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シーズン1-序章

031-狂乱のパルタコロニー

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艦の外に出る。
艦の制御システムはエイペクスが握っているので、問題はドックである。

「......やはりダメです、応答しません」

暗闇で不気味に赤く光るパネルは、こちらの入力を一切受け付けない。

『では、破壊してください』
「はい!」

背面のミサイルポッドを展開、ハッチを一つだけ開いて、発射する。
発射されたミサイルはロケット花火を彷彿とさせる爆音と共に扉に突き刺さり、爆発した。

「ッ.........!」

俺の強化装備パワードスーツは改造済みで、両腕に耐衝撃シールドを装備している。
これがあるおかげで、レーザーも角度次第で弾けるのだ。
そして今回は、手に入れたばかりの超金属をこの盾に塗布している。
ちょっとやそっとの衝撃では貫通できないはずだ。

『ふむ、ここのパネルが外れましたね。ここからドックのシステムを掌握できそうです』
「そうですか、では私は警戒に当たります」
『お任せしました』

エイペクスはケーブルをパネルに伸ばし、アクセス権限の正常化を試みる。
その間、俺は廊下へと出て、周囲を警戒する。

『警告! 警告! 地獄の扉が開かれました! 死ぬべき存在、忌むべき存在が跋扈しています:エラーコード、クラヴィスを殺せ』

途端、廊下中のあらゆる電子機器がけたたましい単音を放ち、俺の聴覚抑制が作動する。
同時に、扉がぶち破られて、警備らしきアンドロイドが数体現れた。
手にはライフルが構えられている。

「エイペクス、戦闘許可を!」
『敵の発砲を確認してください』
「了解!」

面倒臭いが、ここで先に発砲するともっと面倒なことになる。

「誰ですか!? 所属をお願いします!」
「我々は、パルタコロニー第27ドック4番警備隊、ガ......クラヴィスヲコロスデキナイデキル」

俺の質問に答えたようだった警備兵は、しかし途中で銃口を俺に向けた。

「ッ!」

慌てて防御すると、非実体弾が盾に当たる音が複数回、断続的に響いた。

「先制攻撃を確認、戦闘フェーズに移行します」

装填、安全装置解除、コロニー内での発砲警告を押し退け、私は両腕を前へと向ける。
照準を固定し、発砲。

「掃討.....完了」

数秒間吹き荒れた弾の濁流に、アンドロイド数体はなす術もなくバラバラになった。

『ドックのシステムを掌握完了、上部ハッチを開きます』

背後で大きな音が響く。
同時に、砲撃音が遠くから聞こえた。
直後、実験旗艦が火を噴いた。

『! 外部からの地対空ミサイルによる攻撃を観測、ハッチを閉じます』
「大尉、どうすれば!?」
『周辺の正常化をお願いします、この基地の敵対勢力の排除を! 必要ならば陸上兵器も破壊してください』
「分かりました!」

暴走する危険性のある物はすべて破壊する。
それが、私のミッションだ。

「クロノスの使用は?」
『まずは内部から制圧を要請します』
「はい!」

段々FPSのようになってきた。
ミッションは中央区画、左ウィング、右ウィング、正面区画、倉庫区画を制圧すること。
だからまずは、左ウィングの制圧だ。
俺は一旦格納庫に戻り、左手のアームをショットガンに換装する。
外に飛び出して、早速向かってきていた警備兵にショットガンを撃ち込む。
向こうも質は下がるが同じ装備なので、微妙に射線を読まれて避けられた。
しかし、片手拳銃と違いこちらは大口径弾、頭部の半分を抉られたアンドロイド兵は、そのまま機能停止する。

「ッ!」

直ぐに壁に隠れると、光の弾が何発も入り口から放たれる。
敵の熱源をサーモグラフィーで検知しながら、私は慎重に顔を出す。

「行きます!」

盾を構えながら飛び出し、一瞬射線が出来る。
相手が撃つより先に照準を合わせ、ショットガンを1発、2発。
直ぐに盾を両方合わせ、残る一体の射撃を凌ぐ。
多分だが、撃ち切ってリロードしながら下がるはずだ。

「.............え?」

その時、視界にあり得ないものが映る。
足元に転がっているものだ。
それは、見覚えのある物で――――――

「――――――ッ!」

直後、そのモノは破裂し、爆風と共に大量の電磁波をまき散らした。
内部に鉄片が含まれていない事から、あくまで制圧用のEMP手榴弾なのだろう。
視界に映るUIの表示が一瞬乱れる。
……しかし、私は軍用のロボットである。

「効きませんよ!」

耐EMP装甲が使われているに決まっている。
なので、爆風以外は無効武力である。
逆に相手は、爆風の所為で私の存在を熱源探知できないようだ。
こちらは、もっと高性能な熱源探知を持っているので、アンドロイド兵の位置が分かる。

「発射!」

煙を貫いて、ショットガンから放たれたエネルギー弾が向こうにいたアンドロイド兵を吹き飛ばした。

「制圧を開始します!」
『左ウィングには恐らくですが、計25体のアンドロイド兵が駐在しているはずです』
「分かりました、後17体ですね」

視界の右上に、0/17という数字が自動でメモされた。

『私はドックの防衛を行います、施設内の鎮圧はお任せしてもよろしいですか?』
「はい」

ドックへの出入口は爆風で閉じなくなってしまった。
総勢百人程度の戦闘員が乗船しているとはいえ、アンドロイド兵に詰め寄られれば危険である。
私はエイペクスに防衛を任せ、制圧のため廊下の向こう、中央部屋に続く回廊へと足を踏み入れる。
廊下の向こうにいたアンドロイド兵一体が、グリンと首を回してこちらを見る。
見つかった。
慌ててショットガンを二発撃つが、距離が遠いせいで当たらない。
近距離射撃でもなければ、アンドロイド兵は基本射撃を回避してくる。
私に当然できることが、出来ないわけがない。

「ならば、近寄るまでです」

盾を合わせ、突進。
射撃を弾きながら回廊を踏破して、アンドロイド兵に詰め寄り――――盾で殴り付ける。
これぞ、シールドバッシュ。
アンドロイド兵の手からライフルが吹き飛ぶ。
その隙に私はアンドロイド兵の両腕を撃って無力化する。
後二発でリロードが必要だ。

「地対地ミサイル発射準備、照準固定。発射」

ミサイルを放ち、扉を躊躇なく吹き飛ばす。
先程交換したとはいえ、残弾は残り八発。
切れたらその都度戻らなくてはいけないだろう。
私は緊張しながら、扉を潜った。
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