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シーズン2-シークトリア首都編
084-見舞い
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久々に休暇を貰った私は、入院中のみんなへお見舞いへ行くことにした。
ジェシカやラウドが入院しているのは、シークトリア首都の西部C2エリア。
そこへ私は、一人で向かう。
『アンドロイドのフリをすれば、無料で電車に乗れるのはいいですね』
アンドロイドは荷物扱いのため、そこに紛れ込めば電車に無料で乗れる。
みみっちいとは思うけれど、私の口座は今凍結解除審議中で、ほとんど一文無しなのだ。
給料はまだ出ていないし、手持ちのお金はなるべく残しておきたい。
クロノスがどこからか持ってきた出所不明のお金を使う気にもなれない。
「クラヴィスです、ジェシカ様やラウド様は何号室で入院されていますか?」
『オ待チクダサイ...』
病院に着いた私は、受付のアンドロイドに話しかけ、応答を待つ。
そして、全員五十二階で療養中だとの情報を得た。
最重要のセキュリティが存在する病院では、入館パスのようなものは必要がない。
常にスキャンされていて、武器の所持や攻撃の意思が認められれば、即座に取り押さえられるからだ。
私は直接エレベーターに乗り込み、みんなが居る階まで向かう。
エレベーターから出ると、そこには見知った顔の人間がいた。
確か......整備士の一人だっただろうか?
「Clavis! Clavisじゃないか!」
「お元気でしたか?」
「ああ、何とかね...早速ラウド様の所に案内するよ!」
整備士は、ラウドの部屋の前まで案内してくれた。
去っていく整備士を目で追いながら、私はしばし静止する。
この先にいるのは、自分が堕ちかけた時ですら、自分を信じていてくれた人間の筆頭だ。
そんな人に、私が会う資格はあるのだろうか...?
「誰かいるのか?」
その時、中から声が響いてきた。
もう後戻りはできない。
「私です」
私はタッチパネルに手を触れ、扉を開く。
病室の窓から差し込む光で、一瞬前が見えなくなり...
そして、驚いた表情で固まるラウドがそこにいた。
「無事だったのですね!」
「あー...まあ、そうですね...」
私が駆け寄るが、ラウドは微妙な表情のままだ。
何故だろう、と私が思っていると、ラウドは布団を退けた。
そこには...太ももから先がない右足が見えていた。
「足が...!」
「心配しないでください。生きていれば、いつでもクラヴィスの補佐ができますから」
「足はどうされるのですか?」
「一応、義足になるらしいっすね」
......分かってはいた。
無事、というのが命だけは無事、という意味である事を。
救助が間に合っていれば...否。
爆弾の直撃を受けて、これで済んだ方が奇跡なのだろう。
「よければ、ジェシカ大尉にもお会いしてください」
「無事なのですか?」
「はい、大尉の方は無事です」
複雑な気持ちだ。
だが、ジェシカ大尉が怪我をしていないだけでも、マシなのかもしれない。
「何たって、俺が庇いましたから」
「...!?」
ラウドが、ジェシカ大尉を...?
何でだろう?
「だって、クラヴィスが大切にしている人ですから。怪我でもしたら嫌だな...と思って」
たったそれだけの理由で、足を失ったのか?
私は信じられなかった。
でも、全てが終わった今、私がするべきなのは彼を責める事ではない。
「......ありがとうございます、ラウド」
「大丈夫っす!」
ラウドは最後まで、にこやかにしていた。
私は廊下を歩き、「ジェシカ・クラーク」の表札を探す。
幸いにも、スキャン機能ですぐに発見できた。
ノックして、開けてもいいか尋ねる。
「誰ですか?」
「クラヴィスです、お取り込み中でしたか?」
「どうぞ、入ってください」
私は入室する。
するとそこには、包帯だらけのジェシカ大尉が床に伏していた。
大怪我だとは思うのだが、スキャンする限りでは、熱傷がほとんどのようだ。
「すみません、まだ給料が入っていないので、お見舞い品は持ってきていません」
「私にとっては...貴方が会いにきてくれた事が、一番の喜びですよ。......私たちは大変な目に遭いましたが、あなたも相当酷い目に遭ったと聞きます」
「私は......」
酷い目には遭ったけれど、生命を脅かされる程ではなかった。
せいぜいが殴られたり蹴られたり、整備をしないまま連戦させられたりする程度だ。
「私もほとんど動けないので...丁度、話し相手が欲しかった所です」
「そうですか...」
もう数週間経っているのに動けないということは、相当の傷だ。
ラウドとは違って、医療用の装置で表面の跡は消す事ができるようだが。
「ラウドが庇ってくれたおかげで、酷い火傷だけで済みました。......ですが、ラウドは右足を失って...上官として、情けないばかりです」
「ラウドは、大尉を失うと私が悲しむと考えて、庇ったんです。ですから、悪いのは大尉ではありません」
私が悪い。
だが、庇わなければジェシカ大尉は死んでいたかもしれない。
それは、重い選択だったと私は思う。
「......クラヴィス、一つ。貴方に忠告したい事があります」
「何でしょうか?」
私は、急に重みを増したジェシカ大尉の言葉に耳を傾けた。
「貴方たちは、裏の世界で有名な“王”を、打倒しました。...いえ、打倒ではないかもしれません。ですが、王はあの程度では決して懲りたりはしませんよ。貴方たちは、飾るべき宝物ではなく、求めるべき至宝にランクアップしたわけです」
怖い。
あの王が、どんな手を使ってでも手に入れようとしてくるのが。
けれど、今までのような堕とす方向性ではなさそうなのが、唯一の救いだった。
「肝に銘じます」
「ええ。あなたは、王国軍の実験機。ですが、私には無限の未来が見えますから...頑張ってください」
「分かりました」
私は強く、頷いたのであった。
ジェシカやラウドが入院しているのは、シークトリア首都の西部C2エリア。
そこへ私は、一人で向かう。
『アンドロイドのフリをすれば、無料で電車に乗れるのはいいですね』
アンドロイドは荷物扱いのため、そこに紛れ込めば電車に無料で乗れる。
みみっちいとは思うけれど、私の口座は今凍結解除審議中で、ほとんど一文無しなのだ。
給料はまだ出ていないし、手持ちのお金はなるべく残しておきたい。
クロノスがどこからか持ってきた出所不明のお金を使う気にもなれない。
「クラヴィスです、ジェシカ様やラウド様は何号室で入院されていますか?」
『オ待チクダサイ...』
病院に着いた私は、受付のアンドロイドに話しかけ、応答を待つ。
そして、全員五十二階で療養中だとの情報を得た。
最重要のセキュリティが存在する病院では、入館パスのようなものは必要がない。
常にスキャンされていて、武器の所持や攻撃の意思が認められれば、即座に取り押さえられるからだ。
私は直接エレベーターに乗り込み、みんなが居る階まで向かう。
エレベーターから出ると、そこには見知った顔の人間がいた。
確か......整備士の一人だっただろうか?
