Clavis X Chronus クラヴィスアンドクロノス

黴男

文字の大きさ
上 下
54 / 97
シーズン1-序章

054-シミュレーション・バトル

しおりを挟む
『戦闘シミュレーション構築』
『相手からの対戦申請が届いています』

CVLシステムの声が響き、周囲の様子がまた変化していく。
古い時代のポリゴンのようなデザインの闘技場へと変わっていく。

「クラヴィス、警戒しろよ」
「勿論です」

目の前に立つ、クロノスの2Pカラー....じゃなくて偽物は、沈黙している。
まるで、こちらの様子を窺うように。

「どうしますか?」
「そりゃもちろん......倒すしかないだろ」

クロノスの声が、直に聞こえる。
一緒にいる。
だったら、躊躇する必要なんかない。

「では、私も――――戦います」
「よし来た!」

クロノスが動く。
同時に、偽クロノスも動き出す。

「背面ミサイル発射!」
「おう!」

視界の端をミサイルが通過すると同時に、向こうもミサイルを放つ。
全く同じ軌道で飛んだミサイルは、互いに衝突しあって消滅する。

「なんでだ!?」
「.......ミサイルの軌道が全く同じです、理由は不明」
「どうすりゃいいんだ!?」

と言われても、こちらにもどうすべきかは全くわからない。

「クロノス、集中モードでライフルを!」
「おう!」

ほぼ同時に、向こうがライフルを構えたのが見えた。
射撃音が一回だけ響く。

「! 今度は射線が同じです!」
「......くっそ!」

クロノスがスラスターを噴き出して移動を試みるが、向こうは同じ動きでしっかり付いてくる。

「........まさか、私たちの統計データをもとに動いているのでしょうか?」

関節制御の角度から、スラスターの想定出力までほぼこちらの把握している最頻値と同じだ。
こちらに勝てないのなら、CVLシステムの「ルール」を逆手にとってこちらのコピーを使って逆転しようという気なのだろう。

「クロノス、好きに戦っていいですよ」

なら、クロノスに任せる。
クロノスも軽率なようでいて、こちらと同じ慎重派でもある。

「おう、任せとけ」
「危ない時はサポートします」

最初の訓練の時と一緒だ。
クロノスが動いて、私がサポートする。

「行くぜ行くぜ!」

クロノスはジグザグに動きつつ偽クロノスに接近する。
偽クロノスのライフル射撃は正確だが、CVLシステムによってこの空間はまるで前世のFPSゲームのようなルールに支配されている。
クロノスに対して致命傷になることはない。

「機人平等パンチ!」
「! 斬撃来ます!」

クロノスは拳を振りかぶるが、同時に偽クロノスが剣を抜き放つ。
私の警告を聞いてクロノスは拳を開き、偽クロノスを突き飛ばして反動で後ろに跳ぶ。
空中で体勢を立て直し、スラスターを散発的に噴射して着地した。

「プラズマキャノン、チャージ!」
「ミサイル展開!」

クロノスが左腕のプラズマキャノンを、私がクロノスの背面のミサイル発射口を開く。
私はミサイルを一度に放つのではなく、まず一発、それから2.22秒空けて一発、5.05秒、1.32秒、9.2秒、3.1秒と発射する。
偽クロノスはランダムな発射間隔に戸惑いつつも、投射されたミサイルを正確に撃墜する。
そのせいで、クロノスのプラズマキャノンの発射形態に気付けなかった。

「プラズマ連発だ!」

クロノスはプラズマキャノンから低出力の射撃を数度にわたって放出し、偽クロノスに数発当てる。
偽クロノスはそれに一瞬挙動不審になった直後、盾を構えてプラズマ弾を受け止める。

「クラヴィス、次で終わらせるぞ!」
「ええ!」

クロノスはとある武器を構える。
それは、私の知識によればミストレーザーというものに近かった。

「好きな武器を使えるんだ、思いっきりやらねえとな!」
「.....程々に。互いのデータベースに齟齬がありますから」
「....あいよ」

私の忠告に、クロノスは気落ちしたようにそう言ったのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

海道一の弓取り~昨日なし明日またしらぬ、人はただ今日のうちこそ命なりけれ~

海野 入鹿
SF
高校2年生の相場源太は暴走した車によって突如として人生に終止符を打たれた、はずだった。 再び目覚めた時、源太はあの桶狭間の戦いで有名な今川義元に転生していた― これは現代っ子の高校生が突き進む戦国物語。 史実に沿って進みますが、作者の創作なので架空の人物や設定が入っております。 不定期更新です。 SFとなっていますが、歴史物です。 小説家になろうでも掲載しています。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

忘却の艦隊

KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。 大型輸送艦は工作艦を兼ねた。 総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。 残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。 輸送任務の最先任士官は大佐。 新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。 本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。    他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。 公安に近い監査だった。 しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。 そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。 機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。 完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。 意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。 恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。 なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。 しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。 艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。 そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。 果たして彼らは帰還できるのか? 帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

アルバイトで実験台

夏向りん
BL
給料いいバイトあるよ、と教えてもらったバイト先は大人用玩具実験台だった! ローター、オナホ、フェラ、玩具責め、放置、等々の要素有り

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

処理中です...