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シーズン9-未知の侵略者編
187-始まった侵犯
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スピオラ星系。
ラトラール星系へ接続されるゲート前にて、艦隊が展開されていた。
艦隊はほぼ量産艦で構成されており、先鋭部と中央部にそれぞれ、他とは趣の異なる艦があった。
『お兄ちゃん、こっちの準備はできた。そっちは?』
通信が、宇宙空間に響き渡る。
それを傍受した旗艦は、またどこかへと高速通信波を送信し、返ってきた通信波が旗艦を経由して先端部の巡洋艦へと受信される。
『こちらは準備ができている、だろう? アインス』
『はい、既に準備は終わっています。作戦開始時刻になり次第、ゲートを通過します』
艦橋の司令官席に座るのは、金髪の美人である。
だが、その目はきりりと鋭く細められ、艦列を整えている艦隊を一瞥していた。
彼女こそが、Noa-Tun連邦二十二大指揮官のうちの一人、第一指揮官アインスであった。
二十二大指揮官は、本来ある名前を捨て、総司令官に仕えている。
それこそが彼ら、彼女たちなりの忠誠なのだ。
『エスクワイア隊、発進準備完了』
『前列一番艦から六番艦まで、砲口チェックよし』
そして、彼らが定めた厳格な作戦開始時刻を過ぎると同時に。
『アインス、時間だ』
『了解。全艦隊、行動開始せよ』
艦隊は動き出す。
そして、Ve‘zのゲートへと向かう。
Ve’zのゲートは全て、ゲートを利用してジャンプするタイプのものではなく、境界面を潜る事で空間を飛び越えるタイプのものが利用されており、艦隊は一斉にラトラール星系へと身を乗り出した。
『やはり、届きませんか』
総司令官からの通信は届かない。
これは、スピオラ星系のゲートと、ラトラール星系のゲートがとてつもない距離を挟んでいることを指し示している。
だが、問題はない。
『カル様、あなたはシン様の妹君です、いざという時は帰還を優先してください』
『ああ、分かっている』
通信に応える声が変化する。
少女のものから、男のような勇ましさを含んだ声へ。
『アドアステラで索敵する、警戒を』
『了解、各艦警戒態勢に入れ!』
艦隊はゆったりと間隔を広げ、まだ見ぬ敵へと備えるのであった。
『ラトラール星系に侵入者あり、ゲートの管制システムによると総数は553』
「来たか」
食後の休憩をしていた僕は、上がってきた報告に目を開けた。
この世界に存在するほとんどのジャンプゲートは、古代Ve‘z帝国か、Ve’zの建造したモノだ。
特に、Ve‘z領域と呼ばれる領域に設置されているゲートは、今もゲート管制システムの制御下にある。
ゲートを通過すれば、即座にこちらへと伝わる。
奴らの行軍ルートも、ゲートを使う限りこちらの掌握下にあるというわけだ。
『ラトラール星系の構造物を一つまで減らしておいて正解でしたね』
「ああ、奴らは構造物や意味のあるものを攻撃、あるいは占領しこちらの防衛を出させる、そういう戦術を使う故にな」
いいや、実際にそれだけでは無いのだろう。
僕の直感を裏付けるように、カサンドラが叫ぶ。
『...これは!? 恒星付近に設置された構造物が、我々の敷設したネットワークをオーバーライドし始めています!』
「なにっ!?」
Ve’zのセキュリティは堅牢だ。
それを上書きしてしまうほどの構造物。
それが設置され、上書きを始めてしまった事が知れたのだ。
ゲートのシステムをオーバーライドされてしまえば終わりだ。
あの場所は、Noa-Tunの領土になってしまう。
「成程...そう来たか」
ワームホールジェネレーターを使うまでも無い。
「領土」を広げ、陣取りのように補給線を伸ばして仕舞えばそれで終わりなのだから。
「スピオラへのゲートを一時停止。 ヴィジラントノクティラス艦隊を送り込み、あの構造物を破壊せよ」
