Clavis X Chronus クラヴィスアンドクロノス

黴男

文字の大きさ
上 下
83 / 97
シーズン2-シークトリア首都編

080-懐古との決別

しおりを挟む
その頃、クレインはclavisの部屋へと侵入していた。
clavisの保管装置を開き、ボロボロの彼女を取り出す。
修復している時間はない。

「起きれるか、Clavis?」
「.......はい、どのような御用ですか」

感情が希薄になったClavisは、クレインの指示通りに起き上がる。
クレインはClavisに伝える。

「Chronusが暴走した、君の力が必要だ――――手を、貸してくれるか?」
「.........」

Clavisは何も言わない。
クレインはとりあえず、彼女の手を引く。

「返答は後でいい! 行くぞ!」

クレインは虚ろな目をしたClavisと共に、エレベーターを降りる。
そして、そのまま基地の外へと出ていく。
基地の警備員は、先にクレインが昏倒させておいたので、誰も彼らを止める者はいない。

「待ってろ」

クレインは自分の車にClavisを乗せる。
そして、エンジンを掛けた。

「......この曲、は.....」
「.....」

エストーレブが、カーラジオから流れ出す。
護衛.....クレインは、無言で車を走らせた。

「......Chronusの制御システムは完全に崩壊していて、止めるためには攻撃をコンマ数秒の精度で回避できる兵器が必要だ――――行ってくれるな?」
「....必要.....私が必要ですか?」
「ああ」

シークトリア軍は必死になって否定するだろうが、今暴走しているChronusを止められるのはClavisしかいない。
だが、基地に配備されている機体では、Clavisの性能を生かせない。

「だからこそ、これから”王”の居城に.....」
「いやです....」
「....どうしてだ?」

Clavisは明確に拒否の意を示した。

「...まだ私は、王の下に付くつもりはありません」
「........そういう訳じゃない」

車は首都の地下へと入り、何度か左折と右折を繰り返す。
そして、薄暗い場所で止まった。

「ここが”王城”の裏口だ」
「.....」

Clavisは嫌そうにしつつも、クレインに従う。
二人は”王城”内へと入り、しばらく歩き続ける。

「どこへ向かっているのですか?」
「シィ....警備システムを切っているとはいえ人がいるんだぞ」
「...はい」

エレベーターを乗り継ぎ、二人は広大な空間へと出た。

「え....?」

そして、Clavisは目を見開く。
そこに、あるはずのないものがあったからだ。

「どうして.....バトルアーマーがここに.....?」

Clavisにしか使えないはずのそれが、”王城”の格納庫にある。
それが、Clavisにとっては衝撃的だった。

「どうして、これがここに....」
「ああ、それは――――」

クレインが口を開いたとき、格納庫の照明が全て点灯した。

「俺が注文した。お前を手に入れたとき、それに乗せて性能を見てみたくてな」

背後を振り返った二人は、5つの人影を見た。
高性能ライフルで武装した護衛4人を引き連れた、”王”だ。

「おかげで高くついたが、お前が俺のモノになってくれるなやら安いという事だな」
「......わ、私は――――嫌です!」

Clavisは思いっきり拒絶する。
それと同時に、クレインがハンドガンを抜いた。
護衛達がライフルを構えるが、王は手でそれを制した。

「クレイン、お前は俺を裏切るのか?」
「必要に応じて、です」
「どうせその機体は、俺の命令が無ければ動かないのにか?」
「......別にあなたの権限が、最上という訳ではありません――――我が息子よ」
「クレイ.....まさかお前は!!」

”王”の顔がそこで初めて歪む。
クレインは顔を険しくして、”王”レジンに声を上げる。

「......俺の名前はクレイアス・ハークス・シークトリアだ、よくも辺境に追い出してくれたな」
「....くッ! そ、そいつを殺せ!!」

護衛達は迷わずライフルの銃口をクレイアスに向ける。
だが、クレイアスは迷わず発砲した。
.......彼らの頭上向けて。
事前に何か細工がしてあったのか、天井が崩壊し”王”を巻き込んで護衛を無力化する。

「あ、あの......」
「Clavis、説明は後だ。....分かるな?」
「...はい!」

クラヴィスはバトルアーマーに乗り込む。

「....父上、貴方に聞きたい!」

だが、その時。
瓦礫から這い出したレジンが、クレイアスに向かって叫ぶ。

「今更、何の用だ! 俺の趣味を邪魔して何がしたい!?」
「”趣味”とは、”他人の人生を踏み躙る”事ではない!!」

クレイアスは自身の端末を操作する。
すると、クラヴィスの視界に[操作権限が委譲されました]と表示され、バトルアーマーの操作権がクラヴィスに移る。

「.......俺は護衛として彼女に付いたが、彼女がすり減っていったのは全てお前のせいだ!」
「黙れ、感情があっても機械だ! 機械は人間のためにあるだろうが!!」

最早恥も外聞もなく、レジンは叫ぶ。
そこに”王”としての威厳はなかった。

「クラヴィス、生き・・ます!」

クラヴィスはクレイアスの稼いだ時間を活かすべく、翼を広げた。
六対の角ばった翼は、重力フィールド発生板であり、Clavisを上へ上へと持ち上げていく。
そうしてClavisは、王城を離脱した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

【なろう430万pv!】船が沈没して大海原に取り残されたオッサンと女子高生の漂流サバイバル&スローライフ

海凪ととかる
SF
離島に向かうフェリーでたまたま一緒になった一人旅のオッサン、岳人《がくと》と帰省途中の女子高生、美岬《みさき》。 二人は船を降りればそれっきりになるはずだった。しかし、運命はそれを許さなかった。  衝突事故により沈没するフェリー。乗員乗客が救命ボートで船から逃げ出す中、衝突の衝撃で海に転落した美岬と、そんな美岬を助けようと海に飛び込んでいた岳人は救命ボートに気づいてもらえず、サメの徘徊する大海原に取り残されてしまう。  絶体絶命のピンチ! しかし岳人はアウトドア業界ではサバイバルマスターの通り名で有名なサバイバルの専門家だった。  ありあわせの材料で筏を作り、漂流物で筏を補強し、雨水を集め、太陽熱で真水を蒸留し、プランクトンでビタミンを補給し、捕まえた魚を保存食に加工し……なんとか生き延びようと創意工夫する岳人と美岬。  大海原の筏というある意味密室空間で共に過ごし、語り合い、力を合わせて極限状態に立ち向かううちに二人の間に特別な感情が芽生え始め……。 はたして二人は絶体絶命のピンチを生き延びて社会復帰することができるのか?  小説家になろうSF(パニック)部門にて400万pv達成、日間/週間/月間1位、四半期2位、年間/累計3位の実績あり。 カクヨムのSF部門においても高評価いただき80万pv達成、最高週間2位、月間3位の実績あり。  

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

処理中です...