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シーズン1-序章
055-変幻武装
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「うおおおおおお!」
クロノスがミストレーザーを噴射する。
スプレーのように噴射した粒子に急速に熱を持たせることでレーザーとして放つこの兵器は、クロノスサイズのものは存在していない。
つまり、人間の使う武器をクロノスは使っているのだ。
『....』
偽クロノスはそれを受け、離脱を試みる。
しかし、クロノスはそれにピッタリついていく。
お互いの出力も何もかもが同じである以上、振り切ることはできない。
ならば、どうするか?
『排除、します』
直後、偽クロノスはミストレーザーをクロノスの腕からもぎ取ろうとする。
「こっ、こいつ!」
「スラスターを切ってください、落下の勢いで切り離します」
「ああ!」
クロノスのスラスターが噴射をやめ、クロノスの重量全てが偽クロノスの腕に伸し掛かる。
偽クロノスのバランスが崩れた隙に、クロノスはミストレーザーを切り離し、消した。
「次の武器は――――」
「ガトリング砲を提案します、距離を取ってください」
「分かった!」
クロノスの手に、見慣れた形のガトリング砲が出現する。
クロノスはこれを、後退しながら射撃する。
『本体に重大なダメージを確認、対象を速やかに制圧します』
「うおおおお!」
「軌道修正、左2、上1」
「了解!」
クラヴィスが狙い、クロノスが撃つ。
そうして撃っているうちに、砲身から空撃ちの音がし始めた。
「装弾切れです」
「ちっ、こんな所までリアルにしなくてもいーだろ!」
クロノスはガトリング砲を打ち捨て、次の武器を呼び出す。
「マルチミサイルランチャー、ですか?」
「ああ!」
四角く長い箱に、グリップが付いている。
そんな見た目の武器を呼び出したクロノスは、クラヴィスに訊く。
「撃ち方を教えてくれ!」
「..........誘導範囲が狭いので、なるべく誤差のないようにお願いします」
「了解!」
クロノスはまず一撃と、引き金を引く。
四発の太い筒が放たれ、偽クロノスの周囲で起爆する。
外れた筒も、旋回して偽クロノスに再接近、起爆する。
「もういっちょ!」
「軌道修正、直ぐに次弾をお願いします」
「ああ!」
クロノスは再度軌道を修正し、発射する。
最初に撃った方のミサイルは、二発は当たったが残りの二発は大きく逸れてしまった。
しかし、次に撃ったミサイルは全弾着弾し、偽クロノスの耐久値を大きく減らす。
『換装、します――――』
そこで初めて、偽クロノスが武器を変える。
ライフルがサブマシンガンに変化し、飛来してくるミサイルを撃ち落とし、クロノスへと接近を試みる。
「やべえっ!」
「武器を切り替えましょう」
「じゃ、弓だ!」
「弓ですか!?」
クラヴィスが驚く。
弓なんてものがシミュレーターに実装されていたことを知らなかったのだ。
クロノスの手に、一つの弓が現れる。
左手のプラズマキャノンと電磁盾が消失し、矢筒に置き換わった。
「一回引いてみたかったんだぜ」
「......無習得状態では扱いが難しいと予想、アシストモードにある程度依存することを提案します」
「ああ、分かった!」
クロノスはアシストモードを起動し、弓を引き絞る。
それと同時に、クラヴィスは弓の特徴を知った。
「.......内部で、引き絞りをサポートする機構があるのですね」
「それがどうした、おら!」
クロノスが矢を放つ。
アシストモードの指示通り、真っすぐ飛んだ矢は重力の影響を受けることなく偽クロノスに突き刺さる。
「すげー威力だな」
「どこの戦役で使われたものかは、こちらに記録がないのでわかりませんが......恐らく、重装甲のアンドロイド兵を無力化する程度には有効かと推測します」
「そうか、じゃあ次だな」
「早すぎませんか?」
「消化試合だろ、楽しんでもいいじゃん」
「.....油断は」
「分かってるって!」
クロノスは矢筒に弓を接続し、自動で装填を行う。
そうして、もう一度引き絞って放つ。
その矢は偽クロノスのマシンガンを貫いて、破壊する。
「これで良いだろ」
「.....」
「次はこれだ!」
クロノスの両手に、通常のものより重く大きいハンドガンが出現する。
ダブルカノンと呼称される、重歩兵の装備する武器だ。
「近づくぞ!」
「対象が武器の換装を確認、ミストレーザー」
「関係ない、行くぞ!」
クロノスは偽クロノスに接近する。
同時に、偽クロノスがミストレーザーを噴射した。
クロノスは偽クロノスの手前で向きを変え、ダブルカノンをクロノスに向けて連射する。
撃ち尽くすと同時に反転し、再び距離を取る。
「スラスターを止めるぞ!」
「装填準備完了、装填を開始してください」
「よし来た!」
クロノスがグリップ横のレバーを指で倒すと、撃鉄の部分に刺さっていたカートリッジが抜ける。
そして、現れた追加のカートリッジを差し込み、再びスラスターを全開にして接近する。
ミストレーザーを噴射する偽クロノスに対して、クロノスはギリギリの距離から横移動しながらダブルカノンを連射する。
弾が切れれば再び反転し、今度は追ってくる偽クロノスに作戦を練る。
「.......5.2秒後に上空にカートリッジを転送します、タイミングを合わせてください」
「おう!」
クロノスは上昇し、途中でカートリッジを切り離す。
そして、上空に転移したカートリッジを装着して下を向き、偽クロノスと衝突寸前の軌道で残弾を撃ち尽くす。
「武器を切り替えるぞ!」
「待ってください、様子が変です」
クラヴィスが指摘する。
その通りで、上空にいる偽クロノスの動きがおかしい。
ガクガクとぎこちない動きで、クロノスのいた場所に発砲している。
「突然どうしたんだー?」
「....恐らく、頻繁に武器を変えるクロノス、あなたの動きに対応できなくなったのでしょう。それから、充分なシステムリソースが確保できなくなり、異常が起きていると予測します」
二人は忘れているが、本体であるコロニー管理AIは優秀な人工知能である。
しかし、戦闘用ではないのだ。
戦闘用に構築され、戦闘用に最適化され、戦闘のための知識を持つ二人とは、当然差があってしかるべきなのだ。
「な?」
クロノスはそんな偽クロノスを見て、鼻で笑う。
クラヴィスは、そんなクロノスが不思議と頼もしく見えた。
「消化試合だってな」
クロノスが、背からのスラスターを全開にする。
それはまるで、不格好な翼のようであった。
「行くぞ、全速力でぶっ潰す!」
「油断はないように、お願いします」
そして、クロノスは偽クロノス向けて加速した。
クロノスがミストレーザーを噴射する。
スプレーのように噴射した粒子に急速に熱を持たせることでレーザーとして放つこの兵器は、クロノスサイズのものは存在していない。
つまり、人間の使う武器をクロノスは使っているのだ。
『....』
偽クロノスはそれを受け、離脱を試みる。
しかし、クロノスはそれにピッタリついていく。
お互いの出力も何もかもが同じである以上、振り切ることはできない。
ならば、どうするか?
『排除、します』
直後、偽クロノスはミストレーザーをクロノスの腕からもぎ取ろうとする。
「こっ、こいつ!」
「スラスターを切ってください、落下の勢いで切り離します」
「ああ!」
クロノスのスラスターが噴射をやめ、クロノスの重量全てが偽クロノスの腕に伸し掛かる。
偽クロノスのバランスが崩れた隙に、クロノスはミストレーザーを切り離し、消した。
「次の武器は――――」
「ガトリング砲を提案します、距離を取ってください」
「分かった!」
クロノスの手に、見慣れた形のガトリング砲が出現する。
クロノスはこれを、後退しながら射撃する。
『本体に重大なダメージを確認、対象を速やかに制圧します』
「うおおおお!」
「軌道修正、左2、上1」
「了解!」
クラヴィスが狙い、クロノスが撃つ。
そうして撃っているうちに、砲身から空撃ちの音がし始めた。
「装弾切れです」
「ちっ、こんな所までリアルにしなくてもいーだろ!」
クロノスはガトリング砲を打ち捨て、次の武器を呼び出す。
「マルチミサイルランチャー、ですか?」
「ああ!」
四角く長い箱に、グリップが付いている。
そんな見た目の武器を呼び出したクロノスは、クラヴィスに訊く。
「撃ち方を教えてくれ!」
「..........誘導範囲が狭いので、なるべく誤差のないようにお願いします」
「了解!」
クロノスはまず一撃と、引き金を引く。
四発の太い筒が放たれ、偽クロノスの周囲で起爆する。
外れた筒も、旋回して偽クロノスに再接近、起爆する。
「もういっちょ!」
