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シーズン1-序章
036-空中戦 前編
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空へと飛び出したクロノスは、一回転して周囲を確認する。
「クロノス、空気抵抗があります! 気をつけてください」
『了解!』
コロニー内にはどの種族でも適応可能な特殊配合の酸素が充満している。
密度が高いために、クロノスも動きが鈍い。
「これより、発進する艦隊の援護に回ります」
『おう!』
眼下に広がるドックの発進口が、大きく口を開け.....そこから見慣れない形状の艦が次々と浮上し始めている。
しかし、大型艦は発進に手間取っており.....周辺の警備船が次々と集結している。
「上空から回り込んでください」
『へいへーい!』
クロノスは大気圏離脱用ユニットから粒子を噴き出し、艦隊の直上に回り込む。
流石は引力を振り切るだけあって、物凄い加速だが.....加速したときの衝撃波でドックの射出口が破壊されるのが見えた。
余り多用するとこちらのシールドにも影響があるかもしれない。
「敵船影、捕捉」
上から見た未確認IDの船影を記録し、即座に演算に追加する。
あの船が自動制御下にあるなら、全ての可能性を計算に入れなければならない。
何しろ相手はこちらと同じ、それどころかもっと多くの知識と経験を得た人工知能である。
船隊の制御などお手の物だ。
「こちらのデータは余り把握できていないはずです、一気に殲滅しましょう」
『ああ、降下ルートを頼むぜ』
「はい」
追撃を受けないために、もう一度急上昇する必要がある。
だからこそ、味方艦に衝突しない動線を取らなければいけない。
「...........」
『えーい、長考に付き合ってるほど余裕ないぞ!』
「.......分かりました、降下ルートを転送します!」
降りてみないと分からないか....
そう思いつつ、身体に負荷が掛かるのを感じる。
既に常人ならレッドアウトしている重力負荷だ。
「前方5機の小型船に襲撃を仕掛けます、ライフル発射準備!」
『了解だぜ!』
クロノスは数秒で降下の姿勢になり、”下”目掛けて一気に加速する。
余りの加速に、真下の艦隊を狙っていた警備船は反応が遅れ、ライフルの射線にその身を曝す。
『よっしゃ、一機撃墜!』
「射撃感知、回避ルート算出、転送します!」
『おう!』
警備船の対空火器は、艦橋上のパルスレーザー砲一基のみだが、だからといって当たってもいいという訳ではない。
「ミサイル発射用意、数3、降下しながら3機撃墜を狙ってください!」
『おう!』
下方からの砲撃が、一隻を破壊したのを見て、私たちも一気に撃滅を狙う。
大型艦の姿勢制御が安定すれば、ここを離脱して殲滅行動に移行できる。
「弾着まで、3、2、1............敵艦撃破、上昇体制に移行してください」
今回積んでいるミサイルは拡散弾頭であり、弾着直前に自爆してレーザーを撒き散らす弾頭だ。
製造コストが低く大量生産できる割に威力の高いものとなっている。
しかし、クラスター爆弾と同様に人間相手への使用は禁止されている。
『うおおおおおおおおおおおおお!』
「震動にっ、注意してください!」
敵艦隊の真下に回り込み、再び大気圏離脱用ユニットを最大噴射する。
加速によってコックピットを激しい振動が襲い、すぐに制御下に置かれて収まる。
クロノスは周囲の状況を把握するために錐揉み回転しながら上昇していく。
『直上に船影!』
「プラズマキャノン、発射準備!」
『もう出来てるぜ!』
「命令を待ってください!」
『準備位はいいだろ!?』
「............発射!」
プラズマキャノンの光が、一瞬視界を埋め尽くす。
装甲を貫通して警備船の中に入り込んだ砲弾は、内部で膨張した後に爆発し、船体を蜂の巣にする。
『よっしゃ!』
「右2機からのミサイル攻撃を確認。 振り切ってください」
『オッケーだっ!!』
右に居た警備船から、ミサイルが放たれる。
全部で4つ、速力重視のEMP投射弾頭と予想できる。
「進路上に艦隊が集結しています」
『ちっ、面倒臭いな!』
「フレア射出」
『フレア射出だ!』
クロノスからフレアが放たれて、ミサイル群は一瞬そちらを追う。
だが、即座にその狙いが安定した。
「な.......ミサイルが何らかの制御下に置かれています」
『言われなくても分かってる! 全速力で振り切るぜ!』
クロノスがそう言った途端、ユニットが煙を噴いた。
コックピット外から爆音が響き、クロノスの速度が大きく落ちる。
『な、なんだぁ!?』
「離脱用ユニットに異常発生! 今すぐ脱着してください」
『わ、分かった』
高負荷に耐えきれなかったのか、離脱用ユニットは煙を噴きながら落ちて行って.....ミサイルに正面から当たって爆散した。
「大幅に推力が低下、大気圏離脱用ユニットの本来の使用目的から逸脱した用途を装丁していなかった.....つまり、推力を低下させ、その速度で脱出ルートを......」
『どうにかしてくれ!』
「お待ちください」
クロノスは全速力で艦隊の中を飛行しているが、私が回避ルートを提示できないせいで徐々に攻撃を受け、その度にアラートが鳴り響く。
「........下降してください」
『分かった....けどよ、どうする気だ?』
「基地内に降下し、追加のユニットを受け取ります」
『.....それまで伏せて待て、って事か?』
「はい」
あのユニットが無ければ、このコロニー内では満足に推力が得られない。
そう考えた末の結論だったのだが.....
