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シーズン2-ウェルカノ星系奪還編
sub-03 めんどくさい彼氏
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クラヴィスがホテルへと入った数時間後。
屋外にて一度放置......もとい安置されることになったクロノスは、悶々としていた。
『クラヴィスがどっかに行っちまった......』
クロノスの身体は都市部の灯りから離され、暗い着陸場にあった。
人の心に潜在的な恐怖を植え付ける暗闇が、クロノスの不安を加速させていた。
『あいつの護衛、全然優しそうには見えなかったよな…』
クロノスは素早くネットワークにアクセスし、護衛の個人データを持っている権限で出来る限り取り寄せる。
『経歴は普通だな....でも、何があるかわかったもんじゃないからな』
クロノスはアンドロイドがどういった扱いを受けているかをある程度知識として持っていた。
クラヴィスはアンドロイドではなくロボットだが、詳しくない人間から見ればアンドロイドもロボットも同様だろう。
そう考えたクロノスは、便宜を図ってもらおうとジェシカに連絡したものの出ない。
『降下中なのか........?』
クロノスは、電脳空間の中で足踏みする。
クラヴィスがいない電脳空間は妙に寂しく、クロノスの不安を掻き立てるのに格好のシチュエーションであった。
『よ、よし.....連絡しよう』
クロノスは迷惑を掛けまいと連絡をしていなかったが、その時初めて通話をクラヴィスに繋げた。
数コールでクラヴィスに繋がり、クロノスはクラヴィスに呼びかけた。
『クラヴィス、大丈夫か!?』
『え....? うん、大丈夫』
『護衛に酷い事されてないか?』
『.....大丈夫。あの人たちは無関心を貫いているから』
『..良かった』
クロノスは安堵した。
同時に、彼の悪いところが出てしまう。
『クラヴィスはいいよな...オレなんて外は出歩けないし、人と話も出来ないし.....』
『....クロノス、羨ましいの?』
『あ、いや.....そういう訳じゃ』
クロノスは次の瞬間、恐怖した。
クラヴィスが、疲れ切った表情でクロノスを見ていたからだ。
『.....代わってくれてもいいんだけどね?』
『....わ、悪かった』
クロノスは半ば逃げるように通話を切った。
人と意思疎通し、デモンストレーションの道具として使われるクラヴィスには大きな負担がかかっている。
それを、安全な場所でぬくぬくと羽を伸ばしているクロノスがあれこれ言うべきではなかったのだ。
『戦場では俺がクラヴィスを守って、降りたらクラヴィスがオレを守ってくれるんだよな......』
クロノスはクラヴィスに怒られて初めて、互いが互いのためにしていることを思い出した。
そして。
『い、一応謝っとこう....こういうのは即断即決が大事だからな』
クロノスは会話アプリを起動して、何度かチャットを送信するのであった。
◇◆◇
「......はぁ」
私は、視界の端に出た通知に溜息を吐く。
さっきクロノスが電話してきたので、やっとまともな会話ができると思ったのに、皮肉を言われて怒ってしまった。
それを気にしているのか、さっきから何度も何度もメッセージを送って来るのだ。
『本当に、気にしてないんだよな?』
『本当だって』
数十分前と同じ会話を繰り返す。
作業の邪魔になるのだけど、無視するとあっちが拗ねてしまう。
今後の戦闘任務に備えて、クロノスの機嫌は出来る限り取っておかないと。
「面倒くさい....彼氏みたいですね」
前世でよく聞きかじった話とそっくりだと、私は思った。
でも、私たちはそんな関係ではなく親友同士だ。
だからきっと、これは友情のもつれ、だと思う。
「さて、今日中に仕上げませんと」
明日は講演がある。
私に何を聞きたいのかもわからないけれど、原稿を作っておかないと話すこともないままになってしまう。
私は時折飛んでくるクロノスからのメッセージに反応しつつ、ホテルで作業を続けるのであった。
屋外にて一度放置......もとい安置されることになったクロノスは、悶々としていた。
『クラヴィスがどっかに行っちまった......』
クロノスの身体は都市部の灯りから離され、暗い着陸場にあった。
人の心に潜在的な恐怖を植え付ける暗闇が、クロノスの不安を加速させていた。
『あいつの護衛、全然優しそうには見えなかったよな…』
クロノスは素早くネットワークにアクセスし、護衛の個人データを持っている権限で出来る限り取り寄せる。
『経歴は普通だな....でも、何があるかわかったもんじゃないからな』
クロノスはアンドロイドがどういった扱いを受けているかをある程度知識として持っていた。
クラヴィスはアンドロイドではなくロボットだが、詳しくない人間から見ればアンドロイドもロボットも同様だろう。
そう考えたクロノスは、便宜を図ってもらおうとジェシカに連絡したものの出ない。
『降下中なのか........?』
クロノスは、電脳空間の中で足踏みする。
クラヴィスがいない電脳空間は妙に寂しく、クロノスの不安を掻き立てるのに格好のシチュエーションであった。
『よ、よし.....連絡しよう』
クロノスは迷惑を掛けまいと連絡をしていなかったが、その時初めて通話をクラヴィスに繋げた。
数コールでクラヴィスに繋がり、クロノスはクラヴィスに呼びかけた。
『クラヴィス、大丈夫か!?』
『え....? うん、大丈夫』
『護衛に酷い事されてないか?』
『.....大丈夫。あの人たちは無関心を貫いているから』
『..良かった』
クロノスは安堵した。
同時に、彼の悪いところが出てしまう。
『クラヴィスはいいよな...オレなんて外は出歩けないし、人と話も出来ないし.....』
『....クロノス、羨ましいの?』
『あ、いや.....そういう訳じゃ』
クロノスは次の瞬間、恐怖した。
クラヴィスが、疲れ切った表情でクロノスを見ていたからだ。
『.....代わってくれてもいいんだけどね?』
『....わ、悪かった』
クロノスは半ば逃げるように通話を切った。
人と意思疎通し、デモンストレーションの道具として使われるクラヴィスには大きな負担がかかっている。
それを、安全な場所でぬくぬくと羽を伸ばしているクロノスがあれこれ言うべきではなかったのだ。
『戦場では俺がクラヴィスを守って、降りたらクラヴィスがオレを守ってくれるんだよな......』
クロノスはクラヴィスに怒られて初めて、互いが互いのためにしていることを思い出した。
そして。
『い、一応謝っとこう....こういうのは即断即決が大事だからな』
クロノスは会話アプリを起動して、何度かチャットを送信するのであった。
◇◆◇
「......はぁ」
私は、視界の端に出た通知に溜息を吐く。
さっきクロノスが電話してきたので、やっとまともな会話ができると思ったのに、皮肉を言われて怒ってしまった。
それを気にしているのか、さっきから何度も何度もメッセージを送って来るのだ。
『本当に、気にしてないんだよな?』
『本当だって』
数十分前と同じ会話を繰り返す。
作業の邪魔になるのだけど、無視するとあっちが拗ねてしまう。
今後の戦闘任務に備えて、クロノスの機嫌は出来る限り取っておかないと。
「面倒くさい....彼氏みたいですね」
前世でよく聞きかじった話とそっくりだと、私は思った。
でも、私たちはそんな関係ではなく親友同士だ。
だからきっと、これは友情のもつれ、だと思う。
「さて、今日中に仕上げませんと」
明日は講演がある。
私に何を聞きたいのかもわからないけれど、原稿を作っておかないと話すこともないままになってしまう。
私は時折飛んでくるクロノスからのメッセージに反応しつつ、ホテルで作業を続けるのであった。
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