Clavis X Chronus クラヴィスアンドクロノス

黴男

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シーズン2-シークトリア首都編

062-首都到着

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「わぁ........」

私は窓に張り付いて、その光景を見ていた。
行き交う様々な形の宇宙船。
衛星の周回軌道に配置された夥しい数の宇宙ステーション。
そして――――その中央に輝く、青い星。
シークトリアの母星であるシークトリアⅣである。

「シークトリアⅣは数ある星の中でも類まれな美しい星なんですよ」
「そうなんですか?」

ラウドが、私にそう語りかけてきた。
星の海に出た人類なら、美しい星などいくらでも見つけられると思ったのだが、実際はそうでもないらしい。

「美しい、といっても環境の話なんですけれどね」
「けれど、現在の技術水準であればいくらでもテラフォーミング可能では?」
「クラヴィスさんには分かりづらいかもしれないんですが.......俺たちは、作り出されたものより、もとからあったものを美しいと思うんです」
「そうですか....」

私もそれはよくわかる。
人工のものは幾らでも作れるが、自然のものは時間の積み重ねによってしか作れない。

「それで....どのステーションに入港するのですか?」
「あはは....まだ見えませんよ」

ラウドは青い星を指さす。

「俺たちが入港するのは、あの星の裏側にある最終防衛ラストディフェンスラインである巨大軍事ステーションですから」

その時、会話を聞いていたらしいA-PEXから情報が送られてくる。
「シークトリアⅣ シークトリア軍第二ステーション」との事だった。

『到着予定時刻は二十二時間後になります』
『わかりました』

A-PEXと会話を交わし、私は再び前を見る。

「首都に着けば........式典でしたか?」
「そうですね、夜には関係者でパーティがあるそうなんですよ、天然の食材を使った料理が振る舞われるらしくて」

ラウドの話を聞き流し、私は考える。
シークトリア合衆国は私とクロノスを士気向上に利用しようとしている。
つまり、これから数か月は首都で何かしらの行事に参加しなければいけないわけだ。
考えただけで、痛まないはずの頭と胃が痛くなる。

「クロノス、あなたはどう捉えているのですか?」

私は虚空に問う。
ラウドが不思議そうな顔をするが、私たちはこれで充分だ。

『何が?』

すぐにクロノスがオンラインになり、いつもの気楽そうな声が聞こえてくる。

『首都に到着すれば、式典が行われます…それに、行事にも同伴しなければなりません。私が全面に立たなければいけないのですが…思うところはありますか?』
『それを俺が考えてもしょうがないんじゃねーかぁ?』

正論だ。
クロノスは戦闘時以外自分で動けないのだから、自由に動ける私が考えないといけない。
目の前の青い輝きが、少しだけ弱まったような気がした。






「それで、怠いってか?」
「そうです」

電脳空間に声が響く。
クロノスはいつの間にやら、黒髪の執事風のアバターに変化している。

「......それは、どこで購入したのですか?」
「デフォルトスキンだな、お前も着るか?」
「....私はそういった通常のインターフェース昨日が実装できないようにプロテクトされていますので」

とはいえ光の玉では示しもつかないので、前に電脳空間に入った時のクラヴィスの素体そのままの姿を少し弄ったものをアバターとして展開している。

「シークトリア合衆国は強力な立憲君主制によって運営されており、各星系の自治は殆ど州知事に一任されています」
「ふーん、じゃあ影響力は殆どないのか?」
「いえ、現在は戦時ですので指揮において絶対上位権限が必須となります。そして、シークトリア星系には昔より強力な旗艦級超大型戦艦フラッグシップが多数存在しており、これらは戦争において欠かせない存在であるようです」

旗艦級戦艦があれば私たちなど不要なのでは?と思ったものの、私たちと旗艦級戦艦では役割が違う。
私たちに求められているのは艦載機支援・電撃戦・尖兵・地上戦と多岐に渡る役割であり、今までの実績から中型輸送艦に乗せてワープを繰り返すことで、前線で活躍する役割を期待されているのだろう。

「旗艦級戦艦や通常の戦艦などは対大軍相手に役立ちますが、小競り合いや襲撃などに対しては小型艦の艦隊や空母による対空戦の方が有効です。しかし、戦場において補給線を確立しない戦いは――――」
「あーいいよ、俺の仕事は動くことだからな、そういうのはお前に任せるぜ」
「聞いておいた方がいいと思いますが.....?」
「ダイジョウブダイジョウブ」

クロノスは手を振って立ち去ってしまう。
メインエリアには私が残された。

「大事な事なのですが......」

私が死なない限りはクロノスは戦い続けられる。
その時の私は、そう思っていた。
だけど、まさかこんなことになるなんて.....と私が後悔することになろうとは、その先の誰も分かることではなかった。
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