Clavis X Chronus クラヴィスアンドクロノス

黴男

文字の大きさ
上 下
72 / 97
シーズン2-シークトリア首都編

069-猶予

しおりを挟む
「お前は、俺のモノになれ」
「え.....?」

予想外の一言に、私は硬直してしまう。
……表層人格が固まっただけで、思考自体は働いていたが。
掛けられた言葉の意味を、シークトリアの古典の意味まで遡って調べ上げて、出した結論は――――

「.......私を、所有物になされるつもりですか?」
「中々賢いな、まさにその通りだ」

レジン様は、ふんぞり返って言った。

「しかし、私は戦略兵器として開発されました」
「俺はそういう答えを期待しているわけではないのは分かってるか?」
「....では、はいと答えればいいのですか?」
「そうだ」

私の周囲に、複数のモニターが展開される。
そこには、巨大な空間が様々な角度から移されていた。
ほとんどの空間には、展示がなされているようだ。

「お前が人間並みの感情を発言したのは知っているからな、突然変異としては非常に希少だ。本当ならコピーをしたいのだが、秘密裏に入手したお前の完全コピーのAIは、従来通りの働きしかしなかった」
「私を宝石として、宝物殿に仕舞われるのですか?」
「そうなるな。安心しろ、停止させることはない。破壊される危険のない専用の部屋で、たまに俺の話し相手をしてくれればいい」

きっと、破格の条件なのだと思う。

「クロノスはどうするのですか?」
「お前が望むなら、保管してやってもいいが......あれは戦力としては優秀だ。適合する人間を乗せて前線に出す」
「.......」

きっとクロノスは、不満を覚えるだろう。

「私が断る選択肢はあるのですか?」
「お前が? たかが人工知性であるお前が? 俺に?」

レジン王の周囲にいた重武装兵が、一斉にビームライフルを私に向けた。
アサルトライフル、5.56mm小銃式、装弾は放射性変調レーザー.....どちらにせよ、普段の私では容易に破壊される。

「やめろ」

私が破壊を覚悟した時、レジン様が手を挙げ、銃器を降ろさせた。

「時間をやろう。俺のものになるための十分な時間をな。その間に整理をつけるがいい…今日は宝物殿でも見学して帰るんだな」
「よろしいのですか?」

私をこのまま帰してもいいのかと、私は尋ねた。
レジン様は私をぎろりと睨みつけ、言った。

「この星系にいる限り、お前の逃げ場などない。必ず俺のコレクションに加えてやろう」
「………!」

レジンはそれだけ言うと、玉座ごと上階へと登って行った。
あの高台は、エレベーターでもあるのだろう。

「いったい…?」

どうして私に時間をくれたのだろう。
疑問は深まるばかりであった。

「行ってみるしか......ないのでしょうね」

私は玉座のあった高台の左右を見た。
王が去った後に壁が開いたのだ。
あの先はおそらく、王が口にしていた宝物殿。
私は恐る恐る、その入口へと足を踏み入れた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

【なろう430万pv!】船が沈没して大海原に取り残されたオッサンと女子高生の漂流サバイバル&スローライフ

海凪ととかる
SF
離島に向かうフェリーでたまたま一緒になった一人旅のオッサン、岳人《がくと》と帰省途中の女子高生、美岬《みさき》。 二人は船を降りればそれっきりになるはずだった。しかし、運命はそれを許さなかった。  衝突事故により沈没するフェリー。乗員乗客が救命ボートで船から逃げ出す中、衝突の衝撃で海に転落した美岬と、そんな美岬を助けようと海に飛び込んでいた岳人は救命ボートに気づいてもらえず、サメの徘徊する大海原に取り残されてしまう。  絶体絶命のピンチ! しかし岳人はアウトドア業界ではサバイバルマスターの通り名で有名なサバイバルの専門家だった。  ありあわせの材料で筏を作り、漂流物で筏を補強し、雨水を集め、太陽熱で真水を蒸留し、プランクトンでビタミンを補給し、捕まえた魚を保存食に加工し……なんとか生き延びようと創意工夫する岳人と美岬。  大海原の筏というある意味密室空間で共に過ごし、語り合い、力を合わせて極限状態に立ち向かううちに二人の間に特別な感情が芽生え始め……。 はたして二人は絶体絶命のピンチを生き延びて社会復帰することができるのか?  小説家になろうSF(パニック)部門にて400万pv達成、日間/週間/月間1位、四半期2位、年間/累計3位の実績あり。 カクヨムのSF部門においても高評価いただき80万pv達成、最高週間2位、月間3位の実績あり。  

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

処理中です...