかし――――軍団を統べる、王だ! 行け、天空騎士団!』

直後、展開していた編隊が一斉に群れに飛び込んでいく。

「鉄の鳥が来るぞ!」
「撃ち落とせ!」

だが、無駄だ。
シールドに守られた艦載機を、撃ち落とせる訳がない。

『よくも、俺たちの国を襲ってくれたな!』
『ティファナ様を殴った罪! 臓物撒き散らして死ねえぇえ!!』

竜族は二万、天空騎士団は500弱。
だが、有機生命体では、軽戦闘機には通用しない。
空に、紅い花が咲く。

「光の矢? 爆弾? そんなもの、避ければ......!」
『第八編隊、キルゾーンより離脱』
『第六編隊、クラスターミサイルを一斉発射、軸線に合わせなさい』
『了解!!』
『第二編隊、キルゾーンより離脱』
『第一編隊、ガスミサイル発射!』
『了解!』
『第七編隊、キルゾーンより離脱』
『第十一編隊、固定型ナパーム弾頭発射!』

竜族たちは必死に抵抗したが、天空騎士団は”地球では”国際的に使用が禁じられている兵器を、天空騎士団は一斉に使用していた。

『司令官、ルル様が死んでいたらの話ではなかったのですか?』
『お前はハエの掃除にいちいち手で叩いて対処するのか?』

内部に仕込まれた爆弾は、破片手榴弾と同じ構造を持つクラスターミサイル。
神経に作用し、大量に吸引すれば全身が麻痺し、心臓が止まって即死するガスミサイル。
半径45kmのシールドを展開し、内部の空間に燃料を拡散させ、酸素が完全に消失するまで焼き払う固定型ナパーム弾頭。

『”ワームⅡ”も考えていたが、これだけでも十分強力だな』
『そのようですね』
『......ところで、シン司令官』

その時。
通信回線に、ネムの声が入った。

『いま、どこにいるんですか? お城にはいませんよね?』
『ああ――――』

シンは言葉を切る。
彼は、獣人国の城壁の前に立っていた。
草原を吹き抜ける風が、彼の背広を揺らす。

「獣人国の前だ、いい景色だぞ」
『ええっ!?』

彼の前には、竜族の群れがあった。
本隊から分かれ、獣人国を襲撃するために来ていたのだ。

「さあ――――卑怯者どもに、鉄槌を下そう」

シンはそう言って、笑った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

未来に住む一般人が、リアルな異世界に転移したらどうなるか。

kaizi
SF
主人公の設定は、30年後の日本に住む一般人です。 異世界描写はひたすらリアル(現実の中世ヨーロッパ)に寄せたので、リアル描写がメインになります。 魔法、魔物、テンプレ異世界描写に飽きている方、SFが好きな方はお読みいただければ幸いです。 なお、完結している作品を毎日投稿していきますので、未完結で終わることはありません。

天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜 

八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。 第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。 大和型三隻は沈没した……、と思われた。 だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。 大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。 祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。 ※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています! 面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※ ※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※

