76 / 97
シーズン2-シークトリア首都編
073-外れる双道
しおりを挟む
『Clavis、現在視点から4時の方向に重戦車二輌を確認した、交戦は避けて基地へ向かえ』
「了解」
私は今、砂漠を移動している。
敵基地殲滅の任を受けたからだ。
「基地のデータをお願いします、通信の状態が悪化しているのであれば衛星写真のみで出来ますか?」
『可能だ、即座に送信する』
役目を失った私は、こうして戦略兵器として運用されることになった。
そう、役目を失ったのだ。
一週間前、私のもとを訪れた護衛が、書簡を私に手渡した。
その書簡には、私をクロノスのプロジェクトから外し、シークトリア軍直属のシークトリア警備部隊「ジークレディン」に配属することが伝えられた。
その日の夜に、クロノスが自分の所にパイロットが来た事を教えてくれた。
何故かは分からないが、私は綺麗にお払い箱にされ、クロノスには再び人間が乗るのだ。
『Clavis、指定のルートから外れている』
「....申し訳ありません、所定外のラグが発生しました。ただちに修正します」
『使えないな、あまり不具合が多いようでは廃棄になるぞ』
「......申し訳ありません」
もう私を守る立場はない。
完全に破壊されれば直しては貰えないし、隊員からの圧は強い。
『早急に殲滅しろ。お前の安全など確保しなくていい、お前は弾薬と同じだ』
「.....はい」
更に速度を上げ、哨戒を搔い潜る。
今、ジャミングを展開して地上部隊が陽動を行っている。
彼らに死者が出たら、どんな暴力を振るわれるか分からない。
義体の損壊は、戦闘中のもの以外は直してもらえないから。
「(.....見えた)....敵基地を発見。タレットは破壊しますか?」
『無視しろ、侵入に時間を掛ければお前は包囲される。どうせ人間ではないのだから、多少の被弾は許容するのだ』
「...はい」
私は単独で基地の周囲を旋回し、入り口を発見する。
厳重な扉で守られているが、
「攻撃を開始します」
肩に背負っていたランチャーから、短距離ロケットを発射する。
直撃と同時に両腕の機関砲で損傷部分を狙い撃ち、ダメージを蓄積させる。
「.....!」
だが、勿論無事とはいかない。
立ち止まっている以上は、オートタレットからの射撃を受ける。
アーマーの装甲はあまり頼りにならず、すぐに何発か受けてしまう。
「.......突入します!」
扉が壊れると同時に、私は基地内部へと侵入した。
多くの人間が、私に銃口を向けている。
その憎悪と怨嗟の混じった視線を受けつつ、私は彼らを撃ち殺した。
壁に守られていない彼らは弱く、赤子の手を捻るように彼らは死んだ。
「………敵基地の制圧を完了」
『やけに早いな』
「物資の搬出が行われた形跡があります、恐らくはこの基地もダミーかと…」
『チッ! 奴らめ!』
今追っている犯罪者集団「メティス」は、こうやってダミー基地を大量に建設していて、そうやって追っ手をかわしながらテロ行為に勤しんでいるのだ。
『……回収部隊を向かわせる、お前は基地内にいる生命反応を根絶しろ!』
「……はい」
嫌だとは言えない。
私は動き出し、基地の内部に残ったまだ息のある人間、隠れている人間を屠っていくのであった。
『……最悪だな』
そう呟いたのは、クロノスだった。
彼の元にパイロットが来て、これからは彼に従えとジェシカに言われたクロノスは、若干の違和感を覚えつつも新しいパイロットであるジェニス・アラインスターに従った。
『……あいつ、絶対車を大事にしないタイプだ』
ジェニスはクロノスの性能に最初こそ驚いていたが、僅かなラグや不便さに苛立ちを募らせ、コンソールを叩いたり壁を蹴ったりした。
クロノスはただでさえ乱暴な操縦に困惑していて、つい…こう思ったりもしてしまった。
『オレが自由に動けさえしたら…あいつをバラバラに引き裂いてやれるんだけどな』
クロノスは、ジェシカに送ったメールを思い返す。
クラヴィスに会いたいと言ったが、もう所属も部隊も変わり、クロノスとの通信すら許されないと返ってきたのだ。
『........会いたいなぁ』
クロノスは、心の底から寂しがったのであった。
「了解」
私は今、砂漠を移動している。
敵基地殲滅の任を受けたからだ。
「基地のデータをお願いします、通信の状態が悪化しているのであれば衛星写真のみで出来ますか?」