『断る』
「.....しかし、どうやって推進を?」
『自分で考えておいて、忘れるのも難儀だな......こいつを使う!』
クロノスが取り出したのは、パイルアンカー。
それを、狙いを定めて――――発射。
突き刺さった艦向けて、巻き上げを開始する。
同時に、背面のブースターが起動する。
「........まさか」
『そうよ、これこそ立体機動! 錨飛ばしの本懐だぜ!』
「.....分かりました、行きましょう」
クロノスはアンカーを回収し、ライフルで警備船を撃墜する。
次に目標を見定めて、発射する。
「そちらには撃たない方が.....」
『んん!? 今なんて言った!?』
「...い、いえ」
少々押され気味になりつつも、私はクロノスに指示を飛ばし続ける。
アンカー発射、巻き上げ、回収、射撃。
アンカー発射、巻き上げ、回収、射撃。
それを繰り返し、気付けば艦隊周辺の警備船は全滅していた。
ただし、砲撃支援を途中からしてくれたので、そちらにも感謝しなければならない。
『要請を受諾しました、大気圏離脱用ユニットを一基射出します』
その時、別の射出口からユニットが吐き出されてくる。
エイペクスが高速演算で高負荷による故障の分析と改善を行い、艦内の兵器用プリンターで製造してくれた逸品だ。
「さあ、作戦行動に移行します」
『むしろいままで移行してなかったんだな』
「.........行きますよ」
『ああ!』
私とクロノスは、共に戦場へと加速した。
「クロノス、空気抵抗があります! 気をつけてください」
『了解!』
コロニー内にはどの種族でも適応可能な特殊配合の酸素が充満している。
密度が高いために、クロノスも動きが鈍い。
「これより、発進する艦隊の援護に回ります」
『おう!』
眼下に広がるドックの発進口が、大きく口を開け.....そこから見慣れない形状の艦が次々と浮上し始めている。
しかし、大型艦は発進に手間取っており.....周辺の警備船が次々と集結している。
「上空から回り込んでください」
『へいへーい!』
クロノスは大気圏離脱用ユニットから粒子を噴き出し、艦隊の直上に回り込む。
流石は引力を振り切るだけあって、物凄い加速だが.....加速したときの衝撃波でドックの射出口が破壊されるのが見えた。
余り多用するとこちらのシールドにも影響があるかもしれない。
「敵船影、捕捉」
上から見た未確認IDの船影を記録し、即座に演算に追加する。
あの船が自動制御下にあるなら、全ての可能性を計算に入れなければならない。
何しろ相手はこちらと同じ、それどころかもっと多くの知識と経験を得た人工知能である。
船隊の制御などお手の物だ。
「こちらのデータは余り把握できていないはずです、一気に殲滅しましょう」
『ああ、降下ルートを頼むぜ』
「はい」
追撃を受けないために、もう一度急上昇する必要がある。
だからこそ、味方艦に衝突しない動線を取らなければいけない。
「...........」
『えーい、長考に付き合ってるほど余裕ないぞ!』
「.......分かりました、降下ルートを転送します!」
降りてみないと分からないか....
