9 / 247
序章
009-領域隠蔽ユニット防衛戦-前編
しおりを挟む
そして。
完成したのは寄せ集めの防御陣。
一番手前にモルドレッド二隻、その背後にペイロード三隻、更にその背後にスレイプニル七隻が待機している。
スレイプニルは襲撃型戦艦であり、素のEMP耐性が高い。
昔性能がバフされたんで、ユニオンをあげて大量生産したんだが....まぁ。
ナーフの影響で一気にゴミと化して、Noa-Tunのようなストラクチャの倉庫には大量に眠っている。
「まぁ、これで守れなければ....最終兵器の出番だな」
”戦争”において、ストラクチャがただの拠点でない理由は、ストラクチャしか装備できない強力な装備の存在だ。
『太陽フレアの第一波到達まで残り42分です』
「効果があるかは分からないが、周辺宙域に荷電粒子抑制ユニットをばら撒け」
『了解』
太陽風の正体は、荷電粒子や電磁波だ。
本来であればフィールド内を通過するレーザー系列の威力を減衰させるユニットだが、この場合フレアの影響をある程度抑制できるはずだ。
「..............」
『艦隊総司令、緊張していますか?』
「.....嘘だと言えば、安心できるわけでもないな」
『リラックススペースに行かれますか?』
「....いや、いい」
失敗しても、リカバリー案は無数にある。
なに、ちょっと胃の底が抜けるだけだ。
仮に胃を病んでも、居住区を直せば医務室で治せる。
「最終兵器もあるからな、ここまで数日かけてリソースを割いてきた結果を見るだけだ」
『では、対電磁フィールドを展開します』
「ああ、頼む」
Noa-Tunの表面を防御するようにフィールドが発生する。
艦船のフィールドが真球なのに対して、こちらはさながら表面を覆う膜のような感じだ。
『太陽フレアの第一波到達まで、残り8分』
「もうそんなに経ったのか...」
その時、艦内放送が聞こえてきた。
ストラクチャのHPが25%を切った時にドックインすると聞こえてくるやつだ。
『緊急警報。緊急警報。ストラクチャおよび領土に甚大な被害が出る恐れあり。現ストラクチャ内に滞在している職員および戦闘員は、直ちに避難を開始してください。避難経路は、B-2、C-4.........』
あの時俺はNoa-Tunのブリッジで操作をしていたため、この音を聞く事はなかった。
これが、俺とNoa-Tunが歩む新生の、最初の試練なのだ。
『第一波到達まで、残り1分』
「可視化してモニターに投影!」
『了解』
不可視の電磁波が、フィルターを通して実体化しモニターに表示される。
途端に、太陽方面の表示が真っ赤になる。
「おおっと...」
地球にいた頃にこれが襲ってきていたら、まず間違いなく世界中の電子機器が破壊されていただろう。
いや、電子機器の破壊だけじゃ済まない。
人体に甚大な影響を及ぼす規模だ。
「全艦、電磁波防御陣を構築!」
『既に構築済みです、落ち着いてください、艦隊総司令』
「あ、ああ...」
そういえば数分前にも指示を出した。
俺は自分の焦りを自覚して、数秒後に迫る時を待つ。
『到達』
「く...」
デスクの縁を握りしめていた手の感覚がなくなる。
だが、衝撃やモニターにノイズが走るといったことはなく、依然として警報が鳴り響くだけだった。
「状況報告!」
『モルドレッド二隻、パワーコア出力82%まで低下。以下以上なし』
「了解」
何もなかったからと言って、何もしなければ状況は悪化する。
「艦隊のステータスを上部モニターに投影しろ」
『了解』
船のパワーコア、シールド出力のステータスが一覧として表示される。
攻撃ではないのでシールドは気にしなくてもいい。
むしろ、パワーコアとモジュールの消耗によるシールドの効率低下を見るのだ。
「第二波は?」
『22秒後に到達します』
「モルドレッド級のパワーコアはおそらく次の波に耐えられないな...破壊され次第、デコイとして利用しろ」
『了解』
第二波が到達し、警報が響く。
『前面に展開中の荷電粒子抑制ユニットに異常発生、システムからパージし、自爆プロトコルを実行します』
ブリッジからは見えないが、モニターに表示されている展開映像に爆破光が複数確認できた。
「状況報告!」
『モルドレッド級、パワーコア暴走! 機関を停止して宙域に待機させます』
「わかった!」
どうやら、これからが本当の戦いのようだ。
完成したのは寄せ集めの防御陣。
一番手前にモルドレッド二隻、その背後にペイロード三隻、更にその背後にスレイプニル七隻が待機している。
スレイプニルは襲撃型戦艦であり、素のEMP耐性が高い。
昔性能がバフされたんで、ユニオンをあげて大量生産したんだが....まぁ。
ナーフの影響で一気にゴミと化して、Noa-Tunのようなストラクチャの倉庫には大量に眠っている。
「まぁ、これで守れなければ....最終兵器の出番だな」
”戦争”において、ストラクチャがただの拠点でない理由は、ストラクチャしか装備できない強力な装備の存在だ。
『太陽フレアの第一波到達まで残り42分です』
「効果があるかは分からないが、周辺宙域に荷電粒子抑制ユニットをばら撒け」
『了解』
太陽風の正体は、荷電粒子や電磁波だ。
本来であればフィールド内を通過するレーザー系列の威力を減衰させるユニットだが、この場合フレアの影響をある程度抑制できるはずだ。
「..............」
『艦隊総司令、緊張していますか?』
「.....嘘だと言えば、安心できるわけでもないな」
『リラックススペースに行かれますか?』
「....いや、いい」
失敗しても、リカバリー案は無数にある。
なに、ちょっと胃の底が抜けるだけだ。
仮に胃を病んでも、居住区を直せば医務室で治せる。
「最終兵器もあるからな、ここまで数日かけてリソースを割いてきた結果を見るだけだ」
『では、対電磁フィールドを展開します』
「ああ、頼む」
Noa-Tunの表面を防御するようにフィールドが発生する。
艦船のフィールドが真球なのに対して、こちらはさながら表面を覆う膜のような感じだ。
『太陽フレアの第一波到達まで、残り8分』
「もうそんなに経ったのか...」
その時、艦内放送が聞こえてきた。
ストラクチャのHPが25%を切った時にドックインすると聞こえてくるやつだ。
『緊急警報。緊急警報。ストラクチャおよび領土に甚大な被害が出る恐れあり。現ストラクチャ内に滞在している職員および戦闘員は、直ちに避難を開始してください。避難経路は、B-2、C-4.........』
あの時俺はNoa-Tunのブリッジで操作をしていたため、この音を聞く事はなかった。
これが、俺とNoa-Tunが歩む新生の、最初の試練なのだ。
『第一波到達まで、残り1分』
「可視化してモニターに投影!」
『了解』
不可視の電磁波が、フィルターを通して実体化しモニターに表示される。
途端に、太陽方面の表示が真っ赤になる。
「おおっと...」
地球にいた頃にこれが襲ってきていたら、まず間違いなく世界中の電子機器が破壊されていただろう。
いや、電子機器の破壊だけじゃ済まない。
人体に甚大な影響を及ぼす規模だ。
「全艦、電磁波防御陣を構築!」
『既に構築済みです、落ち着いてください、艦隊総司令』
「あ、ああ...」
そういえば数分前にも指示を出した。
俺は自分の焦りを自覚して、数秒後に迫る時を待つ。
『到達』
「く...」
デスクの縁を握りしめていた手の感覚がなくなる。
だが、衝撃やモニターにノイズが走るといったことはなく、依然として警報が鳴り響くだけだった。
「状況報告!」
『モルドレッド二隻、パワーコア出力82%まで低下。以下以上なし』
「了解」
何もなかったからと言って、何もしなければ状況は悪化する。
「艦隊のステータスを上部モニターに投影しろ」
『了解』
船のパワーコア、シールド出力のステータスが一覧として表示される。
攻撃ではないのでシールドは気にしなくてもいい。
むしろ、パワーコアとモジュールの消耗によるシールドの効率低下を見るのだ。
「第二波は?」
『22秒後に到達します』
「モルドレッド級のパワーコアはおそらく次の波に耐えられないな...破壊され次第、デコイとして利用しろ」
『了解』
第二波が到達し、警報が響く。
『前面に展開中の荷電粒子抑制ユニットに異常発生、システムからパージし、自爆プロトコルを実行します』
ブリッジからは見えないが、モニターに表示されている展開映像に爆破光が複数確認できた。
「状況報告!」
『モルドレッド級、パワーコア暴走! 機関を停止して宙域に待機させます』
「わかった!」
どうやら、これからが本当の戦いのようだ。
14
お気に入りに追加
24
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ゲート0 -zero- 自衛隊 銀座にて、斯く戦えり