『可能だ、即座に送信する』
役目を失った私は、こうして戦略兵器として運用されることになった。
そう、役目を失ったのだ。
一週間前、私のもとを訪れた護衛が、書簡を私に手渡した。
その書簡には、私をクロノスのプロジェクトから外し、シークトリア軍直属のシークトリア警備部隊「ジークレディン」に配属することが伝えられた。
その日の夜に、クロノスが自分の所にパイロットが来た事を教えてくれた。
何故かは分からないが、私は綺麗にお払い箱にされ、クロノスには再び人間が乗るのだ。
『Clavis、指定のルートから外れている』
「....申し訳ありません、所定外のラグが発生しました。ただちに修正します」
『使えないな、あまり不具合が多いようでは廃棄になるぞ』
「......申し訳ありません」
もう私を守る立場はない。
完全に破壊されれば直しては貰えないし、隊員からの圧は強い。
『早急に殲滅しろ。お前の安全など確保しなくていい、お前は弾薬と同じだ』
「.....はい」
更に速度を上げ、哨戒を搔い潜る。
今、ジャミングを展開して地上部隊が陽動を行っている。
彼らに死者が出たら、どんな暴力を振るわれるか分からない。
義体の損壊は、戦闘中のもの以外は直してもらえないから。
「(.....見えた)....敵基地を発見。タレットは破壊しますか?」
『無視しろ、侵入に時間を掛ければお前は包囲される。どうせ人間ではないのだから、多少の被弾は許容するのだ』
「...はい」
私は単独で基地の周囲を旋回し、入り口を発見する。
厳重な扉で守られているが、
「攻撃を開始します」
肩に背負っていたランチャーから、短距離ロケットを発射する。
直撃と同時に両腕の機関砲で損傷部分を狙い撃ち、ダメージを蓄積させる。
「.....!」
だが、勿論無事とはいかない。
立ち止まっている以上は、オートタレットからの射撃を受ける。
アーマーの装甲はあまり頼りにならず、すぐに何発か受けてしまう。
「.......突入します!」
扉が壊れると同時に、私は基地内部へと侵入した。
多くの人間が、私に銃口を向けている。
その憎悪と怨嗟の混じった視線を受けつつ、私は彼らを撃ち殺した。
壁に守られていない彼らは弱く、赤子の手を捻るように彼らは死んだ。
「………敵基地の制圧を完了」
『やけに早いな』
「物資の搬出が行われた形跡があります、恐らくはこの基地もダミーかと…」
『チッ! 奴らめ!』
今追っている犯罪者集団「メティス」は、こうやってダミー基地を大量に建設していて、そうやって追っ手をかわしながらテロ行為に勤しんでいるのだ。
『……回収部隊を向かわせる、お前は基地内にいる生命反応を根絶しろ!』
「……はい」
嫌だとは言えない。
私は動き出し、基地の内部に残ったまだ息のある人間、隠れている人間を屠っていくのであった。
『……最悪だな』
そう呟いたのは、クロノスだった。
彼の元にパイロットが来て、これからは彼に従えとジェシカに言われたクロノスは、若干の違和感を覚えつつも新しいパイロットであるジェニス・アラインスターに従った。
『……あいつ、絶対車を大事にしないタイプだ』
ジェニスはクロノスの性能に最初こそ驚いていたが、僅かなラグや不便さに苛立ちを募らせ、コンソールを叩いたり壁を蹴ったりした。
クロノスはただでさえ乱暴な操縦に困惑していて、つい…こう思ったりもしてしまった。
『オレが自由に動けさえしたら…あいつをバラバラに引き裂いてやれるんだけどな』
クロノスは、ジェシカに送ったメールを思い返す。
クラヴィスに会いたいと言ったが、もう所属も部隊も変わり、クロノスとの通信すら許されないと返ってきたのだ。
『........会いたいなぁ』
クロノスは、心の底から寂しがったのであった。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/essay.png?id=5ada788558fa89228aea)
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/horror.png?id=d742d2f035dd0b8efefe)
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる