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シーズン1-序章
047-Hide and Liberate!
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「.................あ」
私は目を覚ました。
目を覚ましたというよりは、余剰電力の排出が終わった感じだ。
あの時私は六基の機関砲に狙われていたが、左腕の手甲と右のスラスター、右足のフットアーマーを犠牲に生き延びた。
「...........」
私は周囲を見渡す。
ここは恐らく、要人艦ドックの最下層だ。
胸の装甲(バトルアーマーの装甲の事である、他意はない)や頭部装甲を打ち付けて落下してきたお陰で、義体部分にダメージはほとんどない。
ただ、小型ミサイルが何基か歪んでしまったため、排出して移動を始める。
「反重力浮遊は.....まだ使えますか」
ドックの内部を移動する。
落下の衝撃か、何らかの干渉があるのか通信は機能しない。
人間だったら舌打ちしたくなるような状況だが、まだ出来る事は無数にある。
早急に諦めるのは敗者のすることだしね。
「っ!」
目の前に、敵が現れた。
的かどうかは分からないけれど、敵の本拠地で出てきたらそれは敵だろう。
六脚の蜘蛛のような土台に、無骨な単装砲がくっ付いている。
こちらが動くより先に、砲口が光を放つ。
私は急いで光弾を弾き、左右に移動しながら隙を窺う。
まずはあちらの動きを読む事にする。
情報精査で見る限りでは、砲身の温度が少しずつ上昇している。
こんな状態で撃ち続ければ、急速冷却が必要になるはず。
とはいえ.....
「無理を通させてもらいます....ッ!」
素直に待っていて、援軍に挟まれては元も子もない。
私は左腕を前に向け、ショットガンを射撃する。
三射で確実に左の一機を撃ち抜く。
一射目で装甲を、二射目で機関部を、三射目で足を崩し誤射を防ぐ。
「はあッ!」
警備機械の悲しき定めか、もう片方の敵機は動かない。
丁度冷却が始まったのだろう、砲身から湯気が立ち上る。
その隙を逃さず、私は撃つ。
支柱を折られた敵機は滅茶苦茶な方向に砲を乱射し、そのまま息絶えるように停止した。
「........ごめんなさい」
少しだけ、少しだけ自分を慰める言葉を口にして、私は先を急いだ。
その頃、上空では。
「キーピトラ四機接近!」
「叩き落とせ、航空隊から三機呼び戻すのだ!」
旗艦『シーロティア』艦橋内部は、絶叫と指示の大声で阿鼻叫喚の地獄と化していた。
A-PEXの支援の下、艦隊指揮を執るシーレ少佐は、とても多忙であった。
とくに現在艦隊を苦しめているのは――――――
『クソッ! あいつら、積んでるのはミサイルじゃねえぞ!?』
「反乱戦争時代の遺物だ! 各機、イールは三機で対応しろ!」
イール――――それは、通常の艦載機と余り差異のない戦闘機体ではあるが、積んでいるモノがモノである。
それは、パルスレーザー弾頭と呼ばれる特殊な物であり、三機のミサイルを放ち、並行で飛行することで、手数を増やして戦う。
そのような特殊な戦法を取るため、一機では対処できず、徐々に航空隊は数を減らしていた。
先程出たキーピトラも、高速爆撃機であり足が遅く、耐久性の低い中型艦が数隻墜とされていた。
「四番砲塔過熱! リアクター冷却開始!」
「ノーテュラス級が本艦の援護に回るそうです!」
「必要ない!」
「えっ!?」
通信を受けた部下が報告するが、シーレ少佐はそれを断った。
「旗艦周辺には既に十分な数の護衛が居る! それよりも、後方支援に回ってくれと伝えてくれたまえ!」
「はっ!」
その時、また別の人間が叫ぶ。
「四番砲塔冷却完了!」
「よーし、今だ! 全砲門を前方に集中! 他の艦にもそう伝えるのだ!」
「良いのですか? 側面からの攻撃に対処できなくなりますが…」
部下からの忠言にシーレ少佐は一瞬考え込むが、すぐに首を振る。
「ダメだ、このまま行くとジリ貧になるだろう。我々はより深く食い込み、敵の中央核に損害を与えなければならないからな」
「分かりました…」
敵の手によって意図的に分散させられていた砲撃が前面へと集中し、守りが手薄だった小型・中型艦が次々と沈んでいく。
だが、警告の通り側面の守りが疎かになり、艦隊は両側面からの飽和攻撃に晒される。
「進め! 進め! 敵の砲撃はある程度防げる! 雷撃は確認したなら迎撃しろ!」
「「「「了解!」」」」
艦隊は進撃する。
中央を目指して…
その頃、クラヴィスはドックを抜け、要人用通路に侵入していた。
だが、当然既に侵入には気付かれている。
クラヴィス目掛けて、数機の警備兵が突撃してきていた。
「……!」
右腕の機関砲が唸りを上げ、小プラズマ徹甲弾の弾幕が警備兵を薙ぎ払う。
クラヴィスは警備兵の発砲を回避しながら、下から上に向けて身体を撃ち抜いていく。
蜂の巣になった警備兵は電源を失って崩れ落ちる。
その横を通り抜け、クラヴィスは次の警備兵を狙う。
だが、カラカラという回転音が一瞬響き、何も起きない。
「…冷却に入ります!」
クラヴィスは嫌々、ショットガンで警備兵を撃った。
胴に当たった弾は内部で反応を起こし、その身体を破裂させた。
電子部品や構造体のかけらが散らばる。
クラヴィスの視界には、湯気を吹き上げる機関砲が映っていた。
プラズマ徹甲機関砲は、シリンダーに装着された六本のジェネレーターを順番に稼働させて連射するため、撃ちすぎるとこうして冷却が必要になるのだ。
覚悟を決めたクラヴィスは、ショットガンで廊下に居た警備兵を全滅させた。
鎮圧用のハンドガンしか持たない彼らに、大口径のショットガンを相手にする方法は無かった。
「この先が……」
異変を終わらせる為、彼女もまた、進撃する。
私は目を覚ました。
目を覚ましたというよりは、余剰電力の排出が終わった感じだ。
あの時私は六基の機関砲に狙われていたが、左腕の手甲と右のスラスター、右足のフットアーマーを犠牲に生き延びた。
「...........」
私は周囲を見渡す。
ここは恐らく、要人艦ドックの最下層だ。
胸の装甲(バトルアーマーの装甲の事である、他意はない)や頭部装甲を打ち付けて落下してきたお陰で、義体部分にダメージはほとんどない。
ただ、小型ミサイルが何基か歪んでしまったため、排出して移動を始める。
「反重力浮遊は.....まだ使えますか」
ドックの内部を移動する。
落下の衝撃か、何らかの干渉があるのか通信は機能しない。
人間だったら舌打ちしたくなるような状況だが、まだ出来る事は無数にある。
早急に諦めるのは敗者のすることだしね。
「っ!」
目の前に、敵が現れた。
的かどうかは分からないけれど、敵の本拠地で出てきたらそれは敵だろう。
六脚の蜘蛛のような土台に、無骨な単装砲がくっ付いている。
こちらが動くより先に、砲口が光を放つ。
私は急いで光弾を弾き、左右に移動しながら隙を窺う。
まずはあちらの動きを読む事にする。
情報精査で見る限りでは、砲身の温度が少しずつ上昇している。
こんな状態で撃ち続ければ、急速冷却が必要になるはず。
とはいえ.....
「無理を通させてもらいます....ッ!」
素直に待っていて、援軍に挟まれては元も子もない。
私は左腕を前に向け、ショットガンを射撃する。
三射で確実に左の一機を撃ち抜く。
一射目で装甲を、二射目で機関部を、三射目で足を崩し誤射を防ぐ。
「はあッ!」
警備機械の悲しき定めか、もう片方の敵機は動かない。
丁度冷却が始まったのだろう、砲身から湯気が立ち上る。
その隙を逃さず、私は撃つ。
支柱を折られた敵機は滅茶苦茶な方向に砲を乱射し、そのまま息絶えるように停止した。
「........ごめんなさい」
少しだけ、少しだけ自分を慰める言葉を口にして、私は先を急いだ。
その頃、上空では。
「キーピトラ四機接近!」
「叩き落とせ、航空隊から三機呼び戻すのだ!」
旗艦『シーロティア』艦橋内部は、絶叫と指示の大声で阿鼻叫喚の地獄と化していた。
A-PEXの支援の下、艦隊指揮を執るシーレ少佐は、とても多忙であった。
とくに現在艦隊を苦しめているのは――――――
『クソッ! あいつら、積んでるのはミサイルじゃねえぞ!?』
「反乱戦争時代の遺物だ! 各機、イールは三機で対応しろ!」
イール――――それは、通常の艦載機と余り差異のない戦闘機体ではあるが、積んでいるモノがモノである。
それは、パルスレーザー弾頭と呼ばれる特殊な物であり、三機のミサイルを放ち、並行で飛行することで、手数を増やして戦う。
そのような特殊な戦法を取るため、一機では対処できず、徐々に航空隊は数を減らしていた。
先程出たキーピトラも、高速爆撃機であり足が遅く、耐久性の低い中型艦が数隻墜とされていた。
「四番砲塔過熱! リアクター冷却開始!」
「ノーテュラス級が本艦の援護に回るそうです!」
「必要ない!」
「えっ!?」
通信を受けた部下が報告するが、シーレ少佐はそれを断った。
「旗艦周辺には既に十分な数の護衛が居る! それよりも、後方支援に回ってくれと伝えてくれたまえ!」
「はっ!」
その時、また別の人間が叫ぶ。
「四番砲塔冷却完了!」
「よーし、今だ! 全砲門を前方に集中! 他の艦にもそう伝えるのだ!」
「良いのですか? 側面からの攻撃に対処できなくなりますが…」
部下からの忠言にシーレ少佐は一瞬考え込むが、すぐに首を振る。
「ダメだ、このまま行くとジリ貧になるだろう。我々はより深く食い込み、敵の中央核に損害を与えなければならないからな」
「分かりました…」
敵の手によって意図的に分散させられていた砲撃が前面へと集中し、守りが手薄だった小型・中型艦が次々と沈んでいく。
だが、警告の通り側面の守りが疎かになり、艦隊は両側面からの飽和攻撃に晒される。
「進め! 進め! 敵の砲撃はある程度防げる! 雷撃は確認したなら迎撃しろ!」
「「「「了解!」」」」
艦隊は進撃する。
中央を目指して…
その頃、クラヴィスはドックを抜け、要人用通路に侵入していた。
だが、当然既に侵入には気付かれている。
クラヴィス目掛けて、数機の警備兵が突撃してきていた。
「……!」
右腕の機関砲が唸りを上げ、小プラズマ徹甲弾の弾幕が警備兵を薙ぎ払う。
クラヴィスは警備兵の発砲を回避しながら、下から上に向けて身体を撃ち抜いていく。
蜂の巣になった警備兵は電源を失って崩れ落ちる。
その横を通り抜け、クラヴィスは次の警備兵を狙う。
だが、カラカラという回転音が一瞬響き、何も起きない。
「…冷却に入ります!」
クラヴィスは嫌々、ショットガンで警備兵を撃った。
胴に当たった弾は内部で反応を起こし、その身体を破裂させた。
電子部品や構造体のかけらが散らばる。
クラヴィスの視界には、湯気を吹き上げる機関砲が映っていた。
プラズマ徹甲機関砲は、シリンダーに装着された六本のジェネレーターを順番に稼働させて連射するため、撃ちすぎるとこうして冷却が必要になるのだ。
覚悟を決めたクラヴィスは、ショットガンで廊下に居た警備兵を全滅させた。
鎮圧用のハンドガンしか持たない彼らに、大口径のショットガンを相手にする方法は無かった。
「この先が……」
異変を終わらせる為、彼女もまた、進撃する。
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