柳内たくみ
ファンタジー
20XX年、うだるような暑さの8月某日――
東京・銀座四丁目交差点中央に、突如巨大な『門(ゲート)』が現れた。
中からなだれ込んできたのは、見目醜悪な怪異の群れ、そして剣や弓を携えた謎の軍勢。
彼らは何の躊躇いもなく、奇声と雄叫びを上げながら、そこで戸惑う人々を殺戮しはじめる。
無慈悲で凄惨な殺戮劇によって、瞬く間に血の海と化した銀座。
政府も警察もマスコミも、誰もがこの状況になすすべもなく混乱するばかりだった。
「皇居だ! 皇居に逃げるんだ!」
ただ、一人を除いて――
これは、たまたま現場に居合わせたオタク自衛官が、
たまたま人々を救い出し、たまたま英雄になっちゃうまでを描いた、7日間の壮絶な物語。

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します
あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。
異世界パルメディアは、大魔法文明時代。
だが、その時代は崩壊寸前だった。
なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。
マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。
追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。
ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。
世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。
無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。
化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。
そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。
当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。
ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。
本当の仲間ではないと勇者パーティから追放されたので、銀髪ケモミミ美少女と異世界でスローライフします。
なつめ猫
ファンタジー
田中一馬は、40歳のIT会社の社員として働いていた。
しかし、異世界ガルドランドに魔王を倒す勇者として召喚されてしまい容姿が17歳まで若返ってしまう。
探しにきた兵士に連れられ王城で、同郷の人間とパーティを組むことになる。
だが【勇者】の称号を持っていなかった一馬は、お荷物扱いにされてしまう。
――ただアイテムボックスのスキルを持っていた事もあり勇者パーティの荷物持ちでパーティに参加することになるが……。
Sランク冒険者となった事で、田中一馬は仲間に殺されかける。
Sランク冒険者に与えられるアイテムボックスの袋。
それを手に入れるまで田中一馬は利用されていたのだった。
失意の内に意識を失った一馬の脳裏に
――チュートリアルが完了しました。
と、いうシステムメッセージが流れる。
それは、田中一馬が40歳まで独身のまま人生の半分を注ぎこんで鍛え上げたアルドガルド・オンラインの最強セーブデータを手に入れた瞬間であった!

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~
味のないお茶
ファンタジー
Sランクパーティのリーダーだったベルフォードは、冒険者歴二十年のベテランだった。
しかし、加齢による衰えを感じていた彼は後人に愛弟子のエリックを指名し一年間見守っていた。
彼のリーダー能力に安心したベルフォードは、冒険者家業の引退を決意する。
故郷に帰ってゆっくりと日々を過しながら、剣術道場を開いて結婚相手を探そう。
そう考えていたベルフォードだったが、周りは彼をほっておいてはくれなかった。
これはスローライフがしたい凄腕のおっさんと、彼を慕う人達が織り成す物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる