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序章

008-予測された脅威

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それから数日後。
昼飯に冷凍食品のバーガーを頬張っていた俺は、意外な報告を聞いた。

『採掘艦隊が沈黙しました』
「接敵したってことか?」
『いいえ、戦闘の形跡はありませんでした。残存した機器から、高濃度EMP警報が送信されてきました』
「EMP...electromagnetic pulseの略だったか、電磁波だよな?」

意図的に電磁波を放出する攻撃なんか、アレしかないじゃないか。
エコーバースト、自分の船を中心に衝撃波を放出して広範囲にダメージを与えるアレしか...

「やっぱり敵の攻撃じゃないか」
『いいえ、攻撃ではありません。採掘艦隊の近辺には恒星があります』
「おいおい、まさか...」
『太陽フレアによるものかと推測します』

太陽フレアなら、シールドで防御できるはず。
たまたま展開していなかったのか?

「シールドはどうした?」
『申し訳ございません。採掘機の放熱中だったため、シールドの出力を低下させておりました』
「......まぁ、採掘艦隊単体じゃしょうがないか」

既に航路の確保はできており、防衛はドローンが行なっている。
時折りノックスがやってきて、採掘した氷塊を回収して帰っていくだけになっていた。

「だが、その電磁波...今までは放たれなかったんだよな? どうして今更?」
『原因は明確ではありませんが、恒星内での燃焼が急速に活性化している模様。近く、恒星系内に大規模な太陽風が発生し、今から2週間以内にはNoa-Tun近辺にフレアが到達すると思われます』
「当然、シールドはあるよな?」
『はい、ただし...』

俺の目の前に、領域隠蔽ユニットのホログラムが投影される。

『領域隠蔽ユニットには対EMPシールドが存在しないため、こちらで独自に対策を行う必要があります』
「なるほどな」

領域隠蔽ユニットに支障が出れば、この星系の周囲に星間国家が存在している場合星系が発見されてしまう。
正直、未開発の星系っぽいし放置はされるだろうが、万が一俺たちが見つかるとまずい。
戦闘艦がほぼ出払って空のドックしか持たないNoa-Tunでは、まともな戦いができないのだ。

「とりあえず、ドックにある船を壁にするしかないだろうな...」
『はい。2週間以内で建造可能な船はこちらになりますが、フレアに対して有効なものは少ないと思われます』

一覧を見つつ、俺はデザートのチョコペイストもどきを舐める。
確かに、この船だけでは無理だろうな。
修理ベイが治ればもっと大きな船も作れるが、そんな余裕はない。

「いや.........待てよ......?」

その時、脳裏にある案が閃いた。

「......中型艦艇ドックにある船の一覧を頼む。名前の表示はいい、艦種だけだ」
『了解』

オーロラが出した一覧を俯瞰した俺は、ある船を目に止める。

「やっぱりな、修理待ち中のモルドレッド級が二隻だけ残ってる」

修理する金のないやつは、こうやってドックに船を残して金を稼ぎにいくのだ。
今回はそれが役に立った形になる。

「モルドレッド級に、倉庫にある対電磁シールドブースターを装備させてユニットの前に展開する」
『ですが、修理は間に合わないかと...』
「船体の修理はいい。フレアに耐えるまでパワーコアが保てば良いからな」

モルドレッド級は実は、俺の戦略にはあまり合っていない。
こいつらは戦域防衛戦という、ゲーム内のコンテンツに特化した船だったからだ。

「それから、輸送船のペイロードを三隻修理してくれ、こいつらも対EMPジャミングに耐性を持ってる」

電磁防御ユニットがオーバーフローを起こさない限りは、ペイロードは電磁波を防ぐことができる。

「まったく、修理するものばかりだな」

つい苦笑が漏れる。
だが、このまま復旧していけば、いずれは.......
いずれは、平穏な暮らしを送れるはず....多分な。
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