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シーズン3-コライドエッジ奪還編

092-コライドエッジ・初戦闘

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『作戦概要を説明します。耳...もとい、聴覚センサーをかっぽじって聞いてくださいね』

ZENITHが私に言った。
私はそれに、軽く頷く。

「はい」
『本艦はコライドエッジ星系外周部にあるプリオド基地に向かってワープしています。当基地は現在包囲状態にあり、周辺には30程度の艦隊が存在しています。プリオド基地には採掘艦や輸送艦を除けば3隻しか戦闘艦がいないため、戦力にカウントする事はできません...ここまではいいですね?』
「はい」

ZENITHはふん、と鼻を鳴らすような音を立てて、続けた。

『ワープ終了後、本艦から出撃したあなたは、敵の旗艦を直接叩いてください。私たちの艦隊はそれを援護し、周囲の戦闘艦の無力化を行います』
「わかりました」
『戦闘機を展開する案は却下されました。敵のデータが不足している為、弱い戦闘機の展開はできないそうです』
「そうですか」

私が人間でないと蔑視する人なら、「人的資源の削減のため」というだろう。
だが、この艦隊を指揮する指揮官は、全員の中で一番階級の高いジェシカ少佐である。
私を人的資源の削減のために使う事はないだろう。

『では、出撃準備を!』
「はい...クロノス!」

私はさっと顔を上げて、今まで自分がいた場所がどこかを再確認する。
場所はクロノスのコックピットだ。

『おう! 接続開始!』

既にケーブル類は取り付けてあるので、私とクロノスは同調を開始する。
降りてきたバイザーを通して、三面から全面に張り替えられたスクリーンが格納庫の光景を映すのを見る。

「ケイローンはX-MODEにならなくても使えるんでしたよね」
『おう...だけど、性能は落ちるみたいだな』

ケイローンはX-MODE中であれば、大幅に性能を上げることが出来る。
しかし、X-MODEを使わなければただのジェットパック程度である。

「使用できる武装は.....」
『エネルギーライフル、レーザーブレード二つ、プラズマキャノン、対艦ミサイル、レーザー砲.......だな』
「全ての武装をフルに使った場合、エネルギーの持続時間は15分かな」
『クロノスドライブの出力を上げられないか試したんだけどよ、セーフティが厳重すぎて....』

クロノスでも開けられないセーフティ?
それは一体.....と思ったが、そのまえにZENITHから通信が届く。

『Clavis、Chronus。出撃準備は完了しましたか?』
「しました」
『では、滑走路を解放します。ワープ終了と同時に、その加速で離脱してください』
「.....了解」

クロノスの台座が上に向かって移動し始める。
通路の照明が、クロノスの全身を舐めるように照らす。

「......クロノス」
『.....?』
「....人を、殺す覚悟は....」
『.....オレが暴走したとき、散々殺したはずだ』
「...そうですか」

覚悟はできているようで、安心した。
クロノスはエレベーターの終端まで到達し、目の前のゲートが順次開いていく。
そして、誘導灯が手前から奥の――――果てない暗闇、宇宙空間に向けて順番に点灯した。
クロノスの足を固定しているレールは、こうして出撃する際の加速に使われるのだ。

『オレ、前からやってみたい出撃ポーズがあって』
「やればいいのでは?」
『おう!』

右足を前に、左足を奥に。
そして、右手を地面に突いた。

『ワープ終了まで、10秒です』
「スラスター制御は私が」
『いいや、オレがやる。点火ァ!』

ケイローンのスラスターが、一瞬で最大出力まで上がる。
そして、私とクロノスは同時に叫んだ。

「『X-MODE、起動!』」

クロノスのボディが青く変化する。
UIが変化し、HUDに追加で項目が出現する。
今までエネルギー総量の項目が緑(安定)になっていたのが、黄色(不安定)に変化した。
原理は不明だけれど、X-MODE中はバッテリーの性能も上がる。

『ワープ終了まで、5秒』
「発進!」
『発進!』

加速を始めたクロノスは、一瞬で音速を超える。
この宇宙という世界では、音速になったところで大きな影響が及ぶことはない。
宇宙空間に飛び出したクロノスは、翼を広げて飛ぶ。
私は光学レーダーで周囲の状況をチェックする。

「敵総数、進行方向に七」
『X-ブーストを使う!』
「了解」

X-MODEにより、ケイローンの性能は高まった。
だからこそ、フルスロットルの上の性能を出す事が出来る。
ただし、5秒間だけ。
それ以上使うと、ケイローンの内部の....普通のコンデンサーが溶け落ちる。
だから、瞬間的な速度増加に使うのだ。

『うおおお、速いッ!』
「敵艦隊内部に到達します、X-ブーストオフ」
『行くぜ!』

速度を活かして、クロノスは開幕の一撃を放つ。
強化されたエネルギーライフルによって、ラデウル巡洋艦のシールドと装甲を貫通した一撃は、敵艦のエネルギー集中箇所――――つまりは、燃料貯蔵庫に突き刺さり大爆発を引き起こした。

『不明な艦船を確認! こちらは一機落とされた!』
「クロノス、時間がありません」
『...勿論』

敵艦がショートワープで向かってくるだろうから、それまでに七機を片付けなければいけない。
しかし、その程度――――

『朝飯前だぜ!』

盾が変形し、プラズマキャノンが即座に充填される。
クロノスは何の躊躇もなく放った。
戦艦が容易に弾け飛び、中から折れて真っ二つになる。

「撃ってきます!」
『邪魔だ!』

プラズマキャノンを収納したクロノスは、ハンドシールドからエネルギーフィールドを展開してレーザーを防ぐ。
そして、フルオートに切り替えてレーザーライフルを放つ。
秒間五発の勢いで放たれたエネルギー弾は、巡洋艦二隻を吹き飛ばした。

『残りもこれで....』
「敵、追跡ミサイルを発射」
『こっちも対艦ミサイルで勝負だ!』
「....迎撃は!?」
『振り切る!』

残弾が36から30に変化する。
クロノスは撃った直後に、艦隊の外側に向けて飛翔する。

「ミサイルの推進剤は推定8秒間持続します」
『必要ない』

クロノスはプラズマキャノンを発射する。
プラズマ弾のシールドは、私が計算して張り直した。

ミサイル群の中央で爆発したプラズマ弾は、ミサイルの軌道を逸らす。

「チャフを使えばよかったのでは?」
『要らないだろ』

クロノスは艦隊に再突入する。
対艦ミサイルが遅れて戦艦に着弾し、シールドが大きく減衰する。
クロノスは再度戦艦に発砲し、機関部に直撃させて撃沈させた。

『終わりだ!』

クロノスはエネルギーライフルを構えたが、直後に援護射撃が到達し、残っていた駆逐艦をたった二発で撃沈させた。

『....チッ、オレの獲物だったのに....』
「クロノス、次が来ますよ」
『....おう!』

本隊がこっちに向かってくる。
クロノスはそれを聞いて頷き、背後に向かって飛んだ。
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