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シーズン2-シークトリア首都編
064-首都降下!?
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「ええっ!?」
私はつい、声を上げてしまう。
10日間、クロノスの内部サーバーで休暇を楽しんだわけだが、ようやく連絡が来たと思ったらこれである。
『いいですか? クロノスと共にシークトリア首都シグウェンの上空に降下してください。その際、対流圏で速度を落とし、シグウェン東部に配置された着陸上に降り立ってください』
「……分かりました」
降下装備なしの完全フリーフォールのスカイダイビングを要求されたのだ。
これでもクロノスに乗れるだけありがたいのだが。
「現状の義体では、突入の際の衝撃に耐えきれないと予測します、旧義体の使用を許可してください」
『分かりました、旧義体のスペアは操縦席の上部にあります。交換が済めば、即座に172時間後の式典に備え待機してください』
「了解!」
私はジェシカ大尉に敬礼すると、通信を切った。
早速クロノスに相談する。
「どうしますか?」
「どうしようもねえんじゃねーの?」
「いえ、気流や気圧、天候や空気抵抗、重力などのデータを取得し、シミュレーションを行いますか? それともぶっつけ本番ですか?」
「……それは本気と書いてマジで言ってるのか?」
「……あなたなら、練習はなしでなどと言いそうだったので」
突っ込まれてしまった。
クロノスも、軽い性格ではあるが軽率ではない。
私が少し、見誤っていた部分でもあった。
「では、早速シミュレーターをインストールします」
「まかせた」
私はメインルームから出て、アクセスルームでA-PEXに交信を試みる。
「こちらClavis、ネットワークへの接続許可を申請します」
『ホストコンピューターにA-PEXがオフラインのため、サーバーを経由します』
その時、そんな表示が出て画面に見たことのない顔が映る。
顔、と言ってもアバターのような、作られたと一目でわかる顔だが。
『こちら、シークトリア宇宙軍第一ステーション管理AI〈NY-X〉。ネットワーク接続申請を受諾します、現在の権限で接続可能なチャンネルは軍用第一階層情報集積サーバー、一般用ネットワークになります』
「一般ネットワークでお願いします」
『受諾しました。常設リンクを形成しましたので、任意のタイミングでのアクセスが可能になります。何か異常が発生しましたら、〈NY-X〉にメッセージを送信してください』
「はい」
感情のない会話だ。
A-PEXもそうだが、AIなんてみんなこんなものだ。
私とクロノスがおかしいだけで。
「お留守番をお願いします」
「あいよー」
私は一歩踏み出して、電脳の海に飛び出す。
そして、ライブラリにアクセスした。
図書館のような空間に入った私に、デフォルメされたリスのようなAIインターフェースが近づいて来る。
「.......」
『何カオ探シデスカ』
「惑星軌道降下訓練用シミュレーションソフトウェアをダウンロードしたいのですが」
『リストアップシマス、ドレカヲ選ンデクダサイ』
ライブラリのAIは、巻物を広げて見せる。
私はリストアップされたソフトウェアの中から、軍関連企業のものをダウンロードし、それを抱えて電脳の海を船に乗って戻る。
「よーお、意外と早かったな」
「はい」
数時間掛かると思っていたのか、戻ってきた私をクロノスはあまり歓迎していない様子で出迎えた。
私が出かけている間に何かしようとしていたのかもしれない。
「こちらです、設置スペースはありますか?」
「まだまだ空き容量はあるからな.....こっちだ」
私はクロノスが作った空き部屋にシミュレーターを設置した。
操縦席そっくりの形にシミュレーターが変化する。
「今すぐ行いますか?」
「時間もねーしな、行くぞ!」
「はい」
私は操縦席に座り、ヘッドギアを装着する。
すると、次の瞬間視界が別のものに切り替わった。
電脳空間にダイブした時と似ている。
視覚の入力が切り替わり、シミュレーターの中に私はいるのだ。
「シミュレーター正常起動。クロノス内部のデータと同期を開始。機体データをトレース、当日の風速、気圧、重力傾斜、天候などの情報をシミュレーターに転送します」
私はデータをシミュレーターに適用し、仮の出発地点に降り立つ。
すぐそばにはクロノスのアバターが立っており、目くばせするとクロノスの実寸サイズに戻る。
「行きましょう、クロノス」
