111 / 226
シーズン5-ビージアイナ決戦編
105-悠長な会議/内通
しおりを挟む
主力艦が撃破された。
通信が途絶する前に齎されたその通信は、帝国の上層部を大きく揺るがした。
「これは由々しき事態です」
「そんな事は分かっておるわ!!」
皇女の側近であるニフリスは、会議の最初にそう叫んだものの、軍事総括のヴィッピスにそう突っ込まれる形で会議が始まった。
「奴らはただの新興海賊では無かったという事だ...」
「アディンバドルを撃破出来る戦力を持つという事は、低く見積もっても厳しい戦いになるな...」
「既に我々の帝国領は、51%が奴らの領域ですから、もし首都に集結させている主力艦隊が敗れれば、我々は腹を見せて降伏するほかありません」
現在の帝国は、Noa-Tun領域(連絡途絶領域)が51%、辛勝星系が22%、残りが帝国領といった状態であった。
敵対している王国側にその状況を伝えるのも、リスクがあり抱え込むしかない状態である。
「だが、奴らが主力艦を打倒する程の艦船を所有しているとはいえ、所詮は一隻。我らが帝国の誇る四隻の主力艦を前にすれば、ただ震え上がり死を待つほかあるまい」
その時、高位貴族の一人が発言する。
それは軽率とも取れる発言だったが、意外にもそれは主流な考えとして受け止められた。
「そ、そうであるな。奴等の心の支えは一隻しか無い主力艦に過ぎぬ。それを打ち倒して仕舞えば、帝国に恐れをなし逃げ出すであろう」
「所詮はぽっと出の勢力、主力艦一隻動かすのに精鋭の半数をかけておろう、その喪失は無視できぬものの筈」
こうして貴族たちは、Noa-Tunの強力さから目を背けて、首都防衛に切り替える事にした。
彼らの心の支えである主力艦...
攻撃型旗艦級戦艦『ジルストリーク』
空母型旗艦級戦艦『バライエルード』
攻城型旗艦級戦艦『クロムセテラス』
突入型旗艦級戦艦『ビースミルコルド』
それらは、負け知らずの最強の船であり、これらが集まる事で王国をも牽制していた。
そして、主力艦が一堂に集うという事は、どのような船ですら轟沈させられるということもである。
貴族たちが自信を取り戻すには、十分な理由であった。
「......」
その様子を、皇女ディーヴァは物憂げに見ていた。
連邦の実力はこんなものなのだろうか、と。
自分を救ってくれた有能な男シンですらいち指揮官に過ぎない勢力が、主力艦を一隻持っているだけだろうか? と。
だが、軍事においてはディーヴァは何も知らぬ小娘に過ぎない。
下手に口出しをすれば戦局に影響を及ぼすかもしれない。
そう考えて、ディーヴァは沈黙を貫くのだった。
部屋へと戻ったディーヴァはすぐに部屋の隅の鏡台へと向かい、その上部にあしらわれた王家の紋章をずらす。
直後、壁の一部がスライドし、小さな隙間が現れた。
その隙間から、ディーヴァは小さな情報端末を取り出した。
「......確か、20:00丁度じゃったな...」
連邦との時差は丁度12時間のため、ディーヴァは事前にシンと連絡時間を設けていた。
7:00、12:00、15:00、20:00、26:00のどれかである。
このどれかの時間帯に、ディーヴァから連絡を送る。
そうすることでシンが答え、通話が成立するのだ。
『こちらNTF、こちらNTF、暗号を』
「模範者は二度眠らず...です」
『了解です。シン司令官にお繋ぎいたします』
Noa-Tun Federationの略であるNTFという中継を通し、暗号を言うことで初めて接続される。
これは帝国側からのハッキングを防ぎ、不用意な会話によりデーヴァの裏切りがバレる事を不安視したシンの安全策であった。
『久しいな、定期通信か?』
「はい...その、首都に主力艦が集結するようです、もし首都の侵攻戦に参加されるのでしたら、気をつけた方がいいかと」
『分かった。こちらも一つ情報を得た、次の戦闘の旗艦は赤いパーソナルカラーの中型艦だ。それとなく伝えてくれ』
「分かりました、それで...ええと」
『ああ、分かっている。連邦が崩壊した暁には、そちらを訪問するゆえに、騎士にでもしてくれ』
「はい!」
既にディーヴァの中には、謎の騎士シンと女帝ディーヴァのラブストーリーが完成していた。
ノーザン・ライツ連邦主席こそが真の悪だと誤解している彼女は、シンさえ救い出せればそれで良かった。
それが巨大な罠であるとも知らずに。
「が、頑張りましょう」
『ああ』
脳内麻薬で倒れそうになりながら、ディーヴァは通信を切り、素早く通信機を戻して壁を閉じた。
こうして、戦いは互いの真実と嘘が入り混じったものとなっていくのだった。
通信が途絶する前に齎されたその通信は、帝国の上層部を大きく揺るがした。
「これは由々しき事態です」
「そんな事は分かっておるわ!!」
皇女の側近であるニフリスは、会議の最初にそう叫んだものの、軍事総括のヴィッピスにそう突っ込まれる形で会議が始まった。
「奴らはただの新興海賊では無かったという事だ...」
「アディンバドルを撃破出来る戦力を持つという事は、低く見積もっても厳しい戦いになるな...」
「既に我々の帝国領は、51%が奴らの領域ですから、もし首都に集結させている主力艦隊が敗れれば、我々は腹を見せて降伏するほかありません」
