Clavis X Chronus クラヴィスアンドクロノス

黴男

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シーズン1-序章

025-ニルラ族のお爺様

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「凄いですね、俺、他コロニーは初めてなんですよ」
「.......そうですか」

口調は平坦だが、俺も確かに感銘を覚えていた。
俺が今いるのは、ドックを抜け、長い通路を出た先の基地出口である。
一気に景色が広がり、まるで太陽の明かりと遜色ない光に照らされる。
宇宙船の中は、照明があっても寒々しく薄暗かったので、やはりこの光景は目に焼き付く。

「私は慣れたものですが........」
「僕もそうだね、ただ.......このコロニーはかなり大きい様だ、少し新鮮ではあるかな」

ジェシカはともかく、ハーデンにとっては少し新鮮なようだ。
このコロニーが大きいのは、開拓時代の名残なんだとか。

「どうやって移動するのですか?」

俺の視界には、チューブの中を高速で移動するトラムのようなものが見えていた。
あれで移動するんだろうか?

「いや、知人に頼んで手配してある船があってね」

少し歩くと、中型船とも言うべき大きさの船が止まっていた。
ハーデンは迷いなくその船の中へ入っていく。
俺達もそれに続き、船の中へと入った。

「ん? 来客か......って、ハーデン殿か」
「やあ、約束は覚えてるよね?」
「ああ、勿論だとも......その辺に座っとくれ」

ブリッジは中型船にしては狭い。
恐らく貨物船なのだろう、エンジンルームと貨物室が機体面積の大半を占めている。
そして、ハーデンの友人だという男は...........

「わしはミルトリッツという、しがない運送業者じゃよ。ニルラ族じゃから、見た目は幼いが、舐めるでないぞ?」

ニルラ族?
データベースを参照すると、「8~17歳程度の容姿を保ったまま、数千年間生き続ける種族」という説明が出てきた。
エルフ族みたいなのが、一応存在しているみたいだ。
肌も少し赤っぽいし、ここに来てやっと異種族って感じがしていいな。

「待ってろ、今動かす」
「すいませんね」
「ああ、次元震が収まるまでリム星系にはワープできんからな、臨時収入は助かるぞ」
「リム星系?」

俺はつい問い返す。
データにはない星系だが、果たして.......

「おっと、アンドロイドの嬢ちゃん.....どうしたのかの?」
「リム星系とは何でしょうか? 星系データにはありませんでしたが」
「あー、俺達の間での呼び名でな、本当の名前はクローリムアルトリアズ星系って言うんだが、毎回言ってたらキリがねえだろ? ……..よし、準備完了、何時でも行けるぜ」

調べてみると、確かにそういった名前の星系が存在していた。
確かにこれほど長い名前なら、略したくなるのも分かる気がする。

「まずは商業区に行きたいんだが、大丈夫かな?」
「この時間帯は混むぜ?」
「多少なら待つことになっても構いません」

ジェシカが初めて発言した。
ミルト.........リッツが苗字で、ミルトが名前だ......は、それににやりと笑い、

「綺麗な嬢ちゃんだな、ハーデン....おめえの女か?」
「上官ですよ、リッツ」
「成程、そりゃ失礼した」

ジェシカは一ミリもデレない様子で、ミルトを睨み付けた。
気まずい雰囲気の中、中型船は都市の一角に降りていく。
だが、停泊所が一杯なので、滞空して空くのを待つ。

「ちっ、今日は月二回のオークションデイじゃからな、人が多い」
「オークション、ですか?」

俺は気になって、聞いてみることにした。

「ああ、そうじゃ。ここパルタには様々な物品が集まる、何せテラフォーミング中じゃからな、様々な生物の素材や、天然の宝が集まるんじゃよ.......それを、星系外から来た客が買い取るのさ」
「参加することは出来ますか?」
「勿論だとも、ただし......カネは相当持っとらんと、オークションには競り勝てんがの」

俺は改めて、自分が一文無しであると気付いた。
どうしよう.......ま、まあ.....興味があるものが見つかるかどうかは分からないしいいか。

「クラヴィス、エイペクスはあなたにまだ貨幣価値について教えていないため伝えないように言われていましたが、あなたにはエルトネレス級とネルディエ級の討伐褒賞として、かなりの額のSCが振り込まれています」

SC………初めて聞く単語だが、[情報が解禁されました]という表示と共に、StarCredits…..星間通貨という情報が出てきた。
殆どの惑星で使われているもので、持っていればどこでも生きていけるのだ。

「残高について私は知りませんが、3SCもあれば酒場でビールを注文できますよ」
「そうなのですね」

俺は何とか自分の残高を確認しようと試みるが、StarCreditsの項目はセキュリティレベル16以上の権限でロックされている。

「後でエイペクスに一時解除を頼んでおきましょう」
「......ありがとうございます」

許可を貰わないとお買い物もできないようだ。
少しの不自由さを感じた俺だったが、貨幣価値も分からない中買い物をしてもしょうがない、ここは皆の買い物を見て見習おう。



◇◆◇



中型船は無事に降下し、停泊所の一か所に止まった。

「わしはここで待っとる、とっとと帰ってこい」
「ありがとうございました」
「おう、オークションで良いものが見つかる事を願っとるよ」

ミルトリッツは、そう言って手を振ってくれた。
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