『了解』
ともかく止めなければまずい。
僕はカサンドラに命じるのだった。
ラトラール星系へ接続されるゲート前にて、艦隊が展開されていた。
艦隊はほぼ量産艦で構成されており、先鋭部と中央部にそれぞれ、他とは趣の異なる艦があった。
『お兄ちゃん、こっちの準備はできた。そっちは?』
通信が、宇宙空間に響き渡る。
それを傍受した旗艦は、またどこかへと高速通信波を送信し、返ってきた通信波が旗艦を経由して先端部の巡洋艦へと受信される。
『こちらは準備ができている、だろう? アインス』
『はい、既に準備は終わっています。作戦開始時刻になり次第、ゲートを通過します』
艦橋の司令官席に座るのは、金髪の美人である。
だが、その目はきりりと鋭く細められ、艦列を整えている艦隊を一瞥していた。
彼女こそが、Noa-Tun連邦二十二大指揮官のうちの一人、第一指揮官アインスであった。
二十二大指揮官は、本来ある名前を捨て、総司令官に仕えている。
それこそが彼ら、彼女たちなりの忠誠なのだ。
『エスクワイア隊、発進準備完了』
『前列一番艦から六番艦まで、砲口チェックよし』
そして、彼らが定めた厳格な作戦開始時刻を過ぎると同時に。
『アインス、時間だ』
『了解。全艦隊、行動開始せよ』
艦隊は動き出す。
そして、Ve‘zのゲートへと向かう。
Ve’zのゲートは全て、ゲートを利用してジャンプするタイプのものではなく、境界面を潜る事で空間を飛び越えるタイプのものが利用されており、艦隊は一斉にラトラール星系へと身を乗り出した。
『やはり、届きませんか』
総司令官からの通信は届かない。
これは、スピオラ星系のゲートと、ラトラール星系のゲートがとてつもない距離を挟んでいることを指し示している。
だが、問題はない。
『カル様、あなたはシン様の妹君です、いざという時は帰還を優先してください』
『ああ、分かっている』
通信に応える声が変化する。
少女のものから、男のような勇ましさを含んだ声へ。
『アドアステラで索敵する、警戒を』
『了解、各艦警戒態勢に入れ!』
艦隊はゆったりと間隔を広げ、まだ見ぬ敵へと備えるのであった。
『ラトラール星系に侵入者あり、ゲートの管制システムによると総数は553』
「来たか」
食後の休憩をしていた僕は、上がってきた報告に目を開けた。
この世界に存在するほとんどのジャンプゲートは、古代Ve‘z帝国か、Ve’zの建造したモノだ。
特に、Ve‘z領域と呼ばれる領域に設置されているゲートは、今もゲート管制システムの制御下にある。
ゲートを通過すれば、即座にこちらへと伝わる。
奴らの行軍ルートも、ゲートを使う限りこちらの掌握下にあるというわけだ。
『ラトラール星系の構造物を一つまで減らしておいて正解でしたね』
「ああ、奴らは構造物や意味のあるものを攻撃、あるいは占領しこちらの防衛を出させる、そういう戦術を使う故にな」
いいや、実際にそれだけでは無いのだろう。
僕の直感を裏付けるように、カサンドラが叫ぶ。
『...これは!? 恒星付近に設置された構造物が、我々の敷設したネットワークをオーバーライドし始めています!』
「なにっ!?」
Ve’zのセキュリティは堅牢だ。
それを上書きしてしまうほどの構造物。
それが設置され、上書きを始めてしまった事が知れたのだ。
ゲートのシステムをオーバーライドされてしまえば終わりだ。
あの場所は、Noa-Tunの領土になってしまう。
「成程...そう来たか」
ワームホールジェネレーターを使うまでも無い。
「領土」を広げ、陣取りのように補給線を伸ばして仕舞えばそれで終わりなのだから。
「スピオラへのゲートを一時停止。 ヴィジラントノクティラス艦隊を送り込み、あの構造物を破壊せよ」
『了解』
ともかく止めなければまずい。
僕はカサンドラに命じるのだった。
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