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シーズン6-ビージアイナ戦後
128-オイオイあいつら死んだわ
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ルルが居なくなった場所はすぐに特定できた。
落下地点の近くに、大破したスワロー・エッジが煙を吹いていたからだ。
問題は、脱出ポッドがどこにもない事。
「どうするか.........」
『24時間経てば、パイロットスーツの救難信号が自動で発信されますので位置を特定できますが.....』
「それまでに危ないことに巻き込まれていたらどうする?」
『その可能性は十分に考慮していますが.....そもそも、脱出ポッドは最低でも2tはあります。それを持ち去る力がある以上、何か未知の存在が関与している可能性があります』
そうなんだよな.....
衝撃吸収のため、脱出ポッドは2tを超える重量がある。
誰かが持ち去ったにしても、集団の犯行でなければ不可能だ。
であれば、回収地点からそう遠く離れてはいない筈なのだが....
『獣人国に捜索を依頼しますか?』
「いいや。これは俺たちの問題だ、捜索範囲をイルエジータ全土に拡大する。展開可能な小型偵察ドローンを全て展開せよ」
『分かりました』
誰だか知らないが、生かしておけよ。
ルルがもし死んでいたら――――全員、ナパーム弾でもクラスター爆弾でも何でも使って、散々苦しんでから死んでもらうからな。
『地上戦闘の準備をしておきますか?』
「頼む。想定は対ビージアイナ帝国精鋭地上部隊だ」
『把握しました、直ちに編成します』
俺は気を紛らわすべく、想定に想定を重ねる。
人間か? 獣人か? それとも、イルエジータに残存している何かしらの文明の遺構?
分からない、情報が不足どころか何もない。
『現在、スワロー・エッジのブラックボックスを解析中です、何か情報が掴めるかもしれません』
「ああ」
位置情報を見る限り、墜ちる直前にスワロー・エッジは激しい機動を取っていたことがわかる。
何かに追われていたのか、はたまた何かを追っていたのか。
それは、解析が終わるまでは分からない。
俺は、居ても立っても居られない状態で夜を過ごすのであった。
翌日。
獣人国の最前線にて。
三人の兵士が、開拓地の警備をしていた。
「暇だなぁ」
「だなぁ」
「今更獣人国を襲うのなんて、いねーからな」
熊獣人の男が呟き、狼獣人の二人が同意する。
獣人国は拡大を続けているが、獣人を排斥したがる人間が襲ってこない理由は明白だ。
天に広がる巨大な王国、それを統べる最も尊く、恐ろしい王。
星空の王が率いる天使の軍勢が、獣人国を保護しているからだ。
その代わり、獣人国も、神々の尖兵として人材を捧げてはいるものの、かつての人間に奴隷のように使われるのではなく、よい待遇で兵士をやっていると帰還兵から伝えられており、星空の王の人徳の深さが知られていた。
「すげえよなぁ、星空の王様」
「ああ、一夜で天罰を下すなんて」
Noa-Tunの行った軌道砲撃により、各国の城とそこに住まう王は死んだ。
神罰の雷と呼ばれたこの事件以降、各国は獣人から手を引き、国によっては獣人を返還する始末となった。
だからこそ、獣人たちは油断していた。
自分たちの空の上に何が居るかも知らぬ愚か者がいる事を。
「ん....? 何だあれ」
「でかい.....鳥か?」
「違う、なんだ?」
森のはるか向こうから、何かが群れをなして飛んできていた。
それは、彼らの知る天使とは違い、生物的であった。
「見なかったことにするか」
「あ、ああ」
「そうだな」
このまま通り過ぎるだろう、と三人は思っていた。
だが、それらは過ぎ去ることなく、真っすぐに獣人国の国境へと向かってきて、
「――――――――!!」
口を開けて、咆哮した。
その咆哮は衝撃波を伴い、木組みの家や倉庫を破壊した。
「に、逃げるぞ!」
「ああ!」
「獣のなりそこない共に告ぐ!!」
その時、飛んできた竜が叫んだ。
「我らは貴様らの尖兵を捕らえた! 神聖なる空を汚した罪、その血で以て贖うがいい!!」
そして、飛んできた無数の竜が、獣人国に牙を剥いた。
そしてそれを、空から見ている者たちがいた。
「......ほう?」
シンであった。
落下地点の近くに、大破したスワロー・エッジが煙を吹いていたからだ。
問題は、脱出ポッドがどこにもない事。
「どうするか.........」
『24時間経てば、パイロットスーツの救難信号が自動で発信されますので位置を特定できますが.....』
「それまでに危ないことに巻き込まれていたらどうする?」
『その可能性は十分に考慮していますが.....そもそも、脱出ポッドは最低でも2tはあります。それを持ち去る力がある以上、何か未知の存在が関与している可能性があります』
そうなんだよな.....