入れ替われるイメクラ

廣瀬純一
SF
男女の体が入れ替わるイメクラの話

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

劣等生のハイランカー

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ダンジョンが当たり前に存在する世界で、貧乏学生である【海斗】は一攫千金を夢見て探索者の仮免許がもらえる周王学園への入学を目指す! 無事内定をもらえたのも束の間。案内されたクラスはどいつもこいつも金欲しさで集まった探索者不適合者たち。通称【Fクラス】。 カーストの最下位を指し示すと同時、そこは生徒からサンドバッグ扱いをされる掃き溜めのようなクラスだった。 唯一生き残れる道は【才能】の覚醒のみ。 学園側に【将来性】を示せねば、一方的に搾取される未来が待ち受けていた。 クラスメイトは全員ライバル! 卒業するまで、一瞬たりとも油断できない生活の幕開けである! そんな中【海斗】の覚醒した【才能】はダンジョンの中でしか発現せず、ダンジョンの外に出れば一般人になり変わる超絶ピーキーな代物だった。 それでも【海斗】は大金を得るためダンジョンに潜り続ける。 難病で眠り続ける、余命いくばくかの妹の命を救うために。 かくして、人知れず大量のTP(トレジャーポイント)を荒稼ぎする【海斗】の前に不審に思った人物が現れる。 「おかしいですね、一学期でこの成績。学年主席の私よりも高ポイント。この人は一体誰でしょうか?」 学年主席であり【氷姫】の二つ名を冠する御堂凛華から注目を浴びる。 「おいおいおい、このポイントを叩き出した【MNO】って一体誰だ? プロでもここまで出せるやつはいねーぞ?」 時を同じくゲームセンターでハイスコアを叩き出した生徒が現れた。 制服から察するに、近隣の周王学園生であることは割ている。 そんな噂は瞬く間に【学園にヤバい奴がいる】と掲示板に載せられ存在しない生徒【ゴースト】の噂が囁かれた。 (各20話編成) 1章:ダンジョン学園【完結】 2章:ダンジョンチルドレン【完結】 3章:大罪の権能【完結】 4章:暴食の力【完結】 5章:暗躍する嫉妬【完結】 6章:奇妙な共闘【完結】 7章:最弱種族の下剋上【完結】

お兄ちゃんのいない宇宙には住めません!~男装ブラコン少女の宇宙冒険記~

黴男
SF
お兄ちゃんの事が大・大・大好きな少女、黒川流歌’(くろかわるか)は、ある日突然、自分のやっていたゲームの船と共に見知らぬ宇宙へ放り出されてしまう! だけど大丈夫!船はお兄ちゃんがくれた最強の船、「アドアステラ」! 『苦難を乗り越え星々へ』の名の通り、お兄ちゃんがくれた船を守って、必ずお兄ちゃんに会って見せるんだから! 最強無敵のお兄ちゃんに会うために、流歌はカルと名を変えて、お兄ちゃんの脳内エミュレーターを起動する。 そんなブラコン男装少女が、異世界宇宙を舞う物語! ※小説家になろう/カクヨムでも連載しています

INNER NAUTS(インナーノーツ) 〜精神と異界の航海者〜

SunYoh
SF
ーー22世紀半ばーー 魂の源とされる精神世界「インナースペース」……その次元から無尽蔵のエネルギーを得ることを可能にした代償に、さまざまな災害や心身への未知の脅威が発生していた。 「インナーノーツ」は、時空を超越する船<アマテラス>を駆り、脅威の解消に「インナースペース」へ挑む。 <第一章 「誘い」> 粗筋 余剰次元活動艇<アマテラス>の最終試験となった有人起動試験は、原因不明のトラブルに見舞われ、中断を余儀なくされたが、同じ頃、「インナーノーツ」が所属する研究機関で保護していた少女「亜夢」にもまた異変が起こっていた……5年もの間、眠り続けていた彼女の深層無意識の中で何かが目覚めようとしている。 「インナースペース」のエネルギーを解放する特異な能力を秘めた亜夢の目覚めは、即ち、「インナースペース」のみならず、物質世界である「現象界(この世)」にも甚大な被害をもたらす可能性がある。 ーー亜夢が目覚める前に、この脅威を解消するーー 「インナーノーツ」は、この使命を胸に<アマテラス>を駆り、未知なる世界「インナースペース」へと旅立つ! そこで彼らを待ち受けていたものとは…… ※この物語はフィクションです。実際の国や団体などとは関係ありません。 ※SFジャンルですが殆ど空想科学です。 ※セルフレイティングに関して、若干抵触する可能性がある表現が含まれます。 ※「小説家になろう」、「ノベルアップ+」でも連載中 ※スピリチュアル系の内容を含みますが、特定の宗教団体等とは一切関係無く、布教、勧誘等を目的とした作品ではありません。

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。

ファンタジー
〈あらすじ〉 信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。 目が覚めると、そこは異世界!? あぁ、よくあるやつか。 食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに…… 面倒ごとは御免なんだが。 魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。 誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。 やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

処理中です...