Clavis X Chronus クラヴィスアンドクロノス

黴男

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シーズン1-序章

024-パルタコロニーへ

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『パルタ中央コロニー、着艦申請を行います、繰り返します、着艦を申請』
『こちらパルタ中央コロニー東ゲート管理局、着艦申請を承諾。三〇〇秒後にゲートを解放します』

俺は艦橋に用意された席に座り、外の景色を眺める。
芋虫の口部を思わせるゲートの前に、艦隊は待機している。
普通は宇宙港に着艦するのだが、この艦隊は軍直轄の秘匿艦隊だ。
色々と詮索されないため、秘密裏にこのゲートからコロニー内に入るのだそうだ。
ちなみに、コロニーはよく見る宇宙ステーションのようなあの形ではなく、デ○スターのような円球型である。
側面に存在する溝部分に嵌っているリングは回転しているが、慣性制御の為ではないようだ。

『ゲート解放されます。完全に開放されるまで残り一六〇秒』

完全な黒塗りの扉が、カメラのシャッターと同じ形で開いていく。
内部の輝きが宇宙の暗闇を少しだけ照らし出した。

「完全開放と同時に通常速度で進入を開始する、全艦連動」
『全艦連動します』

完全にゲートが解放された、と俺が確認すると同時に、点火音が響いてきて、艦橋から見える景色が前に進み始めた。

『第五ゲート通過』

全ての艦が同時にコロニーの内部へと入った。
その後、第四、三、二、一のゲートを通過する。

『こちら東ゲート管理局、全艦ゲート通過を確認、ゲートを閉鎖しますが宜しいですか?』
『問題ありません』

背後でゲートが閉まるのが、レーダーに映る。
それから数十分、変わり映えのない回廊を艦隊は突き進む。
しばらくすると、少し先に壁があるのが見えた。

『最終ゲート開放します』
『最終ゲート完全開放まで残り三二〇秒』

壁が開いていく。
入り口と違って分厚く、表面は恐らくCDL特殊合金で創られている。
CDL特殊合金――――開発者のクラウム、ディーレ、リットンバーグの三人の名が冠されたこの金属は、レーザー兵器に対して強い耐性を持つ。
ただし、熱に弱い弱点があるため、クロノスの装甲には使われていない。

『ゲートを通過します』

なんて言ってる間に、ゲートが完全に開き、俺達はコロニーの内部へと遂に入ることが出来た。



◇◆◇



「..............」
「この景色が不思議ですか?」
「...いいえ、そんな事はありません」

数十分後。
俺は展望室にて、ジェシカと共に眼下の景色を見ていた。
コロニーの内部は、あのエルトネレス級の中で見た光景と少しだけ似ていた。
壁面にはすべてビッシリと街があり、中央には球状の核があった。
核部分は殆どがガラスのようなもので覆われており、あちこちに隙間があってそこから小型船舶が出入りしている。

「あれは、何ですか?」
「保養用の自然保護エリアですね、全てのコロニーに存在しますよ」

保養用か.......まあ、こんな白と黒くらいしか濃淡のないコロニーで暮らしていれば、緑の色が欲しくなるのかもしれない。

『警備船到着、追随してください』

小型船が複数艦隊の前方、左右を固める。
艦隊はこれに追随し、着陸場所へと向かうのだ。

「戻りましょう」
「ええ、そうですね」

変わり映えのしない景色に飽きて、俺は艦橋へと戻る提案をした。
ジェシカも同じ気持ちだったようで、提案はすぐに受け入れられた。
その時.....

「.....待ってください、あれは何ですか?」

俺の目に、大きく荒廃した区画が映った。
かなりの規模だが、修復はしないのだろうか?

「あれは...........いいでしょう、あれはスラムと呼ばれる場所です、人間には愚かしいことに貧富の差というものがありますから、あそこに住まう人間たちは貧困に喘ぐ者たちなのですよ」
「........彼らを救う事は出来ないのですね」
「可能ならばですが......事実として、スラムは今も存在し続けています。最早私たちにはどうしようもできない問題です、ですが........貴方達ならば、余計な慈悲は....いえ、とにかく、可能でしょうね」

ジェシカの言葉は歯切れ悪い。
人工知能なら慈悲が無いと言いかけてやめた様子だった。
敵をバンバン殺してはいるけど、俺も別に無辜の民を殺す気はないぞ。
っと、勝手にお掃除する方に思考が行ってしまった。
恐らく、慈悲なく区画整理したり、慈悲なく全員業務を斡旋して振り分け後、追い出して居住区に住まわせる等という事だろう。

「.............」

追随してくる蒸し器のような形の小型船を注視すると、「C-F0A21 警備船」というそっけない名前と、武装情報だけが目に映った。
左右舷に小型砲台が、艦下部に二基、艦上部に一基二連装砲がくっ付いている。
都市内ではミサイルは撃てないようで、ミサイルは付いていないが、代わりに艦橋の真上にパルスレーザーが一基だけ付いていた。
ドームウィンドウになっており、恐らく直接人が操作するのだろう。

「物凄い武装ですね」
「そうですが.......流石にエネルギーが足りませんから、主砲火力は低いはずですよ」

聞けば、メイン機関は重力機関らしく、追跡中は動力不足に陥るそうだ。
とはいえ、このオンボロ艦隊よりは遥かに強い。
囲まれて叩かれたら、クロノス無しでは厳しいだろう。

『まもなく降下ポイントに到着します、離艦要員は総員準備を整えてください』

その時、エイペクスの声が響いた。
ふと下を見ると、滑走路が見えた。
艦隊が降下するのに合わせて、滑走路が開いていく。
その下には、ドックが存在していた。

「あ、忘れていました」
「!?」

一瞬、身体がふわりと浮き、直ぐに重力が元に戻る。

「慣性制御を移行する際、一旦こちらの慣性制御を切るためこのような事が起こります、これからは注意してください」
「はい」

そして、艦隊はドック内部へと入り込んだ。
誘導ビーコンに従い、遂に旗艦はドック内へと腰を落ちつけた。


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