衝撃吸収のため、脱出ポッドは2tを超える重量がある。
誰かが持ち去ったにしても、集団の犯行でなければ不可能だ。
であれば、回収地点からそう遠く離れてはいない筈なのだが....
『獣人国に捜索を依頼しますか?』
「いいや。これは俺たちの問題だ、捜索範囲をイルエジータ全土に拡大する。展開可能な小型偵察ドローンを全て展開せよ」
『分かりました』
誰だか知らないが、生かしておけよ。
ルルがもし死んでいたら――――全員、ナパーム弾でもクラスター爆弾でも何でも使って、散々苦しんでから死んでもらうからな。
『地上戦闘の準備をしておきますか?』
「頼む。想定は対ビージアイナ帝国精鋭地上部隊だ」
『把握しました、直ちに編成します』
俺は気を紛らわすべく、想定に想定を重ねる。
人間か? 獣人か? それとも、イルエジータに残存している何かしらの文明の遺構?
分からない、情報が不足どころか何もない。
『現在、スワロー・エッジのブラックボックスを解析中です、何か情報が掴めるかもしれません』
「ああ」
位置情報を見る限り、墜ちる直前にスワロー・エッジは激しい機動を取っていたことがわかる。
何かに追われていたのか、はたまた何かを追っていたのか。
それは、解析が終わるまでは分からない。
俺は、居ても立っても居られない状態で夜を過ごすのであった。
翌日。
獣人国の最前線にて。
三人の兵士が、開拓地の警備をしていた。
「暇だなぁ」
「だなぁ」
「今更獣人国を襲うのなんて、いねーからな」
熊獣人の男が呟き、狼獣人の二人が同意する。
獣人国は拡大を続けているが、獣人を排斥したがる人間が襲ってこない理由は明白だ。
天に広がる巨大な王国、それを統べる最も尊く、恐ろしい王。
星空の王が率いる天使の軍勢が、獣人国を保護しているからだ。
その代わり、獣人国も、神々の尖兵として人材を捧げてはいるものの、かつての人間に奴隷のように使われるのではなく、よい待遇で兵士をやっていると帰還兵から伝えられており、星空の王の人徳の深さが知られていた。
「すげえよなぁ、星空の王様」
「ああ、一夜で天罰を下すなんて」
Noa-Tunの行った軌道砲撃により、各国の城とそこに住まう王は死んだ。
神罰の雷と呼ばれたこの事件以降、各国は獣人から手を引き、国によっては獣人を返還する始末となった。
だからこそ、獣人たちは油断していた。
自分たちの空の上に何が居るかも知らぬ愚か者がいる事を。
「ん....? 何だあれ」
「でかい.....鳥か?」
「違う、なんだ?」
森のはるか向こうから、何かが群れをなして飛んできていた。
それは、彼らの知る天使とは違い、生物的であった。
「見なかったことにするか」
「あ、ああ」
「そうだな」
このまま通り過ぎるだろう、と三人は思っていた。
だが、それらは過ぎ去ることなく、真っすぐに獣人国の国境へと向かってきて、
「――――――――!!」
口を開けて、咆哮した。
その咆哮は衝撃波を伴い、木組みの家や倉庫を破壊した。
「に、逃げるぞ!」
「ああ!」
「獣のなりそこない共に告ぐ!!」
その時、飛んできた竜が叫んだ。
「我らは貴様らの尖兵を捕らえた! 神聖なる空を汚した罪、その血で以て贖うがいい!!」
そして、飛んできた無数の竜が、獣人国に牙を剥いた。
そしてそれを、空から見ている者たちがいた。
「......ほう?」
シンであった。
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