そう思いつつ、身体に負荷が掛かるのを感じる。
既に常人ならレッドアウトしている重力負荷だ。
「前方5機の小型船に襲撃を仕掛けます、ライフル発射準備!」
『了解だぜ!』
クロノスは数秒で降下の姿勢になり、”下”目掛けて一気に加速する。
余りの加速に、真下の艦隊を狙っていた警備船は反応が遅れ、ライフルの射線にその身を曝す。
『よっしゃ、一機撃墜!』
「射撃感知、回避ルート算出、転送します!」
『おう!』
警備船の対空火器は、艦橋上のパルスレーザー砲一基のみだが、だからといって当たってもいいという訳ではない。
「ミサイル発射用意、数3、降下しながら3機撃墜を狙ってください!」
『おう!』
下方からの砲撃が、一隻を破壊したのを見て、私たちも一気に撃滅を狙う。
大型艦の姿勢制御が安定すれば、ここを離脱して殲滅行動に移行できる。
「弾着まで、3、2、1............敵艦撃破、上昇体制に移行してください」
今回積んでいるミサイルは拡散弾頭であり、弾着直前に自爆してレーザーを撒き散らす弾頭だ。
製造コストが低く大量生産できる割に威力の高いものとなっている。
しかし、クラスター爆弾と同様に人間相手への使用は禁止されている。
『うおおおおおおおおおおおおお!』
「震動にっ、注意してください!」
敵艦隊の真下に回り込み、再び大気圏離脱用ユニットを最大噴射する。
加速によってコックピットを激しい振動が襲い、すぐに制御下に置かれて収まる。
クロノスは周囲の状況を把握するために錐揉み回転しながら上昇していく。
『直上に船影!』
「プラズマキャノン、発射準備!」
『もう出来てるぜ!』
「命令を待ってください!」
『準備位はいいだろ!?』
「............発射!」
プラズマキャノンの光が、一瞬視界を埋め尽くす。
装甲を貫通して警備船の中に入り込んだ砲弾は、内部で膨張した後に爆発し、船体を蜂の巣にする。
『よっしゃ!』
「右2機からのミサイル攻撃を確認。 振り切ってください」
『オッケーだっ!!』
右に居た警備船から、ミサイルが放たれる。
全部で4つ、速力重視のEMP投射弾頭と予想できる。
「進路上に艦隊が集結しています」
『ちっ、面倒臭いな!』
「フレア射出」
『フレア射出だ!』
クロノスからフレアが放たれて、ミサイル群は一瞬そちらを追う。
だが、即座にその狙いが安定した。
「な.......ミサイルが何らかの制御下に置かれています」
『言われなくても分かってる! 全速力で振り切るぜ!』
クロノスがそう言った途端、ユニットが煙を噴いた。
コックピット外から爆音が響き、クロノスの速度が大きく落ちる。
『な、なんだぁ!?』
「離脱用ユニットに異常発生! 今すぐ脱着してください」
『わ、分かった』
高負荷に耐えきれなかったのか、離脱用ユニットは煙を噴きながら落ちて行って.....ミサイルに正面から当たって爆散した。
「大幅に推力が低下、大気圏離脱用ユニットの本来の使用目的から逸脱した用途を装丁していなかった.....つまり、推力を低下させ、その速度で脱出ルートを......」
『どうにかしてくれ!』
「お待ちください」
クロノスは全速力で艦隊の中を飛行しているが、私が回避ルートを提示できないせいで徐々に攻撃を受け、その度にアラートが鳴り響く。
「........下降してください」
『分かった....けどよ、どうする気だ?』
「基地内に降下し、追加のユニットを受け取ります」
『.....それまで伏せて待て、って事か?』
「はい」
あのユニットが無ければ、このコロニー内では満足に推力が得られない。
そう考えた末の結論だったのだが.....
『断る』
「.....しかし、どうやって推進を?」
『自分で考えておいて、忘れるのも難儀だな......こいつを使う!』
クロノスが取り出したのは、パイルアンカー。
それを、狙いを定めて――――発射。
突き刺さった艦向けて、巻き上げを開始する。
同時に、背面のブースターが起動する。
「........まさか」
『そうよ、これこそ立体機動! 錨飛ばしの本懐だぜ!』
「.....分かりました、行きましょう」
クロノスはアンカーを回収し、ライフルで警備船を撃墜する。
次に目標を見定めて、発射する。
「そちらには撃たない方が.....」
『んん!? 今なんて言った!?』
「...い、いえ」
少々押され気味になりつつも、私はクロノスに指示を飛ばし続ける。
アンカー発射、巻き上げ、回収、射撃。
アンカー発射、巻き上げ、回収、射撃。
それを繰り返し、気付けば艦隊周辺の警備船は全滅していた。
ただし、砲撃支援を途中からしてくれたので、そちらにも感謝しなければならない。
『要請を受諾しました、大気圏離脱用ユニットを一基射出します』
その時、別の射出口からユニットが吐き出されてくる。
エイペクスが高速演算で高負荷による故障の分析と改善を行い、艦内の兵器用プリンターで製造してくれた逸品だ。
「さあ、作戦行動に移行します」
『むしろいままで移行してなかったんだな』
「.........行きますよ」
『ああ!』
私とクロノスは、共に戦場へと加速した。
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