「軌道修正、直ぐに次弾をお願いします」
「ああ!」
クロノスは再度軌道を修正し、発射する。
最初に撃った方のミサイルは、二発は当たったが残りの二発は大きく逸れてしまった。
しかし、次に撃ったミサイルは全弾着弾し、偽クロノスの耐久値を大きく減らす。
『換装、します――――』
そこで初めて、偽クロノスが武器を変える。
ライフルがサブマシンガンに変化し、飛来してくるミサイルを撃ち落とし、クロノスへと接近を試みる。
「やべえっ!」
「武器を切り替えましょう」
「じゃ、弓だ!」
「弓ですか!?」
クラヴィスが驚く。
弓なんてものがシミュレーターに実装されていたことを知らなかったのだ。
クロノスの手に、一つの弓が現れる。
左手のプラズマキャノンと電磁盾が消失し、矢筒に置き換わった。
「一回引いてみたかったんだぜ」
「......無習得状態では扱いが難しいと予想、アシストモードにある程度依存することを提案します」
「ああ、分かった!」
クロノスはアシストモードを起動し、弓を引き絞る。
それと同時に、クラヴィスは弓の特徴を知った。
「.......内部で、引き絞りをサポートする機構があるのですね」
「それがどうした、おら!」
クロノスが矢を放つ。
アシストモードの指示通り、真っすぐ飛んだ矢は重力の影響を受けることなく偽クロノスに突き刺さる。
「すげー威力だな」
「どこの戦役で使われたものかは、こちらに記録がないのでわかりませんが......恐らく、重装甲のアンドロイド兵を無力化する程度には有効かと推測します」
「そうか、じゃあ次だな」
「早すぎませんか?」
「消化試合だろ、楽しんでもいいじゃん」
「.....油断は」
「分かってるって!」
クロノスは矢筒に弓を接続し、自動で装填を行う。
そうして、もう一度引き絞って放つ。
その矢は偽クロノスのマシンガンを貫いて、破壊する。
「これで良いだろ」
「.....」
「次はこれだ!」
クロノスの両手に、通常のものより重く大きいハンドガンが出現する。
ダブルカノンと呼称される、重歩兵の装備する武器だ。
「近づくぞ!」
「対象が武器の換装を確認、ミストレーザー」
「関係ない、行くぞ!」
クロノスは偽クロノスに接近する。
同時に、偽クロノスがミストレーザーを噴射した。
クロノスは偽クロノスの手前で向きを変え、ダブルカノンをクロノスに向けて連射する。
撃ち尽くすと同時に反転し、再び距離を取る。
「スラスターを止めるぞ!」
「装填準備完了、装填を開始してください」
「よし来た!」
クロノスがグリップ横のレバーを指で倒すと、撃鉄の部分に刺さっていたカートリッジが抜ける。
そして、現れた追加のカートリッジを差し込み、再びスラスターを全開にして接近する。
ミストレーザーを噴射する偽クロノスに対して、クロノスはギリギリの距離から横移動しながらダブルカノンを連射する。
弾が切れれば再び反転し、今度は追ってくる偽クロノスに作戦を練る。
「.......5.2秒後に上空にカートリッジを転送します、タイミングを合わせてください」
「おう!」
クロノスは上昇し、途中でカートリッジを切り離す。
そして、上空に転移したカートリッジを装着して下を向き、偽クロノスと衝突寸前の軌道で残弾を撃ち尽くす。
「武器を切り替えるぞ!」
「待ってください、様子が変です」
クラヴィスが指摘する。
その通りで、上空にいる偽クロノスの動きがおかしい。
ガクガクとぎこちない動きで、クロノスのいた場所に発砲している。
「突然どうしたんだー?」
「....恐らく、頻繁に武器を変えるクロノス、あなたの動きに対応できなくなったのでしょう。それから、充分なシステムリソースが確保できなくなり、異常が起きていると予測します」
二人は忘れているが、本体であるコロニー管理AIは優秀な人工知能である。
しかし、戦闘用ではないのだ。
戦闘用に構築され、戦闘用に最適化され、戦闘のための知識を持つ二人とは、当然差があってしかるべきなのだ。
「な?」
クロノスはそんな偽クロノスを見て、鼻で笑う。
クラヴィスは、そんなクロノスが不思議と頼もしく見えた。
「消化試合だってな」
クロノスが、背からのスラスターを全開にする。
それはまるで、不格好な翼のようであった。
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