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シーズン1-序章

sub-02 船外活動

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「船外行動ですか?」

クラヴィスは、唐突な提案にそう問い返した。
艦隊はワープ直後に星系図に未記載の小惑星群へと突入し、それを抜けたばかりだった。

『はい、先程の小惑星群突破の際、船体に損傷を受けました』

エイペクスはモニターに、船体各部の損傷個所を表示する。
クラヴィスはそれを見て、以外にも少ないことに驚く。

「.....もしや」
『はい、たまには外で遊泳などいかがですか?』
「......感謝します」
『作業の際は、私の制御する船外作業ボットを数台出しますので、全てを一人で行う必要はありません』
「分かりました」

そういうわけで、クラヴィスは船外で作業することになった。
この艦はメンテナンスが容易な装甲を採用しているため、表面を張り替えるだけでいい。
クラヴィスは格納庫に向かい、バトルアーマーを作業用のものに換装する。

『準備はできましたか?』

その時、装着中のクラヴィスに声がかかる。
球体に四つの可変ロボットアームを持ち、背面にスラスターを積んだ一般的なものだ。
以前にクラヴィスが見た資料では、この作業ボットが大型艦に群がって修理する様子があった。

「はい」
『エアロック開放します、格納庫内の作業員は船外作業服を着用するか、退出してください』

A-PEXが数度警告した後、減圧と共にエアロックが開かれた。
急激な大気圧の降下により、クラヴィスたちは宇宙へと放り出される。
各自スラスターを噴射し、慣性を打ち消す。

『代替パーツは艦橋横のボックスに保管されています、作業を開始してください』
「了解」

クラヴィスは宇宙空間を慎重に移動する。
そして、上部甲板にある資材ボックスにたどり着き、中から数枚の装甲板を取り出し、右腕に固定する。
そのまま修理箇所に向かうのだが、その際に並行して航行する戦闘旗艦を見た。
メンテナンスボット(一般艦向けの船外作業ボットとは異なり、大型化して高速で作業を終わらせるもの)が忙しく飛び回り、外装を張り替えていた。

「そういえば、あちらにもAIがあるのでしたね」

戦闘旗艦にも戦闘指揮AIが存在するが、擬似人格インターフェースを持たないためクラヴィスやA-PEXと違い完全な裏方なのだ。
クラヴィスは艦底部に回り込み、岩に衝突して変形した箇所を見つけた。

「こちらクラヴィス、損傷個所を発見」
『A-PEX、了解です。作業を開始してください』

作業中は艦隊は速度を落としており、クラヴィスも船体に張り付いて作業することができる。
宇宙空間というと綺麗なイメージがあるが、現在航行している宙域は周辺に天体がないため特に見るべきものなどはない。
クラヴィスは装甲を張り替え、次の場所へと移動する。

「?」

次の場所に移動したクラヴィスは、その場所の修繕データに加筆があるのを見つけた。
そのデータを開くと、

『艦名パーツを使用してください』

クラヴィスはその場所を見る。
すると、擦り切れているが何かの文字らしきものが見えた。

「艦名が.......あったのですか?」

今までずっと、実験旗艦としか呼ばれていなかったこの船にも、名前があったのだ。
私は一旦身を引いて、艦名全体をスキャンする。
擦り切れてボロボロの塗装はしかし、電子復元によってその意味を理解できるまでには見えるようになった。

K I N E T I C S

「キネティクス.......」

クラヴィスは不思議そうに呟く。
記憶にある古い艦のどの名前にも、その名前は存在していなかった。

「覚えておきましょう」

それはそれ、である。
クラヴィスは一度専用のパーツを取りに戻り、その場所.....「U」に当たる部分を取り替えた。
その後も幾つか場所を巡回し、部品を取り換えた。
もう戻ろうかという時、通信が来た。

『Clavis、その場で待機してください。現宙域を通過する艦船があります』

私が艦に体を固定すると同時に、キネティクスの真下に船がワープアウトしてきた。
正面に巨大な長方形のコンテナを備えた、大型の輸送艦である。
情報精査を行ってみたが、弾かれた。

『この宙域を航行しているのは、秘匿任務中の艦のみですので、事前の警告がなかったのでしょう』
「.......何を運んでいるんでしょうか?」
『不明です』

それはそうだろう。
あれほどのカーゴスペースを持つ艦船は、データベースには存在しない。
ほぼ確実に、秘匿された艦だ。
輸送艦は一度旗艦を停止してから再起動し、再度ワープして消えた。

『またすぐに会えるでしょう。恐らく、新型兵器か希少物資の輸送艦です』
「.......そうですか」

会えても会いたくはないが。
私が名残惜しそうにしているのを察してか、エイペクスはそう言ってくれた。



暫くして、私は艦内へと帰還した。
船外での活動は少しつまらなくもあったが、これもまた日常の一部であった。
だから私は、こうして記憶に留める。
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