上 下
81 / 97
シーズン2-シークトリア首都編

078-砕け散った歯車

しおりを挟む
「調子に乗るなよ!」

軽い音の後に、何かが硬いものに当たる音が響く。

「......はい」
「ふざけるな!」

男が、何かを殴っていた。
殴られているのは、クラヴィスだ。

「何をしていたのだ! よりにもよってあのノイスター中佐に手柄を奪われ! 私の株も下がるばかりではないか!」

クラヴィスは死んだ目のまま、何も言わない。
男.....警備隊長カルベスは、そんなクラヴィスに腹を立て、机の上にあったスパナを持って、クラヴィスの頭を殴打する。

「こいつ.....無駄に頑丈だな! 思い知れ、機械如きがぁ!!」

カルベスはクラヴィスの頭を強引に胴体から引き千切る。
そして、コードを握って床に何度も叩き付けた。
だが、それでもクラヴィスは何も言わなかった。

「チッ、甚振り甲斐のない」

カルベスは適当なカーゴボックスにクラヴィスの顔と胴体を放り込み、輸送品を移送するコンベアに放り込んだ。
向こうに着けば、アンドロイドが自動でクラヴィスの修理を行う。

「弾薬如きが、俺の輝かしい覇道を邪魔しおって」

カルベスはそう呟くと、デスクの端にあった酒のボトルを開封した。






ジェシカ大尉が死んだ。
ラウドも、その他乗務員たちも。
ハーデン中尉は行方不明。

「............」

私に存在価値はなく、私を知る者は皆死んだ。
何なのだろうか。
あの”王”は。
限界まで私を追い込んで、それで自分のものになるとでも思っているのだろうか。

「...........」

私が歯車で動くなら。
その歯車はもう砕け散った。

「............」

私物も何もない部屋で、私はやってきた護衛に組み立てられる。

「....ひどい傷だな」
「作戦に支障はありませんから」
「そうか」

護衛は淡白に私を組み立てると、仕事は終わったとばかりに去って行った。
私の存在価値........

「......あった」

まだあった。

「あ、はは....」

自分の手を見る。
守るはずだったシークトリアの人間を殺したその手を。

「..........もっと」

もっと殺せばいい。
体制に反逆する者たちを。
私に求められている役割上、殺してもいい者たちを。

「殺す」

それが私の唯一の存在価値。
壊れた歯車を埋める、氷の歯車だった。






「三番格納庫、どうした!」
「く、Chronusが動いている!」
「有り得ん!」

その頃、クロノスの格納庫のある場所では。
装甲を赤熱させながら、クロノスが動いていた。

『邪魔、ダ!!』

ロボットアームがクロノスの動きを封じようとするが、クロノスはその機体から紅い粒子を噴出させ、触れたものを赤熱させ溶解、もしくは崩壊させていく。

「司令部! コードB! コードB!」

クロノスは上を目指し、壁を握り潰しながら駆け上る。

「まずい! 市街地に出て暴れられれば軍部の評判が!」

必死になって叫ぶ職員の目に、通信のポップアップが開く。

「ノイスター中佐!?」
『俺が行く! 俺の機体だ、中佐の上位権限コードで上書きする!』
「分かりました、道を開けろ! ノイスター中佐を通せ!」

こうして、クラヴィスを抜きにして大災害が幕を開けようとしていたのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

性転換マッサージ

廣瀬純一
SF
性転換マッサージに通う人々の話

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

性転換タイムマシーン

廣瀬純一
SF
バグで性転換してしまうタイムマシーンの話

6年生になっても

ryo
大衆娯楽
おもらしが治らない女の子が集団生活に苦戦するお話です。

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

RUBBER LADY 屈辱の性奴隷調教

RUBBER LADY
ファンタジー
RUBBER LADYが活躍するストーリーの続編です

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

処理中です...