Clavis X Chronus クラヴィスアンドクロノス

黴男

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シーズン1-序章

041-市街上空戦 前編

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都市上空に到達した私たちは、既に始まっている戦闘を確認する。
対空ミサイルやタレットによるレーザー攻撃が対空戦闘を行い、少し入るには勇気が必要な場所になっている。

「今回は突入ルートの算出はしません、電磁盾で突入し、その間に回避ルートの演算を開始します」
『おう!』

クロノスはユニットの翼を畳み、弾幕の中へ盾を構えて飛び込む。
電磁盾にレーザーが激突し、そのまま滑るように弾き飛ばされる。

『こっから、どうすりゃいいんだ!?』
「弾幕の薄い箇所......ビルの陰に隠れてください!」
『おう!』

クロノスは降下し、ビルの陰に身を潜めた。
タレットはビルを背にした場合は発砲できない事を私たちは知っているので、とりあえずの安地はここに確定される。

「タレットの破壊は艦隊に任せます、上空の艦載機を撃滅しましょう」
『弾はどうする?』
「ある程度は迎撃し、残りは艦隊を盾にします」
『――――いいね、最高だぜ!』

クロノスは一気に加速し、ビルに嵌ったガラスを衝撃波で砕きながら上昇する。

「E.M.Pキャプチャーミサイルに弾頭を変更!」
『換装完了! 何時でも行けるぜ!』

旗艦の少し左に飛び出したクロノスは、ブラックハウンド二機にロックオンされる。

『後ろに付かれた!』
「EMPキャプチャーミサイル発射!」

クロノスの背から、一つのミサイルが発射される。
それは滑るようにブラックハウンドへと接近し、近接信管によって起爆し、周囲に電磁波を撒き散らす。
多くの戦闘機械には対EMP機構が備わっているが、私でも浴びれば一瞬で機能を失ってしまう出力の軍用EMPの前には無効である。
クロノスに追撃を命じようと思ったが、横から飛んできた光の槍が二機を薙ぎ払った。
小型艦の援護射撃である。

『こちら解放艦隊”リベリオーテ”二番艦、Chronusの援護に参りました!』
「感謝します、ですが.....出来れば地上のタレットの破壊や、地対空ミサイルの迎撃に務めていただけると幸いです」
『はっ、あくまで単独で援護していただけるわけですね、理解しました!』

通信が切れる。
それと同時に、私はクロノスに指示を飛ばす。

「クロノス、四番艦付近に展開している敵編隊を撃滅します、拡散弾頭に変更」
『了解!』

速度計が加速を示し、クロノスはビルの間を縫うように飛翔する。

「追跡を感知。クロノス後方、七時の方角からナイトハウンド三機」
『振り切れねえか?』
「振り切れます、加速してください」
『おう!』

一瞬、私の身体はシートに押し付けられる。
クロノスの加速がどんどんと強まり、みるみるナイトハウンドを引き離していく。

「射程外に到達」
『よし、このまま行くぜ!』

クロノスは更に加速し、四番艦の直下へと到達する。
タレットの攻撃目標が私たちに移り、砲弾が飛んでくる。

「垂直上昇、艦の脇をくぐり抜けてください」
『ああ、それで――――敵の総数は?』
「不明――ですが、視認しただけで四機居ますね」
『それだけわかりゃ充分だな』

クロノスは尾翼の向きを変え、上へ向けて加速する。
減速する際の反動は、私のユニットで相殺した。

『敵の数は!?』
「総数二十二機! 四番艦の損傷は軽微、一度に迎撃できる数は二機ほどだと思われます」
『よし、とっととやっちまおうぜ!』

クロノスがライフルを抜く。
モードはフルオート。

「四番艦から引き剥がしましょう」
『なあ、このコード使ってもいいのか?』
「どのコードですか?」

クロノスから情報が転送されてくる。
見れば、シークトリア軍の攻撃命令コードだった。

「......冗談ですよね?」
『マズイのか?』
「軍規違反ですけど....」
『でも、この方が楽だろ?』

このコードを発信すれば、味方情報の偽装などという全ての自律制御システムの禁忌と軍規に抵触するが――――代わりに、ゲームで言うなら挑発スキルを発動したように、全ての――――味方も含む兵器の優先攻撃対象にクロノスが躍り出る。

「......後で説明しておきます、クロノス」
『おう!』

クロノスがコードを送信した。
直後、四番艦の砲塔がこちらに向けて旋回した。

「回避してください!」
『ああ!』

クロノスは四番艦の砲塔五門による射撃を回避し、射程外から急いで逃れる。

「予想外でした、コードが全体に伝わりましたので、近場の戦闘機が一斉に向かってきます」
『おいマジか』

クロノスが呟く。
蜂の巣を突いた様に、早くも広域レーダーに敵機が映り始めていた。
情報修正が済んだので、四番艦からの攻撃はない。

『――――こちら四番艦、Chronus、何をした?!』
「優先攻撃対象のコードを送信しました」
『軍規違反だぞ!?』
「殲滅いたしますので、問題なく」
『........成功したならば、我々も弁護いたします』

四番艦の面々は、私が制圧したドックのメンバーが多く含まれている。
ラウド曰く、私とお近づきになりたい人間も数人いるそうだ。

「クロノス、敵機が接近しています――――周辺に基地がない人工河川部がありますので、そちらに向けて移動してください」
『りょーうかい!』

クロノスは尾翼を広げ、私の指示した方向へと加速する。
四番艦のブリッジの真横を一瞬通過したが、そこで艦長らしき人物が敬礼していた。

「敵総数、現在確認できるだけでも六十一機に増加」
『俺達共犯だよな、な!?』

クロノスは喚きつつも、包囲を抜けるべく加速を続けるのだった。
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