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シーズン1-序章

029-オークション 後編

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「私の残高は.........えっ!?」

残高を確かめようとした俺は、驚いた。
あれ、桁が違うのかな......いや、確かに間違ってはいないはず。

[Clavis 個人所持クレジット:12,000,000SC]

1200万!?
これが相当による褒賞だとすれば、エルトネレス級とネルディエ級で600万ずつという事である。
確かジェシカの月収が大体5000SCであるという話を盗み聞いたので、大体2400ヵ月分....200年分である。
いくらアンチエイジングの進んだこの世界でも、大尉の200年分の収入は決して軽くない。
慎重に使わないと....

『次の商品は――――――アンティゴウルスの砂肝です!』
「.......?」

アンティゴウルスとは何か、そしてその砂肝に何の価値があるのか。
俺は一瞬困惑するが、直ぐに情報がモニターで流れてくる。
見た目はグロいが.....どうやら適切な加工を行えば、一部の致命的な風土病に効く薬となる様だ。
パスだな。

『20!』
『50!』
『100だ!』
『他には居ますか!? ……..落札です、おめでとうございます!』

あっ、速攻で落札された。
ネットオークションとは違うようで、意外と猶予は少ない。
次は何かな.....

『さあ、お次の商品は――――――材質不明の槍です! 出品者のYさんによれば、『竜滅槍ドラゴンスピア』と言うそうです!』

これもパスだ。
槍なんかでレーザーガンやレーザーブレードに対抗できるわけがない。

『50!』
『80!』
『300だっ!』
『負けません、700!』
『ふん、900!』
『1000でどうだ!』

突然、見た事の無い数字が出てきた。
これ、万を飛ばしているだけなので、実質的に俺の全財産と同額であの槍が取引されているという事であった。
誰がそんな....と思ったのだが、時代錯誤にも思える青い全身鎧の人物がホクホク顔で槍を受け取っていた。
もの好きもいたものだ。

『あの槍に一千万もの価値があるのですね.....』
『いや、何か事情があったみたいだね、あの黒い鎧の方は、滅茶苦茶しょげた様子だし』

黒い鎧の方は、まだ会場に残っている。
恐らく、先程のような品が出るのを待っているのだろう。

『さあ。次の商品は目玉商品となっております――――――古代遺宝オーパーツである、超金属”星核鋼スターメタル”です!』
「10!」

咄嗟に、叫んでいた。
しかし、競争率は意外と高いようで....

『40!』
『50!』
『いや。80出す!』
「100!」
『120!』
「130!」
『ぐぬぬ.....160!』
「200ッ!」

絶対に欲しい。
そういうわけで、慎重に使うと決めたはずのSCを、早速大量に消費してしまった。
今日のところはこれで終わりにして、後はゆっくり眺めよう....

『待て、250だ』
「......300です!」
『!! くっ、良いだろう.....』

相手が引き下がると、会場にケーブルで接続したまま目を閉じている俺の姿と、悔しそうに引き下がる相手の姿がホログラムで映し出された。
何の演出だろう?

『おおっと、オークションの常連であるカルム旅団長が引き下がった! これは予想外の展開です!』

俺の姿が映ったことで、注目が一斉に集まる。
アンドロイドに見える俺が、高額な金を動かしたのが興味深かったのだろう。
それに、相手は旅団長か。
恐らく、パルタコロニーに滞在するたびにオークションに行くので有名なのだろう。

『しかも、その相手はアンドロイド.....? 何にせよ、これで落札です!』

波乱と共に、超金属(1㎏分)は俺のもとへと届けられる事になったが......モノがモノなので、基地に直接届くらしい。

『何に使うつもりなのですか?』
「超金属ということは硬いという事ですよね?」
『はい、加工方法は特殊ですが、耐熱性、耐寒性、耐衝撃性、耐レーザー性全てにおいて優れているはずです....ただし、クロノスを覆うほどの量ではありませんが....』
「武器や電磁盾に塗布できればと思ったのです」
『いい考えだと思います、クロノスの胸部装甲に塗布するのもいいかもしれません、一点突破系の攻撃手段に対して強くなりますから』
「帰還した後、エイペクス様に相談してみます」
『ええ、それが良いでしょう』

そして俺は、何も買わないという決意を固めてオークションに参加し続ける。
次に出たのは、情報精査でも素材の分からない、謎のホームベースみたいな板だった。
これも黒い鎧の男が70万SCで購入していき、次も、また次も買い手が付いていった。
そして.......最後の商品となる。
何が出るのだろうかと、俺は期待に胸を躍らせる。

『本日の最後を飾るのは..........』

ドラムが鳴り響き――――――――






『あの、クラヴィス.....頭部でス!!!』

視界が乱れる。
何が起きたのか分からない。
気付けば周囲にモニタはなく、ただ目の前のモニタだけが光を放っていた。
そのモニタの向こうでは、視界がアンドロイドの頭を持っている。
頭の下、首からは、血とも油ともつかない何かがドロドロと流れ出ているが、誰も気にも留めていない。

「あ................」
『ジジ........0万SCから、落札です! クラヴィスさん、お受け取りください』

画面が歪んで、司会が姿を現した。
その首は奇妙に折れ曲がり、その顔からは生気が無くなり、ダラダラと涎を垂らしている。

「さあ、受け取り.........落札額は、250万SC、ジ、ジ......本日の目玉は、ハ....目玉! 目玉、メダマ!!」

私の頭部を、司会だった何かが穢す。
眼が、眼のパーツが引きずり出されて、ドロドロとした液体が膝を濡らす。
本来、アンドロイドにだってあんな液体は入っていない。
じゃあ、アレは血.....でも、何故? 誰のもの?

「やめ.....テ....やめて!」
「やめ.......やめる、マス!!」

そして、意識が急にシャットダウンし、俺は....私は意識を闇へと沈めたのだった。







外では、動かなくなったクラヴィスを、三人が取り囲んでいた。

「一体何が.....?」
「分かりません、緊急シャットダウンしました。電源ランプが点灯してません」
「とりあえず、帰りましょう! 何かヤバい感じっす!」
「いいえ、私たちだけでは頭部ユニットの重さを支えられません、一旦警備隊を呼びましょう!」
「僕が呼んで来よう!」

眼を閉じたクラヴィスは、まるで人形のようにそこに居た。
先程まで動いていた彼女は、まるで糸の切れた操り人形のようだった。
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