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シーズン3-大侵攻の序曲
061-獅子身中の虫
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『で、どうされるのですか?』
「どうしようか...」
オーロラの前で、俺は悩んでいた。
いつもの事だ、いつもの事だが...
「資源も燃料も無い! ...だが軍備の増強は必要だ」
強大な敵相手に戦いを挑み、勝利した。
空間の崩壊によって、全ての残骸は問題なく回収できたので、問題はない。
だが、俺が心配しているのはこれからの事だ。
まず、Noa-Tunのあるこの星系...仮にナージャが言っていた「2JZ-GTE」星系と呼ぶとして、この星系にあるアステロイドやアイスベルトを、掘り尽くす可能性があるということ。
『長期的に思考。現在の採掘能力から見て、継続的な作業によっては当星系の試算資源総量を、一年程度で枯渇させてしまう恐れあり。惑星からの資源導入には限界があるため、何かしらの対策を立案する必要がある』
そして、もう一つの悩みは...
俺の隣で淡々と口にする、銀髪の少女である。
勿論、人間では無い。
「ナージャ、対策の立案は可能か?」
『可能。しかしながら、このNoa-Tunのデータベースに記録された情報だけでは、全体的な総量を把握することができない。より詳細な案の試行には、長期にわたる調査を前提とする』
あの後、俺たちはナージャの残骸をバラした。
結果、中から現れたのは、全裸の少女だった。
とんでもない膂力で、俺とオーロラが操る作業ドローンを一蹴し、システムのハッキングを試みたものの、逆に侵蝕されて味方と化した。
『このNoa-Tunに記録されたありとあらゆる人間のデータをぶち込みました!』というオーロラの言葉通り、だいぶ人の話を聞くようになった。
『それから、話を遮る許可を』
「ああ、構わない。なんだ?」
『この義体を洗浄したいが、以前の浴場を利用しても良いのか?』
「ああ、勝手に使っていい」
ナージャのこの身体は、義体に過ぎない。
勿論複製など、今のNoa-Tunのスキルツリーでは不可能だが、意識自体はナージャの本体の中にある。
残骸の状態でよく無事だったと思うが、いずれは本体を取り出してどこかに格納しなければ、ナージャは今度こそ死を迎えるだろう。
そうしないのは、二人目のオーロラとして使えるかもしれないと踏んだからだ。
あとは、ラー・アークなどの技術を、こちらの方式に変換する際の手伝いをさせる予定だ。
『彼女をどうされるおつもりですか? 彼女に恩義や義理といった感情はありません。獅子身中の虫を抱えることになります』
彼女が去った後に、オーロラが尋ねてくる。
「構わない、もし裏切ったとして、大したことは出来ない」
俺は彼女をあくまでシンクタンクとして使うつもりだ。
コマンダーでも、アドミンでも...それどころか、ポーンですら無い。
俺と対等な、しかし頭脳と知識だけは遥かに優れた一人の人間として。
『信頼を頂いているようで、何よりです』
「オーロラは可愛いし、優秀だからな」
ゲーム時代からよく見てたせいで、可愛いという感情もだいぶ薄れたが、それでも最初は可愛いなと思ったものだ。
懐かしい。
『なっ...可愛いなどと...当機にお世辞は無意味です』
「マジなんだがな...」
俺は呟くと、クロトザクの惑星ドルドリークの情報を表示した。
うん、今日も脱出船はいない。
撃墜するしかないので、それが少しだけ心苦しい。
死なないためには、宇宙に出なければいい、頑張ってくれ。
「どうしようか...」
オーロラの前で、俺は悩んでいた。
いつもの事だ、いつもの事だが...
「資源も燃料も無い! ...だが軍備の増強は必要だ」
強大な敵相手に戦いを挑み、勝利した。
空間の崩壊によって、全ての残骸は問題なく回収できたので、問題はない。
だが、俺が心配しているのはこれからの事だ。
まず、Noa-Tunのあるこの星系...仮にナージャが言っていた「2JZ-GTE」星系と呼ぶとして、この星系にあるアステロイドやアイスベルトを、掘り尽くす可能性があるということ。
『長期的に思考。現在の採掘能力から見て、継続的な作業によっては当星系の試算資源総量を、一年程度で枯渇させてしまう恐れあり。惑星からの資源導入には限界があるため、何かしらの対策を立案する必要がある』
そして、もう一つの悩みは...
俺の隣で淡々と口にする、銀髪の少女である。
勿論、人間では無い。
「ナージャ、対策の立案は可能か?」
『可能。しかしながら、このNoa-Tunのデータベースに記録された情報だけでは、全体的な総量を把握することができない。より詳細な案の試行には、長期にわたる調査を前提とする』
あの後、俺たちはナージャの残骸をバラした。
結果、中から現れたのは、全裸の少女だった。
とんでもない膂力で、俺とオーロラが操る作業ドローンを一蹴し、システムのハッキングを試みたものの、逆に侵蝕されて味方と化した。
『このNoa-Tunに記録されたありとあらゆる人間のデータをぶち込みました!』というオーロラの言葉通り、だいぶ人の話を聞くようになった。
『それから、話を遮る許可を』
「ああ、構わない。なんだ?」
『この義体を洗浄したいが、以前の浴場を利用しても良いのか?』
「ああ、勝手に使っていい」
ナージャのこの身体は、義体に過ぎない。
勿論複製など、今のNoa-Tunのスキルツリーでは不可能だが、意識自体はナージャの本体の中にある。
残骸の状態でよく無事だったと思うが、いずれは本体を取り出してどこかに格納しなければ、ナージャは今度こそ死を迎えるだろう。
そうしないのは、二人目のオーロラとして使えるかもしれないと踏んだからだ。
あとは、ラー・アークなどの技術を、こちらの方式に変換する際の手伝いをさせる予定だ。
『彼女をどうされるおつもりですか? 彼女に恩義や義理といった感情はありません。獅子身中の虫を抱えることになります』
彼女が去った後に、オーロラが尋ねてくる。
「構わない、もし裏切ったとして、大したことは出来ない」
俺は彼女をあくまでシンクタンクとして使うつもりだ。
コマンダーでも、アドミンでも...それどころか、ポーンですら無い。
俺と対等な、しかし頭脳と知識だけは遥かに優れた一人の人間として。
『信頼を頂いているようで、何よりです』
「オーロラは可愛いし、優秀だからな」
ゲーム時代からよく見てたせいで、可愛いという感情もだいぶ薄れたが、それでも最初は可愛いなと思ったものだ。
懐かしい。
『なっ...可愛いなどと...当機にお世辞は無意味です』
「マジなんだがな...」
俺は呟くと、クロトザクの惑星ドルドリークの情報を表示した。
うん、今日も脱出船はいない。
撃墜するしかないので、それが少しだけ心苦しい。
死なないためには、宇宙に出なければいい、頑張ってくれ。
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