「Clavis! Clavisじゃないか!」
「お元気でしたか?」
「ああ、何とかね...早速ラウド様の所に案内するよ!」
整備士は、ラウドの部屋の前まで案内してくれた。
去っていく整備士を目で追いながら、私はしばし静止する。
この先にいるのは、自分が堕ちかけた時ですら、自分を信じていてくれた人間の筆頭だ。
そんな人に、私が会う資格はあるのだろうか...?
「誰かいるのか?」
その時、中から声が響いてきた。
もう後戻りはできない。
「私です」
私はタッチパネルに手を触れ、扉を開く。
病室の窓から差し込む光で、一瞬前が見えなくなり...
そして、驚いた表情で固まるラウドがそこにいた。
「無事だったのですね!」
「あー...まあ、そうですね...」
私が駆け寄るが、ラウドは微妙な表情のままだ。
何故だろう、と私が思っていると、ラウドは布団を退けた。
そこには...太ももから先がない右足が見えていた。
「足が...!」
「心配しないでください。生きていれば、いつでもクラヴィスの補佐ができますから」
「足はどうされるのですか?」
「一応、義足になるらしいっすね」
......分かってはいた。
無事、というのが命だけは無事、という意味である事を。
救助が間に合っていれば...否。
爆弾の直撃を受けて、これで済んだ方が奇跡なのだろう。
「よければ、ジェシカ大尉にもお会いしてください」
「無事なのですか?」
「はい、大尉の方は無事です」
複雑な気持ちだ。
だが、ジェシカ大尉が怪我をしていないだけでも、マシなのかもしれない。
「何たって、俺が庇いましたから」
「...!?」
ラウドが、ジェシカ大尉を...?
何でだろう?
「だって、クラヴィスが大切にしている人ですから。怪我でもしたら嫌だな...と思って」
たったそれだけの理由で、足を失ったのか?
私は信じられなかった。
でも、全てが終わった今、私がするべきなのは彼を責める事ではない。
「......ありがとうございます、ラウド」
「大丈夫っす!」
ラウドは最後まで、にこやかにしていた。
私は廊下を歩き、「ジェシカ・クラーク」の表札を探す。
幸いにも、スキャン機能ですぐに発見できた。
ノックして、開けてもいいか尋ねる。
「誰ですか?」
「クラヴィスです、お取り込み中でしたか?」
「どうぞ、入ってください」
私は入室する。
するとそこには、包帯だらけのジェシカ大尉が床に伏していた。
大怪我だとは思うのだが、スキャンする限りでは、熱傷がほとんどのようだ。
「すみません、まだ給料が入っていないので、お見舞い品は持ってきていません」
「私にとっては...貴方が会いにきてくれた事が、一番の喜びですよ。......私たちは大変な目に遭いましたが、あなたも相当酷い目に遭ったと聞きます」
「私は......」
酷い目には遭ったけれど、生命を脅かされる程ではなかった。
せいぜいが殴られたり蹴られたり、整備をしないまま連戦させられたりする程度だ。
「私もほとんど動けないので...丁度、話し相手が欲しかった所です」
「そうですか...」
もう数週間経っているのに動けないということは、相当の傷だ。
ラウドとは違って、医療用の装置で表面の跡は消す事ができるようだが。
「ラウドが庇ってくれたおかげで、酷い火傷だけで済みました。......ですが、ラウドは右足を失って...上官として、情けないばかりです」
「ラウドは、大尉を失うと私が悲しむと考えて、庇ったんです。ですから、悪いのは大尉ではありません」
私が悪い。
だが、庇わなければジェシカ大尉は死んでいたかもしれない。
それは、重い選択だったと私は思う。
「......クラヴィス、一つ。貴方に忠告したい事があります」
「何でしょうか?」
私は、急に重みを増したジェシカ大尉の言葉に耳を傾けた。
「貴方たちは、裏の世界で有名な“王”を、打倒しました。...いえ、打倒ではないかもしれません。ですが、王はあの程度では決して懲りたりはしませんよ。貴方たちは、飾るべき宝物ではなく、求めるべき至宝にランクアップしたわけです」
怖い。
あの王が、どんな手を使ってでも手に入れようとしてくるのが。
けれど、今までのような堕とす方向性ではなさそうなのが、唯一の救いだった。
「肝に銘じます」
「ええ。あなたは、王国軍の実験機。ですが、私には無限の未来が見えますから...頑張ってください」
「分かりました」
私は強く、頷いたのであった。
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