「ああ!」
私とクロノスは、シミュレーターの空へと飛び出し――――降下訓練を始めるのだった。
私はつい、声を上げてしまう。
10日間、クロノスの内部サーバーで休暇を楽しんだわけだが、ようやく連絡が来たと思ったらこれである。
『いいですか? クロノスと共にシークトリア首都シグウェンの上空に降下してください。その際、対流圏で速度を落とし、シグウェン東部に配置された着陸上に降り立ってください』
「……分かりました」
降下装備なしの完全フリーフォールのスカイダイビングを要求されたのだ。
これでもクロノスに乗れるだけありがたいのだが。
「現状の義体では、突入の際の衝撃に耐えきれないと予測します、旧義体の使用を許可してください」
『分かりました、旧義体のスペアは操縦席の上部にあります。交換が済めば、即座に172時間後の式典に備え待機してください』
「了解!」
私はジェシカ大尉に敬礼すると、通信を切った。
早速クロノスに相談する。
「どうしますか?」
「どうしようもねえんじゃねーの?」
「いえ、気流や気圧、天候や空気抵抗、重力などのデータを取得し、シミュレーションを行いますか? それともぶっつけ本番ですか?」
「……それは本気と書いてマジで言ってるのか?」
「……あなたなら、練習はなしでなどと言いそうだったので」
突っ込まれてしまった。
クロノスも、軽い性格ではあるが軽率ではない。
私が少し、見誤っていた部分でもあった。
「では、早速シミュレーターをインストールします」
「まかせた」
私はメインルームから出て、アクセスルームでA-PEXに交信を試みる。
「こちらClavis、ネットワークへの接続許可を申請します」
『ホストコンピューターにA-PEXがオフラインのため、サーバーを経由します』
その時、そんな表示が出て画面に見たことのない顔が映る。
顔、と言ってもアバターのような、作られたと一目でわかる顔だが。
『こちら、シークトリア宇宙軍第一ステーション管理AI〈NY-X〉。ネットワーク接続申請を受諾します、現在の権限で接続可能なチャンネルは軍用第一階層情報集積サーバー、一般用ネットワークになります』
「一般ネットワークでお願いします」
『受諾しました。常設リンクを形成しましたので、任意のタイミングでのアクセスが可能になります。何か異常が発生しましたら、〈NY-X〉にメッセージを送信してください』
「はい」
感情のない会話だ。
A-PEXもそうだが、AIなんてみんなこんなものだ。
私とクロノスがおかしいだけで。
「お留守番をお願いします」
「あいよー」
私は一歩踏み出して、電脳の海に飛び出す。
そして、ライブラリにアクセスした。
図書館のような空間に入った私に、デフォルメされたリスのようなAIインターフェースが近づいて来る。
「.......」
『何カオ探シデスカ』
「惑星軌道降下訓練用シミュレーションソフトウェアをダウンロードしたいのですが」
『リストアップシマス、ドレカヲ選ンデクダサイ』
ライブラリのAIは、巻物を広げて見せる。
私はリストアップされたソフトウェアの中から、軍関連企業のものをダウンロードし、それを抱えて電脳の海を船に乗って戻る。
「よーお、意外と早かったな」
「はい」
数時間掛かると思っていたのか、戻ってきた私をクロノスはあまり歓迎していない様子で出迎えた。
私が出かけている間に何かしようとしていたのかもしれない。
「こちらです、設置スペースはありますか?」
「まだまだ空き容量はあるからな.....こっちだ」
私はクロノスが作った空き部屋にシミュレーターを設置した。
操縦席そっくりの形にシミュレーターが変化する。
「今すぐ行いますか?」
「時間もねーしな、行くぞ!」
「はい」
私は操縦席に座り、ヘッドギアを装着する。
すると、次の瞬間視界が別のものに切り替わった。
電脳空間にダイブした時と似ている。
視覚の入力が切り替わり、シミュレーターの中に私はいるのだ。
「シミュレーター正常起動。クロノス内部のデータと同期を開始。機体データをトレース、当日の風速、気圧、重力傾斜、天候などの情報をシミュレーターに転送します」
私はデータをシミュレーターに適用し、仮の出発地点に降り立つ。
すぐそばにはクロノスのアバターが立っており、目くばせするとクロノスの実寸サイズに戻る。
「行きましょう、クロノス」
「ああ!」
私とクロノスは、シミュレーターの空へと飛び出し――――降下訓練を始めるのだった。
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