現在の帝国は、Noa-Tun領域(連絡途絶領域)が51%、辛勝星系が22%、残りが帝国領といった状態であった。
敵対している王国側にその状況を伝えるのも、リスクがあり抱え込むしかない状態である。
「だが、奴らが主力艦を打倒する程の艦船を所有しているとはいえ、所詮は一隻。我らが帝国の誇る四隻の主力艦を前にすれば、ただ震え上がり死を待つほかあるまい」
その時、高位貴族の一人が発言する。
それは軽率とも取れる発言だったが、意外にもそれは主流な考えとして受け止められた。
「そ、そうであるな。奴等の心の支えは一隻しか無い主力艦に過ぎぬ。それを打ち倒して仕舞えば、帝国に恐れをなし逃げ出すであろう」
「所詮はぽっと出の勢力、主力艦一隻動かすのに精鋭の半数をかけておろう、その喪失は無視できぬものの筈」
こうして貴族たちは、Noa-Tunの強力さから目を背けて、首都防衛に切り替える事にした。
彼らの心の支えである主力艦...
攻撃型旗艦級戦艦『ジルストリーク』
空母型旗艦級戦艦『バライエルード』
攻城型旗艦級戦艦『クロムセテラス』
突入型旗艦級戦艦『ビースミルコルド』
それらは、負け知らずの最強の船であり、これらが集まる事で王国をも牽制していた。
そして、主力艦が一堂に集うという事は、どのような船ですら轟沈させられるということもである。
貴族たちが自信を取り戻すには、十分な理由であった。
「......」
その様子を、皇女ディーヴァは物憂げに見ていた。
連邦の実力はこんなものなのだろうか、と。
自分を救ってくれた有能な男シンですらいち指揮官に過ぎない勢力が、主力艦を一隻持っているだけだろうか? と。
だが、軍事においてはディーヴァは何も知らぬ小娘に過ぎない。
下手に口出しをすれば戦局に影響を及ぼすかもしれない。
そう考えて、ディーヴァは沈黙を貫くのだった。
部屋へと戻ったディーヴァはすぐに部屋の隅の鏡台へと向かい、その上部にあしらわれた王家の紋章をずらす。
直後、壁の一部がスライドし、小さな隙間が現れた。
その隙間から、ディーヴァは小さな情報端末を取り出した。
「......確か、20:00丁度じゃったな...」
連邦との時差は丁度12時間のため、ディーヴァは事前にシンと連絡時間を設けていた。
7:00、12:00、15:00、20:00、26:00のどれかである。
このどれかの時間帯に、ディーヴァから連絡を送る。
そうすることでシンが答え、通話が成立するのだ。
『こちらNTF、こちらNTF、暗号を』
「模範者は二度眠らず...です」
『了解です。シン司令官にお繋ぎいたします』
Noa-Tun Federationの略であるNTFという中継を通し、暗号を言うことで初めて接続される。
これは帝国側からのハッキングを防ぎ、不用意な会話によりデーヴァの裏切りがバレる事を不安視したシンの安全策であった。
『久しいな、定期通信か?』
「はい...その、首都に主力艦が集結するようです、もし首都の侵攻戦に参加されるのでしたら、気をつけた方がいいかと」
『分かった。こちらも一つ情報を得た、次の戦闘の旗艦は赤いパーソナルカラーの中型艦だ。それとなく伝えてくれ』
「分かりました、それで...ええと」
『ああ、分かっている。連邦が崩壊した暁には、そちらを訪問するゆえに、騎士にでもしてくれ』
「はい!」
既にディーヴァの中には、謎の騎士シンと女帝ディーヴァのラブストーリーが完成していた。
ノーザン・ライツ連邦主席こそが真の悪だと誤解している彼女は、シンさえ救い出せればそれで良かった。
それが巨大な罠であるとも知らずに。
「が、頑張りましょう」
『ああ』
脳内麻薬で倒れそうになりながら、ディーヴァは通信を切り、素早く通信機を戻して壁を閉じた。
こうして、戦いは互いの真実と嘘が入り混じったものとなっていくのだった。
0
お気に入りに追加
23
あなたにおすすめの小説
未来に住む一般人が、リアルな異世界に転移したらどうなるか。
kaizi
SF
主人公の設定は、30年後の日本に住む一般人です。
異世界描写はひたすらリアル(現実の中世ヨーロッパ)に寄せたので、リアル描写がメインになります。
魔法、魔物、テンプレ異世界描写に飽きている方、SFが好きな方はお読みいただければ幸いです。
なお、完結している作品を毎日投稿していきますので、未完結で終わることはありません。
天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜
八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。
第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。
大和型三隻は沈没した……、と思われた。
だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。
大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。
祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。
※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています!
面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※
※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
劣等生のハイランカー
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ダンジョンが当たり前に存在する世界で、貧乏学生である【海斗】は一攫千金を夢見て探索者の仮免許がもらえる周王学園への入学を目指す!
無事内定をもらえたのも束の間。案内されたクラスはどいつもこいつも金欲しさで集まった探索者不適合者たち。通称【Fクラス】。
カーストの最下位を指し示すと同時、そこは生徒からサンドバッグ扱いをされる掃き溜めのようなクラスだった。
唯一生き残れる道は【才能】の覚醒のみ。
学園側に【将来性】を示せねば、一方的に搾取される未来が待ち受けていた。
クラスメイトは全員ライバル!
卒業するまで、一瞬たりとも油断できない生活の幕開けである!
そんな中【海斗】の覚醒した【才能】はダンジョンの中でしか発現せず、ダンジョンの外に出れば一般人になり変わる超絶ピーキーな代物だった。
それでも【海斗】は大金を得るためダンジョンに潜り続ける。
難病で眠り続ける、余命いくばくかの妹の命を救うために。
かくして、人知れず大量のTP(トレジャーポイント)を荒稼ぎする【海斗】の前に不審に思った人物が現れる。
「おかしいですね、一学期でこの成績。学年主席の私よりも高ポイント。この人は一体誰でしょうか?」
学年主席であり【氷姫】の二つ名を冠する御堂凛華から注目を浴びる。
「おいおいおい、このポイントを叩き出した【MNO】って一体誰だ? プロでもここまで出せるやつはいねーぞ?」
時を同じくゲームセンターでハイスコアを叩き出した生徒が現れた。
制服から察するに、近隣の周王学園生であることは割ている。
そんな噂は瞬く間に【学園にヤバい奴がいる】と掲示板に載せられ存在しない生徒【ゴースト】の噂が囁かれた。
(各20話編成)
1章:ダンジョン学園【完結】
2章:ダンジョンチルドレン【完結】
3章:大罪の権能【完結】
4章:暴食の力【完結】
5章:暗躍する嫉妬【完結】
6章:奇妙な共闘【完結】
7章:最弱種族の下剋上【完結】
お兄ちゃんのいない宇宙には住めません!~男装ブラコン少女の宇宙冒険記~
黴男
SF
お兄ちゃんの事が大・大・大好きな少女、黒川流歌’(くろかわるか)は、ある日突然、自分のやっていたゲームの船と共に見知らぬ宇宙へ放り出されてしまう!
だけど大丈夫!船はお兄ちゃんがくれた最強の船、「アドアステラ」!
『苦難を乗り越え星々へ』の名の通り、お兄ちゃんがくれた船を守って、必ずお兄ちゃんに会って見せるんだから!
最強無敵のお兄ちゃんに会うために、流歌はカルと名を変えて、お兄ちゃんの脳内エミュレーターを起動する。
そんなブラコン男装少女が、異世界宇宙を舞う物語!
※小説家になろう/カクヨムでも連載しています
転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。
襲
ファンタジー
〈あらすじ〉
信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。
目が覚めると、そこは異世界!?
あぁ、よくあるやつか。
食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに……
面倒ごとは御免なんだが。
魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。
誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。
やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。
日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊
北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる