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シーズン3-コライドエッジ奪還編
091-旗艦グランシオン
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「シークトリアは何をしている?」
ラデウル銀河帝国の前哨基地。
そこには、数百の艦隊が駐留している。
そこで、そう尋ねた者がいた。
「不明です。情報封鎖を行っており、イクティス側の軌道攻撃作戦から続報がありません」
そう返したのは、エラン・ザッパー大佐である。
そして、目の前にいる人間こそが、アルニム・ペドゥン将軍である。
「我々がこうしてコライドエッジを占拠している以上、何かしらのアクションが期待できるはずだが...分からんな、この星系は鉱物資源が豊富の筈、何故取り返しに来ない?」
「先程も言った通り、情報封鎖が行われており、内偵からの報告もございません」
「...そうか」
アルニム将軍は知らなかった。
裏で何が行われているのかを。
敵が何を企んでいるのかを。
だがそれは、戦の常であり...ラデウルは、見逃したたった一つの要素だけで、この戦いに敗北する未来を決定付けたのであった。
私は艦内で、最終チェックを行っていた。
それを行うのは、ラウドの仕事だ。
「電子演算に誤差なし、クラヴィス、新しいテストプログラムはどうだ?」
「良好です、不快感もありません」
「それはよかった」
以前の演算テストプログラムは、身体全身のスキャンの過程で、虫が這いまわるような不快感を感じていたので、ラウドにそれを報告したところ、新しいものに変えてくれたのだ。
『ワタシが五時間掛けて再開発したのです、感謝するべきでは?』
「ありがとうございます、ZENITH」
そして、新たな仲間がもう一人。
新たな旗艦グランシオン特殊作戦仕様の指揮AIである、ZENITHである。
エイペクスを更に改良して、私から解析した人格データをインストールした、次世代AIであるそうだ。
その名に恥じず、とても高圧的なのが玉に瑕だが。
『ただでさえ、航路に遅れが出ているのに.....くっ、人間は非効率過ぎです!』
「ニスル星系で燃料の補給が出来ませんでしたからね....」
二つ前の星系、ニスル星系では海賊の襲撃に遭って燃料庫が破壊されたらしく、艦隊は燃料ブロックの補充が出来なかった。
グランシオンの新型ベルシウム双粒子干渉機関は、強力なワープを可能にするものの......燃料がなければワープはできない。
現在は通常機関で航行を続けていた。
「とはいえ、俺たちは秘密任務ですから....大っぴらに燃料を補給できないのが痛い所ですね」
『二日後にアペロン星系で補給を完了して、そこから一気にコライドエッジまで移動します!』
ZENITHは我慢がならないといった声色で叫ぶ。
私はその間暇なので、クロノスの機体スペックを見直していた。
メイン機関がトリニティコアからC-H-R-O-N-U-Sドライブに換装され、外側のアーマーが変質してステラタイト合金から、未知の物質に変化した。
そして、大気圏離脱用ユニットも.....
『Chiron(ケイローン)。未知の機能も多いですが、頑張って解析しますよ。このワタシがね!』
「.....そうですね」
クロノスは翼を手に入れた。
原理も全く分からない代物で、私のバトルアーマーに装着された重力制御フロートボードより高度な重力制御で飛翔できる。
しかも、ケイローン自体に武装もついていて、その制御システムの構築にも手間取った。
「流石にこれ以上武装は増やせません、制御システムの枠が一杯ですから....」
『やればできる!』
「....無理ですね」
これ以上は性能アップに期待するしかない。
それか、頭部ユニットを前の大型に戻すか。
『......おっと。ラウド・ハイアー中尉、テストが完了しました。誤差は許容範囲内、システム再調整は三日先まで問題ないでしょう』
「了解....もう行っていいですよ、後はこちらでやりますから」
「ありがとうございます」
私は検査室を後にする。
私は戦うのが仕事で、ラウドたちはそのサポートが仕事である。
だから、私は躊躇なくそれを一任する。
「.......あの武器を、人に」
私はそれに、少しの恐怖を覚えた。
ずっとやって来た事だ。
だが、今までクロノスと戦ったのは、殆どがイクティス側の兵器だった。
けれど、今度の敵は――――人間。
それにクロノスは耐えられるだろうか?
私は首都で、少しだけ人を殺した。
でも、あのクロノスに........それが出来るだろうか?
それを考えながら、私は艦内を歩いていくのだった。
ラデウル銀河帝国の前哨基地。
そこには、数百の艦隊が駐留している。
そこで、そう尋ねた者がいた。
「不明です。情報封鎖を行っており、イクティス側の軌道攻撃作戦から続報がありません」
そう返したのは、エラン・ザッパー大佐である。
そして、目の前にいる人間こそが、アルニム・ペドゥン将軍である。
「我々がこうしてコライドエッジを占拠している以上、何かしらのアクションが期待できるはずだが...分からんな、この星系は鉱物資源が豊富の筈、何故取り返しに来ない?」
「先程も言った通り、情報封鎖が行われており、内偵からの報告もございません」
「...そうか」
アルニム将軍は知らなかった。
裏で何が行われているのかを。
敵が何を企んでいるのかを。
だがそれは、戦の常であり...ラデウルは、見逃したたった一つの要素だけで、この戦いに敗北する未来を決定付けたのであった。
私は艦内で、最終チェックを行っていた。
それを行うのは、ラウドの仕事だ。
「電子演算に誤差なし、クラヴィス、新しいテストプログラムはどうだ?」
「良好です、不快感もありません」
「それはよかった」
以前の演算テストプログラムは、身体全身のスキャンの過程で、虫が這いまわるような不快感を感じていたので、ラウドにそれを報告したところ、新しいものに変えてくれたのだ。
『ワタシが五時間掛けて再開発したのです、感謝するべきでは?』
「ありがとうございます、ZENITH」
そして、新たな仲間がもう一人。
新たな旗艦グランシオン特殊作戦仕様の指揮AIである、ZENITHである。
エイペクスを更に改良して、私から解析した人格データをインストールした、次世代AIであるそうだ。
その名に恥じず、とても高圧的なのが玉に瑕だが。
『ただでさえ、航路に遅れが出ているのに.....くっ、人間は非効率過ぎです!』
「ニスル星系で燃料の補給が出来ませんでしたからね....」
二つ前の星系、ニスル星系では海賊の襲撃に遭って燃料庫が破壊されたらしく、艦隊は燃料ブロックの補充が出来なかった。
グランシオンの新型ベルシウム双粒子干渉機関は、強力なワープを可能にするものの......燃料がなければワープはできない。
現在は通常機関で航行を続けていた。
「とはいえ、俺たちは秘密任務ですから....大っぴらに燃料を補給できないのが痛い所ですね」
『二日後にアペロン星系で補給を完了して、そこから一気にコライドエッジまで移動します!』
ZENITHは我慢がならないといった声色で叫ぶ。
私はその間暇なので、クロノスの機体スペックを見直していた。
メイン機関がトリニティコアからC-H-R-O-N-U-Sドライブに換装され、外側のアーマーが変質してステラタイト合金から、未知の物質に変化した。
そして、大気圏離脱用ユニットも.....
『Chiron(ケイローン)。未知の機能も多いですが、頑張って解析しますよ。このワタシがね!』
「.....そうですね」
クロノスは翼を手に入れた。
原理も全く分からない代物で、私のバトルアーマーに装着された重力制御フロートボードより高度な重力制御で飛翔できる。
しかも、ケイローン自体に武装もついていて、その制御システムの構築にも手間取った。
「流石にこれ以上武装は増やせません、制御システムの枠が一杯ですから....」
『やればできる!』
「....無理ですね」
これ以上は性能アップに期待するしかない。
それか、頭部ユニットを前の大型に戻すか。
『......おっと。ラウド・ハイアー中尉、テストが完了しました。誤差は許容範囲内、システム再調整は三日先まで問題ないでしょう』
「了解....もう行っていいですよ、後はこちらでやりますから」
「ありがとうございます」
私は検査室を後にする。
私は戦うのが仕事で、ラウドたちはそのサポートが仕事である。
だから、私は躊躇なくそれを一任する。
「.......あの武器を、人に」
私はそれに、少しの恐怖を覚えた。
ずっとやって来た事だ。
だが、今までクロノスと戦ったのは、殆どがイクティス側の兵器だった。
けれど、今度の敵は――――人間。
それにクロノスは耐えられるだろうか?
私は首都で、少しだけ人を殺した。
でも、あのクロノスに........それが出来るだろうか?
それを考えながら、私は艦内を歩いていくのだった。
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